CARDにおけるJICA海外協力隊の取り組み

これまで多くのJICA海外協力隊が、任国で稲作の普及に取り組みCARDの目標達成に貢献してきました。2020年3月現在、「食用作物・稲作栽培」や「コミュニティ開発」の職種を中心に、8ヵ国で計46名の隊員が稲作関連活動を行っています。「食用作物・稲作栽培」隊員は、国の研究所や大学に派遣され、食用作物の育種や品種改良などの研究支援などに取り組み、「コミュニティ開発」隊員は村落での農家巡回指導を通じて、稲作の普及に努めています。

CARDフェーズ2では、JICA海外協力隊との関与強化を図り、将来の日本人専門家の育成を目指しています。JICAは現地派遣前に日本の訓練所でのJICA海外協力隊向けのCARD説明会を実施し、派遣中には技術協力プロジェクトとの協働、在外研修などで隊員をサポートしています。

協力隊の事例

蔀 大輝さん

元JICA海外協力隊 ウガンダ派遣 2017年度1次隊 農林統計

私は大学院修士課程でミャンマーの山岳少数民族を対象とした農村開発に関する研究を行った後、博士課程に進学しました。博士後期課程進学とともにJICA海外協力隊に参加し、ウガンダで農林統計の職種として2年間活動を行いました。

配属先である国立作物資源研究所(National Crops Resources Research Institute)では、Promotion of Rice Development Project Phase 1(PRiDe)が実施されていました。そこで私は、PRiDeが実施してきた農民向けの稲作技術研修のインパクト調査を行いました。研修を受講した農民を対象に社会調査を行い、PRiDeの研修による効果や課題を明らかにしました。陸稲・水稲栽培地域において長期間の調査を3回実施し、合計300人以上の農民にインタビュー調査を行いました。

インタビュー調査では、研修後の栽培技術採用率やコメ収量の推移、各作業への投資金額や労働投入量、売上金額などを質問項目に加えました。一人の農民に対するインタビューが1時間を超えることもあり、農民が飽きてしまうと良い回答を得ることができません。そのため、質問の構成を工夫すること、途中で小話を挟むこと、お土産にソーダジュースを買っていくことなど毎日のインタビュー調査の中に小さな工夫を取り入れ、質の高いインタビュー調査を行うように心がけました。インタビュー調査を通して農民たちから稲作栽培への取り組みや思いなどについて多くのことを学ぶことができました。

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農民へのインタビュー調査

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圃場における栽培実験

JICA海外協力隊終了後2020年1月、隊員時代に所属していたPRiDeプロジェクトのCARD広域研修担当の専門家として業務を開始しました。私は隊員時に配属先で活動している専門家の方々に憧れ、JICA専門家として働きたいという目標を持ちました。現在は当時憧れていたJICA専門家として働いていますが、仕事をするうえで多くの課題があり反省の繰り返しです。先輩である専門家の方々から多くのことを学び吸収していき、少しでも早く追いつけるように努力していきます。

2020年1月に実施されたJOCV在外稲作研修では、研修の運営について実際に経験することができました。同時に研修の課題なども知ることができたので今後研修参加する人たちに質の高い研修を提供していきたいです。最後に専門家としての目標は、各地域特性や民族特性に合わせた普及アプローチを提案することでアフリカのコメ産業の発展に貢献することです。

斉藤 雄介さん

元JICA海外協力隊 セネガル派遣 2013年度1次隊 野菜栽培
元JICA海外協力隊 ウガンダ派遣 2016年度3次隊 食用作物・稲作栽培

私は、大学で主に熱帯資源作物学などの農学を学びました。卒業後は自身の知識・経験を試したい思いから青年海外協力隊への参加を決め、野菜栽培隊員として2年間、セネガル国タンバクンダ州で活動に従事しました。任地での交友が広がるにつれ、地域農家からは野菜栽培だけでなく稲作への要望も多く受けたため、私は農民間のそれぞれの稲作経験を共有し合える機会として研修を開催し、陸稲種子の配布等の活動を行いました。

同地域は高温・乾燥の激しい地域の一つであり、そもそも稲作適地は限られていたため、その活動は細々と点在する稲作農家の地道な情報収集から始めました。同活動をより具体的に検討するきっかけとなったのは、時を同じくして実施されていたJICA「天水稲作持続的生産支援プロジェクト」に従事するコンサルタントの方々との出会いでした。そのプロとしての活動と幅広い視野に圧倒された私は、そこで学んだ事を可能な限り活動に活かしました。しかし、稲作活動に従事したこの年は深刻な干ばつの影響により、無念にも支援農家の多くが収穫皆無という結果に終わりました。

この悔しさから私は帰国後、大学院へ進学し、陸稲と水分ストレスの関係性に関する研究に励みました。また、現地環境下での栽培試験からも考察を深めるため、在学中に大学連携青年海外協力隊の派遣制度を活用し、稲作栽培隊員としてウガンダ国セレレ県の国立半乾燥資源研究所に派遣されました。同研究所では、保証種子の増殖・配布活動、地域農民への稲作研修を担当し、また農民が適応可能な普及技術の検討に向け、各種栽培試験や営農調査による結果を組み合わせ、収益面も勘案した技術普及の改善を研究所に対し提案するに至りました。営農調査では、時に村人から怪しまれ、逃げ去られることもありましたが、村落にとって私はあくまで部外者であることを改めて理解し、交流の時間を惜しまず語り合う姿勢こそが活動の基礎となる事を体験することができました。

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セネガルでの稲作研修会

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ウガンダでの同僚との仕事の様子

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ウガンダでの水田作成

これらの経験を経て、私は現在、セネガル隊員時代に影響を受けた(株)レックス・インターナショナルに入社し、コンサルタント業務に従事しております。アフリカ地域の更なる稲作振興に向け、日々農民と共に汗を流す先輩方のコンサルとしての姿勢は、自身にとって大きな目標です。現場レベルでの交流を尊重し、更なる広い視野をもって稲作の発展を支えていける専門家を目指し、これからも日々精進して参ります。