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ジョージア派遣 観光隊員 山下真生氏: 活力ある若者とジョージアの明るい未来 

2025.02.07

今回はジョージアのボルジョミ・ハラガウリ国立公園にて活動されている山下真生(まお)さんにお話を伺いました。
山下さんは大分県日田市役所観光課の職員として、インバウンド誘客戦略策定やSNSを活用した観光プロモーション事業等に4年間従事されていました。現在、山下さんが勤務するボルジョミ・ハラガウリ国立公園は、ジョージアの中心部に位置し同国で最も古く、かつ、ヨーロッパ最大級の国立公園です。山下さんは、国立公園管理局にて多くのハイキング客に対して公園に関する説明や入山届の対応といった日々の窓口業務を行っている他、国立公園のPRや“おもてなし力”向上のためのレクチャー、グリーンツーリズムの策定などに尽力されています。
ジョージアはJICAの青年海外協力隊派遣国の中でも2022年から派遣が開始された最新の派遣国です!そんな自然に囲まれたジョージアで活動される山下さんの熱い思いを取材しました。

INTERVIEW① 現場の声をいかに届けるか。

(インタビューアー:大久保)配属先の国立公園の魅力を教えてください。

自然が本当に豊かな点です。四季折々、違った景色を見せてくれるところに魅了されます。またこの地域はジョージア人にとっても避暑地として有名で、別荘も多く、夏は観光客で賑わうリゾート地でもあります。首都のトビリシとはまた違う、落ち着いた自然環境を肌身で感じることができます。絶好のハイキングスポットです!

ボルジョミ中央公園

ボルジョミ中央公園

夕焼けに染まるボルジョミ

(大久保)そんな素敵な国立公園で活動されているとのことですが、どんな点が課題なのでしょうか?

1番は現場の声をどう政策決定者に届けるか、でしょうか。配属先の国立公園管理局は、その上部組織にあたる国立公園保護局が予算管理をはじめ、国立公園に関する観光プロモーションなどの業務も一括管理しています。そのため、ほぼすべての業務についてその実施決定権は上部組織に委ねられてしまっていることから、配属先同僚が自発的に業務に取り組むということが難しい環境にあり、上層部で決められたことだけを最下部組織である国立公園が実行するという体質が一つの課題と考えています。日本も国立公園を環境省が統括しているという点では似ていますが、日本は指定管理制度等を用いて公園の管理団体に一定の運営裁量権が与えられているので、その点がジョージアとは異なります。

(大久保)配属先がある程度の決定権や自主予算を持つことができたら、もう少し活動の幅も広がり同僚の皆さんのモチベーションも上がるかもしれませんね。

そうですね。SNSの発信についても上部組織が運営・管理を行っており、国内14国立公園の美しい写真がシェアされています。しかし、公園を訪れる人々が「本当に知りたい」と思うような、その日の天候による各公園の状態や施設状況等を発信する場としての活用はされていません。その理由として考えられるのは、上部組織の方々は各国立公園の現場にいるわけではないので、こうした情報をタイムリーに発信できる環境下にないこともありますが、各国立公園がSNSを運営・管理するような体制になってないことが挙げられます。実際に、私の配属先の公園に関しても、施設の一部が修繕で使用不可となっていた時にその最新情報が届けられず、当日になって観光客に窓口でコースの閉鎖を告げざるを得なかったこともあります。そうなると満足度はもちろん、お客様の国立公園への印象も悪くなってしまいます。私も上部組織に現場レベルでのSNS運用体制の重要性を訴え続けているのですが、すぐには改善に繋がらないのが現実です。現場からの声に耳を傾ける姿勢や、最新情報の共有不足や共有のタイムラグにより観光客の貴重な時間を無駄にするかもしれないという認識をしっかり持つことなどの意識改革が、今後観光プロモーションを更に推進していくうえで急務だと感じています。

窓口で観光客の対応をする山下さん

INTERVIEW② キーポイントは日本の「おもてなし」精神!?

(大久保)ジョージアで暮らされていて、どのような点が日本と異なると感じますか?

ジョージアは、ジョージア正教会が根付いて家族をとても大切にしています。家族は神からの贈り物として考えられており、結婚や子育てを通じて、神の愛と教えを実現すると捉えられていることから子沢山の家族が多いです。家族の結束も強く、親戚含めて一つ屋根の下で暮らしている家族も多いです。また、ジョージアは地政学的に古代から現代に至るまで多くの外部勢力からの侵略を受けきました。ペルシャ帝国、ローマ帝国、アラブ人の侵攻、モンゴルの侵略、オスマン帝国、ロシア帝国、ソ連等、と世界史の教科書に載っているあらゆる侵略を受けてきたと言っても過言はないです。そのような侵略に抗う為にも、「自分たちは強くあるべき」という意識が根付き同胞意識を強く持っていると感じます。他方で、同朋意識が強いがゆえに、内向き傾向があることも否めません。これからのジョージアの更なる観光発展のためには、より視野を広く、柔軟性を持ったおもてなしの姿勢が必須だと思います。なかなか難しいですが、日本の「相手の立場に立って物事を考える視点」が、ジョージアでも浸透すればいいなと思います。

ボルジョミ・ハラガウリ国立公園に視察に来たチェコの一団

ドイツから自転車できたご一行(最終目的地は、日本!!!)

INTERVIEW③ ファッションで日本と繋ぐ!

(大久保)ジョージアの文化で、日本で流行りそうだな、と思うものはありますか?

まちがいなくファッションなどのジョージアの文化芸術です!ジョージアはコーカサスの中心で、欧州、中東、アジアの交差点として位置しています。その為、いろいろな文化に親しんでいるせいかジョージアの方々の色彩感覚やファッションセンスが非常に長けて、洗練されているように思います。また昨今はあの有名ハイブランド、バレンシアガのトップディレクターもジョージア人(Demna Gvasalia氏)ということで、そのセンスは世界で評価されてきているといえます。街の中にもおしゃれな古着屋さんが目立ちますし、カフェやレストランも素敵な雰囲気です。そのような雰囲気もジョージアの日常に溶け込んでいて「日常の風景」なので特段混んでもいないところが推しポイントです。もちろんこのようなジョージアの一面をたくさんの人に知ってもらいたいのですが、ちょっと独り占めしたい気持ちもあります。でもそのくらい落ち着いていて風情漂うスペースが多い街です。これは日本人のハートを奪っちゃうな、と思います!

街中のカフェ

郊外のJuta渓谷

(大久保)日本の若者にはもちろん、大人の方の一人旅にも、もってこいな場所ですね!

また実は温泉大国なことも、日々の生活に疲れがちな日本の方々を癒してくれるジョージアの魅力の1つだと思います。首都トビリシは温泉が発掘されたという理由から、現地語でトビリ(温かい)を用いて「トビリシ」という名付けられました。私が住むボルジョミもかつて湯治場として栄えた場所で、他にも多くの温泉が国内にあります。各温泉によって効能が勿論異なり、地元民はこの水は臓器に良いから飲料用、これは肌に良いからスパ用などと分けているくらいです。

ボルジョミ中央公園にある「皇帝の湯」と呼ばれる温泉

(大久保)ジョージアの今後の展望について教えてください。

今まさにターニングポイントであると感じています。特に若者のパワーは著しいです。母国ジョージアをより良く平和的に発展させていきたいという若者の熱意が強く、それ故に若者各々が国の発展に対してしっかりとした意見を持って行動している様子をこの国ではよく見かけます。そのような様子を見ていると、ジョージアの将来は有望なのではないかと感じる事があります。またIT技術の発展からも目が離せません。仮想通貨の自動販売機があったり、首都ではどんな小さな商店でもオンライン決済ができたり、非常に便利でびっくりします。そういった面では、日本よりも進んでいるなと感じます。EUへの加盟に向けた動きや日本を含めた世界各国との交流を通して、ジョージアのホスピタリティ面などをグローバルスタンダートまで引き上げる、電力や交通網などのインフラを整える、など今後期待できる改善点はまだまだたくさんあります。パワーがある若者の中から、ジョージアを良い方向へと引っ張っていってくれるリーダーが将来誕生することを祈っています。

(大久保)
素敵なお話をありがとうございました。日本とジョージアがより近い関係を築き、互いの成長へと繋がる関係構築がこれからも続くことを願います。
山下さんのこれからのご活躍も心からお祈り申し上げます!!

<参考>ジョージアの歴史
ジョージアは古代からその地理的特徴ゆえに多民族が行き交う交通の要塞として栄えながらも、幾度も多民族支配にさらされてきた歴史がある。紀元前にはコルキス王国やイベリア(カルトゥリ)王国が栄え、4世紀にキリスト教が国教化された。その後、ササン朝ペルシアやアラブなどに征服されたが、10世紀にはバクラト朝が成立し、12世紀には王女タマラの下でバクラト朝最盛期を迎えた。しかしそれ以降も再びモンゴルやオスマン、ペルシャ帝国等の侵攻を受けた。1801年にはロシア帝国に併合、1918年に一時的に独立するも、1921年にジョージア・ソビエト社会主義共和国としてソ連に編入された。

本記事は2025年2月に作成・公開されました。

インタビュアー:  経済開発部民間セクター開発グループ インターン 大久保 桃花 
2024年8月から3か月間JICA経済開発部にてインターン。大学では途上国における民主化がもたらす国際協調をテーマに勉強。中央アジアやアフリカなど未知なる世界に挑戦し、そこで得た感動を共有することが好き。そのため、広報を通じた国際協力の在り方を模索中

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