ユニバーサル・ヘルス・カバレッジ(UHC)

UHCとは「すべての人が、適切な健康増進、予防、治療、機能回復に関するサービスを、支払い可能な費用で受けられる」ことを意味し、すべての人が経済的な困難を伴うことなく保健医療サービスを享受することを目指しています。持続可能な開発目標(SDGs)においてもゴール3(健康と福祉)の中でUHCの達成が掲げられておりますが、UHC達成のためには「保健医療サービスが身近に提供されていること」、「保健医療サービスの利用にあたって費用が障壁とならないこと」の2つが達成される必要があることから、2017年7月の国連総会では「必要不可欠の公共医療サービスの適用範囲」と「家計収支に占める健康関連支出が大きい人口の割合」をSDGsにおけるUHC指標とすることが採択されました。

UHCを達成するためには、物理的アクセス、経済的アクセス、社会慣習的アクセスの3つのアクセスの改善に加え、提供されるサービスの質が高まることが重要です。

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3つのアクセスの改善

国際社会の取組により、1990年には年間1,260万人だった5歳未満児の死亡数が2016年には560万人に半減するなど、大きな成果がありました。しかし、2017年12月に公表されたWHOと世界銀行による「2017 UHCグローバルモニタリングレポート」によると、全世界では未だ人口の半分(35億人)が健康を守るための質の高い基礎的サービスにアクセスできていないとされています。同じ国のなかでも格差があり、地方部・へき地居住者、低所得者層に加え、女性・障害者・少数民族など社会的に弱い立場にある層では、保健医療サービスから取り残される人々が多くいます。さらに、世界では8億人が世帯総支出の10パーセントを超える医療費負担を経験しており、毎年1億人近くが医療費負担を原因として貧困化しているとされています。

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こうした世界の状況を踏まえ、日本政府も2015年9月に発表した「平和と健康のための基本方針」の中でUHCの推進を政策目標や基本方針として掲げています。JICAも、他の先進国に比べ低コストで世界一の長寿を達成した保健医療の歴史とシステムを有する日本の経験を踏まえ、貧困層を含むすべての人々が基本的なサービスにアクセスできるよう、国際社会とともにUHCの推進に取り組んでいます。

JICAは国際会議等の場でも積極的な発信に努めており、2016年5月のG7伊勢志摩サミットでは、議論の過程でオールジャパンの研究班に参加、技術的な観点からの提言や国際的な発信等を通じ貢献しました。同年8月にケニアで開催された第6回アフリカ開発会議(TICADVI)では世界銀行、世界保健機関(WHO)、日本政府等と共同で「アフリカにおけるUHC実現に向けた政策枠組み」を打ち出しました。2017年12月には、世界銀行、WHO、UNICEF、日本政府等とともにUHCフォーラム2017を東京で共催し、SDGsの目標年である2030年までのUHC達成に向けた具体策を議論しました。

国際的な約束を着実に実行するべく国レベルでの協力にも力を入れています。保健医療サービスを人々に提供するための人材・施設・資機材などの基盤(保健システム)の強化、多くの途上国で未だ大きな課題となっている母子保健の向上、2014年のエボラ出血熱の流行など、感染症の流行を抑えるための対策、非感染性疾患の対策など、保健分野のすべての協力で途上国におけるUHCの達成を支援しています。更に、UHC達成のためには、健康を守る社会を作ることも重要で、栄養の改善、教育の普及、ジェンダー平等の推進、経済格差の是正など、保健分野以外の様々なセクターへの協力でもUHC達成に向けた協力をしています。

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