第5回 予算執行管理強化に関する諮問委員会(2018年9月3日開催)議事録

国際協力機構

日時

2018年9月3日(月)15:00~17:20

場所

独立行政法人 国際協力機構(JICA)本部(東京都千代田区)会議室

出席者

委員:敬称略

細溝清史、上山隆大、梶川融、園田雅宏、児玉尚剛(冨山和彦委員代理)

JICA

北岡理事長、越川副理事長、加藤(宏)理事、長谷川理事、本清理事 他

議事要旨

JICAより、運営費交付金の予算執行にかかる評価の反映段階について説明。次に、園田委員より、会計的側面からの予算管理の課題と対応策を説明し、管理単位の見直しにより、予算執行管理を強化するとともに、トップダウンによる予算配分の判断とプロジェクト単位の予算管理を有機的に結び付けることの重要性を指摘した。
また、次回議題には、諮問委員会の議論を受けてJICAが検討している業務改善案の説明を含めることとした。

各委員から示された主な意見は以下のとおり。

事前統制の弛み

  • 独立行政法人化により、国は事前統制に代わり事後評価に重点を置くことになったが、これは事前統制の重要性の低下を意味するわけではない。独法が自律的に実施すべき事前統制に弛みが生じていたのではないか。

予算の流動への対応

  • 運営費交付金を中期目標期間内で資金的に移動する場合、その正当性はプロジェクト単体での分析ではなく、当該地域の事業全体のポートフォリオの中で最適投入かを分析すべき。
  • SDGsに連動させた中期目標の「重点課題」に関し、個々の目標に対してそれぞれどんな技術・取り組みが有効かという観点から、資金投下と事業の立て方について、問題と分析結果を開示することは、法人全体の評価の軸になる。
  • 予算が変動的なプロジェクトと固定的なプロジェクトで類型化し、変動的なプロジェクトの量に応じて面積管理に余裕をもたせるべき。また、予算変動パターンの分析や経験則に基づく職員の予測技術の向上が必要。
  • 予算執行管理は、年間約700件の技術協力プロジェクト毎の部分均衡とそれを足し合わせた一般均衡があるが、部分均衡を目指すより一般均衡を図るべきではないか。

複数年度に渡る予算及び支出管理(後年度負担の管理を含む)

  • 「プロジェクト管理→プログラム管理→面積管理→法人全体管理」の積み上げによる予算執行状況、後年度負担状況の管理、管理状況を見える化することで、将来の各年度の資金繰り状況を把握し、支障が生じない仕組みを組成すべき。
  • 複数年度に渡る予算及び支出管理に係る課題部・地域部・財務部等の各々の責任の明確化が重要。
  • 「事業計画作業用ペーパー」(プログラム管理)及び「予算執行管理表」(プロジェクト管理)の活用により後年度負担額の見積りを精緻化すべき。

予算の管理単位

  • 翌年度以降の支出予定額を把握するためには、交付された運営費交付金の管理単位をプロジェクト単位ないしはプログラム単位に細分化することが有用であり、中期目標期間最終年度における繰越理由の説明もできる。収益化単位を過度に細分化することによる費用対効果は見極めが必要であり、収益化単位がプロジェクト単位またはプログラム単位でなくとも法人内部ではプロジェクト単位またはプログラム単位で翌年度以降の支出予定額の管理を行うべき。
  • 独法会計基準では、標準原価と支出実績のコスト情報を整理した結果が損益になり、この単位での成果と共に財務的に表現することで、成果とコストの関係を説明する。成果に対する投入コストや、本来の予定との差異の説明が社会的に分かりやすいような収益化単位を設定するという観点からは、「重点課題・地域事業費」の収益化単位が一単位で約650億円の規模では納得感を得難いのではないか。
  • 独法会計基準の理念として、プロジェクト単位のアウトプット、アウトカムが法人全体の目的、成果、評価に紐付くことが理想的。本来、収益化単位は、中期目標の「事業等のまとまり」(=法人が評価される単位)と個々のプロジェクト評価がどのような関係かを整理し、両者を結び付けるような単位を設定すべき。しかし現状は両者のリンケージは弱く、これはJICA特有ではなく独法制度全体の課題と言える。
  • 財務会計の括り方と組織内部の管理単位は分けて考えてもよいと思うが、管理会計が財務会計を説明する形であるべきで、さらに業務管理の実態面ともつながるべき。

組織体制、マネジメント、評価

  • 中期目標の「事業等のまとまり」をブレイクダウンしたものと、現場の活動(プロジェクト)の評価が結びつく仕組みを構築するためには「事業等のまとまり」と各プロジェクトを有機的に結びつける単位が必要。
  • JICA事業の業務管理の実態面を予算執行管理に反映させるに際しては、地域部と課題部の関係を考える必要がある。特に外交面から地域部にどのようなマネジメント機能を持たせるかは、JICAの管理会計のあり方を考えるうえで重要な要素。
  • トップダウンによる予算配分の判断と、ボトムアップによるプロジェクト単位の予算管理の結果が結びつく折衷型の予算執行管理の仕組みづくりが必要。
  • 消化しきれないほど多くの採択案件を抱えているという状況が恒常化するのは異常。責任ある実施機関のあり方として、政策立案機関に対し、これ以上採択されても現在のリソースでは対応できない、対応するには何らかの調整が必要と申し入れるべきであり、政策立案機関と実施機関の緊張関係が重要。

人事評価制度

  • 目標管理制度(MBO)による評価は、完全な客観的評価にはならないが、基本的には公平性、納得感、動機付けに結び付けばよい。その意味では人事評価項目に予算執行管理を追加するのは良い対応策。
  • MBOの運用では、職務・課題毎に充てる時間に応じて評価項目間の重み付けをすることや、時間の効率的活用も評価対象になり得る。目標設定の際には、今期達成レベルがクリティカルパスにあたるかを確認すべき。
  • どの程度メリハリのある人事評価をすべきかは各組織の育成方針にもよるが、人材活用がうまい組織は、評価結果の中心化傾向に陥ることなく、上下に振ることが多い傾向。

以上