保健医療

JICAの取り組み

JICAの基本方針

1. 保健システム強化

保健システム強化とは、保健医療サービスを人々に提供するための行財政や人材・施設・資機材などの基盤を整備・拡充するための取り組みです。基本的な保健医療サービスへのアクセスの確保に加え、医療費負担による家計破綻の防止を通じてUHCを実現するためにも、保健システムの強化が不可欠です。

JICAは、開発を巡る国際的な議論のなかでUHCを主流化するため、世界の指導者が集まる国際会議等の場で積極的な発信に取り組んできました。2014年度は、世銀・IMF春季会合(4月)と国連総会(9月)でのサイドイベントへのパネリストとしての参加、保健システム研究グローバル・シンポジウム(9月)でのサイドイベント主催、マヒドン皇子記念賞会議(1月)の共催および同会議における世銀とのワークショップの共催等を行いました。

国際的な約束を着実に実行するべく国レベルでの支援にも力を入れています。例えばケニアでは、地方分権下でのUHC実現に向けた政府の取り組みを支援する開発政策借款と、中央保健省へのアドバイザー専門家派遣、地方保健行政の強化を目指す技術協力プロジェクトを組み合わせた支援を開始しました。インドネシアでは、医療保障を中心とする社会保障制度の強化を目指す技術協力プロジェクトを新たに開始しました。タイ、ミャンマーなどアジア諸国に対しては、日本の国民皆保険制度の設計や運用に関する本邦研修も行いました。中南米地域では、プライマリ・ヘルス・ケアを基盤とする地域保健システムの強化を引き続き支援しています。

2. 母子保健の向上

妊娠・出産で命を落とす年間28万人の妊産婦や、5歳未満で亡くなる年間660万人の子どものうち、99%が開発途上国の人々です。妊産婦と子どもの健康は開発途上国において最も深刻な問題となっています。

JICAは、2011年度に課題別指針「母子保健」を作成し、包括的な母子継続ケアの普及と持続のための保健システム強化を多くの国で支援しています。具体的には、母子保健サービス展開に向けた保健省の政策・事業管理能力の強化、地方行政能力の強化、保健医療施設の機能強化、助産師などの保健人材の能力強化、コミュニティの意識向上と体制強化、病院や保健所などの関係者間の連携体制の強化に着目し、母子保健を通じた保健システムの強化を目指しています。また、母子保健サービスの拡充を通じて、UHC達成に貢献することも重視しています。

2014年度は、多くの国で引き続き技術協力・無償資金協力を展開しました。草の根技術協力事業、民間連携事業においても母子保健向上の案件が増加しています。また、妊産婦や乳児の低栄養が健康に大きな影響を与えていることから、世界的に、官民のアクターが連携し効果的な対策を進めようというSUN(Scaling Up Nutrition)の推進や、食料の安全確保等のセクター横断的な観点からの栄養対策を重視して取り組んでいます。JICAはSUNのネットワークに参加、栄養改善に関する取り組みを母子保健プログラムへ統合していくことを推進し、2014年度には、SUN加盟国を対象とした課題別研修「母子栄養改善」と国別研修ガーナ「官民連携アプローチによるScale up Nutrition」を開始しました。

3. 感染症対策

2014年からの西アフリカにおけるエボラ出血熱の流行は、感染症がグローバル化の進展する社会・経済に及ぼす影響の大きさを強く示すものでした。感染症によるインパクトを最小限にとどめるためには、各国が予防接種の提供などを通じた予防とともに、発生した流行を検査・診断等を通じて早期に発見し、関係国・機関とも連携しながら、疾病・流行の性質に応じた対応を行うことが必要です。また、感染症の流行に直面しても住民への保健サービスの提供を中断しない強靭な保健システムも重要であり、そのような保健システムは、効果的な予防・早期発見・対応に不可欠な基盤でもあります。

こうした考えの下、JICAは保健システムの強化に重点的に取り組みつつ(前記1.)、予防・早期発見・対応の各段階における能力の強化を支援しています。2014年度は、予防に関して、ワクチン製造能力の強化や定期予防接種サービスの強化のための技術協力、ポリオ・ワクチン等の調達に関する資金協力等を行いました。早期発見については、アジアやアフリカの国々で、迅速診断キットや早期警戒システムの開発、サーベイランスや研究所の検査能力の強化等を進めました。また、流行への対応では、エボラ出血熱の封じ込めを支援するために、流行国への疫学専門家等の派遣や緊急物資の供与、住民に対する啓発活動等を行うとともに、その周辺国など含め15カ国以上で医療従事者や国境警察への研修などの緊急対応を支援しました。