田中理事長がフィリピンを訪問

2014年2月25日

田中明彦JICA理事長は、2月21日から24日にかけて、フィリピンを訪問しました。昨年11月に発生した台風30号(国際名:Haiyan、フィリピン名:ヨランダ)(注1)によって大きな被害を受けたレイテ州を視察するとともに、マニラでは包括和平合意に向けた取り組みを進めるミンダナオ紛争影響地域関係者と会談しました。

シンソン公共事業道路大臣(左)より台風の直撃を受けながらも残った小学校(日本の援助で建設)の説明を受ける田中理事長

1)2月22日、田中理事長は、台風30号の被災地の中でも特に高潮被害が深刻であった、レイテ州の州都タクロバン市、パロ町、タナワン町を、シンソン公共事業道路大臣と共に訪問しました。被災から100日以上経過しての訪問でしたが、家屋や公共施設の破壊状況は深刻であり、復旧に向けて依然として多くの課題があり、緊急復旧事業を通じた人々のニーズへの迅速な対応が必要であることを、シンソン大臣を含むフィリピン政府関係者と確認しました。また、多数の死傷者が発生した海岸沿いの地区は、台風災害後、フィリピン政府が居住禁止地区(注2)に指定したにもかかわらず、人々が戻ってテント等に居住し始めている状況を視察しました。

タナワン町長(右)より海岸で高潮被害の説明を受ける田中理事長

田中理事長は、フィリピン政府関係者に対し、次の災害に備えた強い地域づくりのためには、政府が適切な土地利用計画を策定し、安全な居住地を人々に提供していくことが重要であると強調するとともに、JICAが中長期的な復興計画策定を通じて技術支援することを説明しました。また、レイテ州知事とは、被災した人々の生計手段の多様化と、生産性の向上の必要性について意見交換し、今後の支援具体化に向けて双方で検討を行うことを確認しました。


2)レイテ州訪問に先立つ2月21日、田中理事長は首都マニラにおいて、プリシマ財務大臣およびバリサカン国家経済開発庁長官と会談を行いました。田中理事長は台風30号の被害に対し、東日本大震災をはじめとする日本の経験をもとに、フィリピン政府が標榜する「ビルド・バック・ベター(Build Back Better)」(注3)の考え方に沿って、災害に強い国づくりの支援を行っていくことを表明しました。また、ミンダナオ紛争影響地域については、今年1月の和平「枠組み合意」の「付属書」合意を受けて、包括和平合意を近く締結予定であることに対して歓迎の意を表明するとともに、JICAとしてもバンサモロ自治政府樹立に向けた制度づくりや人材育成、開発計画策定、さらには人々の生計向上や、雇用につながるような中長期的な地域開発を支援していくことを説明しました。

3)翌23日には、マニラにて、バンサモロ移行委員会(注4)議長兼モロ・イスラム解放戦線和平交渉団長のモハゲール・イクバル氏と会談しました。イクバル氏からはJICAのミンダナオ紛争影響地域支援(注5)に対する感謝の意が述べられました。また、バンサモロ政府に対する人々の信頼を高めるため、和平の目に見える成果の達成に向けたJICAの支援に期待が寄せられました。


(注1)2013年11月に発生した「過去に類を見ないほど大規模」と形容された大型台風。フィリピン国内で死者6,201人、負傷者28,626人、行方不明者1,785人、被災者数1,600万人以上の甚大な被害をもたらした。JICAは、昨年11月から12月にかけて国際緊急援助隊・医療チーム(1〜3次隊)、専門家チームを派遣するとともに、6,000万円相当の物資供与を行った。JICAの緊急援助については、下記を参照。

(注2)今回の台風30号被害を受けて、フィリピン政府は、海岸から40メートル地域を居住禁止地区(No Build Zone)にすると表明している。
(注3)災害以前の状態に復旧するだけではなく、被災地をより良い状態に再建すること。
(注4)フィリピン政府と、モロ・イスラム解放戦線との間で2012年10月に締結された枠組合意に基づき、バンサモロ基本法策定を進めるべく、バンサモロ移行委員会が設置された。
(注5)JICAはこれまで、国際監視団の社会経済開発部門への専門家派遣、和平後を見据えた開発の担い手育成、コミュニティー開発や今後の開発計画づくり、また、和平関係者の意見交換の場づくりなどを通じて、ミンダナオ紛争影響地域への支援に取り組んでいる。さらに2013年7月より「バンサモロ包括的能力向上プロジェクト」を開始し、バンサモロ基本法などの組織・制度整備、開発計画策定、将来のバンサモロ自治政府に向けた人材育成を支援している。