第6回 予算執行管理強化に関する諮問委員会(2018年9月19日開催)議事録

国際協力機構

日時

2018年9月19日(水)13:00~15:30

場所

独立行政法人 国際協力機構(JICA)本部(東京都千代田区)会議室

出席者

委員:敬称略

細溝清史、梶川融、座間敏如、園田雅宏、児玉尚剛(冨山和彦委員代理)

JICA

北岡理事長、越川副理事長、加藤(宏)理事、長谷川理事、本清理事 他

議事要旨

座間委員より、予算管理プロセスの見直し及び次期システム改善に係る対応について、特にPDCAサイクルの改善ではCheck段階に議論が集中しがちだが、Plan、Do、Actの全プロセスについて検討することの必要性を指摘するとともに、中長期的対応として将来のシステム開発では徹底したユーザー視点によるエンド・トゥ・エンドのサービスデザイン思考を導入し、管理強化だけでなく職員の利便性を高め、報告のための稼働を減らして本来業務に集中できるような見直しをすることを提案した。
次に、JICAより、諮問委員会の議論を受けてJICAが検討している業務改善案を説明し、次回委員会で内容の審議を行うこととした。

各委員から示された主な意見は以下のとおり。

予算管理プロセスの見直し

  • PDCAサイクルの改善にあたり、Checkだけに議論が集中しがちだが、Plan(計画の精緻化、指標の見直し)、Do(タイムリーな現状把握・対策立案、段階的評価・レビューの実施)、Act(計画の検証、分析とフィードバック、組織的水平展開)の全プロセスにおいて対応の検討が必要。
  • 個別プロジェクトの予算管理には、アーンド・バリュー・マネジメント(Earned Value Management:EVM)を活用して出来高(成果)の進捗管理を行うことで、予実をコストとスケジュールの観点で管理でき、将来予測も可能となる。ただし、出来高の計画値が杜撰な場合や実績報告が不正確な場合は機能しない点に注意が必要。
  • EVMは、建設工事等のプロジェクト管理に向いているが、ソフトウェア開発やJICAの技術協力など目に見えない成果を扱うプロジェクトにも適用可能。例えば報告書ドラフトができた段階で出来高30%、発注者による1度目のレビューで50%など、レビューをマイルストーンに位置づけて事業実施途中の品質を確認する方法がある。
  • EVMではマイルストーンをしっかりと設けることが重要。「いつまでに、どこまでやる」という標準的なマイルストーンは、技術協力の関係者の暗黙知があるはずなので、それを可視化し形式知にすることでマネジメントの改善に役立つ。
  • 英国政府が大規模プログラム・プロジェクト改善のために推進しているGateway reviewは、必要性、適切性、代替可能性等のレビューを事業プロセスの節目節目で実施し、事業見直しや中断の機会を得る仕組み。Gateway reviewは経営層によるポートフォリオ管理や重要案件の管理に適した手法。Gateway reviewを全てのプロジェクトで行うのは非効率的なので、日本政府の場合は小規模案件は各省が、50億円以上の大規模案件や指定案件は政府CIOが行うなど、階層を設けている。

システム改善の短期的対応

  • ダッシュボード機能により予算執行や案件管理に係る情報を集約・可視化し、役員や管理職に提供し、タイムリーな情報把握を促すことは、意思決定のプロセスやサイクルを見直し、デジタルトランスフォーメーションを促進するうえで意味がある。
  • ダッシュボードで定量化・可視化すると外れ値等の何らかの発見がある。外れ値であること自体は責められるものではないが、その説明を求めることができる。
  • ダッシュボード等の可視化の機能を強化したとしても、モニタリング指標が不適切では効果が出ない。予算管理上のKey Performance Indicator(KPI)の効果的な設定と、その数値の解釈と異常値を認識できる感覚を経営層から事業担当者までが持つことが必要。
  • プロジェクト単位で成果の測定を行う際に、公的機関では測定の尺度(価値基準)が複数存在する場合(例えば防衛予算と福祉予算とは価値基準が違う)がある。複数の価値尺度をまたいだ資源配分を組織全体でどのように決めていくべきか。

次期システム開発・中長期的対応

  • 現在進めているシステム統合は現状の要件のまま推進すべき。将来的なシステムの構想では、サービスデザイン思考の活用を推奨。カスタマージャーニーマップ(案件担当者が業務を行う各プロセスでどのような心理でどのような行動を行い、どのような課題があるかを可視化したもの)を作成し、徹底したユーザー目線で業務とシステムを見直すことで、導入後に実際に活用され効率化につながるシステムの開発が可能となる。
  • 今般のシステム開発の目的が管理強化であることに異論はないが、それだけでは現場職員の負荷が大きくなりすぎてしまい、結果的に組織のためにならないことを危惧している。職員の利便性を高め、報告のための稼働を減らし本来業務に集中できるような見直しに着手するべきである。

以上