第4回 予算執行管理強化に関する諮問委員会(2018年8月6日開催)議事録

国際協力機構

日時

2018年8月6日(月)11:00~13:30

場所

独立行政法人 国際協力機構(JICA)本部(東京都千代田区)会議室

出席者

委員:敬称略

細溝清史、上山隆大、梶川融、園田雅宏、児玉尚剛(冨山和彦委員代理)

JICA

北岡理事長、加藤(宏)理事、長谷川理事、本清理事 他

議事要旨

JICAより、運営費交付金の予算執行にかかる評価段階に関し、JICAの事後評価報告書と他機関の評価報告書を参照しつつ、事業評価の現状を説明。次に、梶川委員より、独立行政法人の制度・会計について説明し、組織の予算統制が機能するためには、経営層が現場レベルの行動計画、実施状況、支払実績、今後の事業達成見込みをタイムリーに把握し、管理する仕組みの重要性を指摘した。

各委員から示された主な意見は以下のとおり。

事業評価について

  • プロジェクトを実施すれば何らかのプラスのインパクトは生むものなので、投入に対するアウトプット、アウトカムの評価だけでなく、社会的インパクトの測定が重要。個別事業の評価に加え、複数のプロジェクトを横串で評価して社会的インパクトを測り、全体のポートフォリオの中でどう位置付けられるかを分析しないと、全体として最適な投資はできず、納税者の納得も得られない。

評価と収益化単位

  • 独立行政法人の制度・会計は、弾力的かつ効率的な予算執行と、透明性及び説明責任の向上を狙いとして管理会計的な要素が強められ、一定の事業等のまとまりであるセグメント単位と、より細分化された収益化単位での管理が導入された。会計管理の単位である収益化単位は、大きすぎると適切な管理が行えない一方、細分化しすぎても、トップダウンによる事前の予算配分と現場からボトムアップでつくられる事業とが全く違ったものになり、意味のない管理工数が増えるだけになる。
  • 個々のプロジェクトの評価と組織全体の評価はどうリンクしているのか。評価は資源配分する際の単位となる一定の事業等のまとまりで行うことが望ましい。
  • JICAの場合、PDCAサイクルを回す評価の軸は個別プロジェクト単位や法人単位であり、収益化の単位と評価の単位がずれている。原則論ならば独立行政法人制度と現実のずれは縮小すべきだが、JICA事業は中期目標の立て方自体が難しく、プロジェクトをまとめた集計・評価が難しいという現状もある。独立行政法人の自らのマネジメントとして、現行のプロジェクト単位でPDCAを回すという整理も一案。

計画変更と予算管理の留意点

  • JICAの場合、中期目標を設定する時点では目標に個別性・具体性を取り込むことは容易ではなく、また期中には外交的な判断等で成果目標が変動することもある。これら要因で行動計画、投入計画が動いてしまうときに、どう扱うかは独法制度の中で調節的に考えるべき課題。本来は行動計画から支出計画の順に策定されるべきところが、支出計画から行動計画の順になってしまい、予算があるだけ使うことになっていないか。
  • 独立行政法人会計基準では、収益化単位ごとの運営費交付金配分額の見直しが第3四半期末までは可能。これは経営マネジメントとして資源配分の見直しに一定の余地を残し、予算を硬直化させないための制度であるが、実際は第3四半期時点の予算執行見込みに沿って資金枠を見直すだけの資金繰りの話になっていることが多い。本来は、当初配分計画と実績との比較が見える形で会計管理すべき。
  • トップダウンによる予算統制が機能するためには、現場の行動計画と積上げ予算、その実施状況、支払実績、今後の事業達成までの見込額や支出時期を経営層がタイムリーに把握できる仕組みが重要。
  • 個々のプロジェクトの現場からの会計情報と、中期目標を立てた本部の計画とをすり合わせながら、法人全体の行動計画とボトムアップ的な個別プロジェクトとのリンケージを、管理会計的な手法で見える化し、資金と事業との関係を明朗化することが重要。これは将来的計画・戦略を策定する上でも不可欠な情報であり、今後どの公的機関にも必要。
  • 地域と課題のマトリックスで予算管理することは、難しい面があるとしても本来やるべきことである。

中期目標期間を跨ぐ予算管理

  • 独立行政法人制度では中期目標は当該期間内に完結するという発想が基本であり、中期目標期間を越えて行動の債務性があることはあまり考えられていない。中期目標期間を跨ぐプロジェクトの場合、プロジェクト毎に今期の運営費交付金はどこまでの事業範囲なのかを予め想定する必要がある。
  • 期を跨いだ資金をどれだけ次の期に活かせるかを考える上では、現在の会計基準では難しく、国際基準に変えていく必要がある。

根本原因の分析

  • 次回会合では、予算執行管理に係るPDCAサイクルのAction、すなわち予算執行の結果を踏まえた、法人としての対応に関して次の点を分析すべき。1)個別プロジェクトのアウトカム評価を踏まえた追加投入(次フェーズの実施、案件の打ち切りなど)の意思決定を如何に行っているのか、2)プロジェクトの進捗管理の過程において異例事態が発生した場合にどのように原因究明し対応しているのか、3)予算の進捗をどのように会計上の収益化につなげているのか、4)事業評価をプロジェクト担当者、専門家、担当部等の様々なレベルの関係者の評価(成果の評価とプロセスの評価)にどう反映しているのか、5)法人全体としての評価をどのように行い、翌年度の年度計画、予算編成や次期中期計画の策定につなげているのか。

以上