ウズベキスタン派遣 観光隊員 伊藤卓巳氏、「何とかなるさ だからこそ挑戦」
2024.12.10
今回は、JICA海外協力隊で観光職種の隊員として2024年11月までウズベキスタンで活躍されていた伊藤 卓巳さんにインタビューさせていただきました。伊藤さんはサマルカンド市サマルカンド経済サービス大学に配属され、主に大学が設立した観光案内所(ツーリスト・インフォメーション・センター)にて学生と協力しながら観光振興を推進していました。学生時代にバックパッカーとして中央アジア諸国を制覇されたこともある伊藤さんにウズベキスタンの魅力を伺ってみました。
INTERVIEW① 宗教の融合、異文化や他民族に寛容
(大久保)現地の学生と一緒にウズベキスタン観光促進のアイディアを考えられていたと伺いました。実際に彼らからどのようなアイディアが提案されていましたか?
現地の学生は自分たちが育った土地を来訪した旅行者と交流をしたい!と考える人が多いです。そのため、例えば、日本人観光客と一緒に寿司パーティーをしてみたい、という斬新なアイディアも出たりしていました。しかし日本人旅行者の多くはあまり英語が流暢でない場合もあるので、実際に寿司パーティーを開催したとした場合、双方のコミュニケーションを図り相互交流を促進には課題があるのが現実だと思います。しかし、学生のそのような意気込みやアイデアを無駄にしたくないので、実際に導入できるようにはどうするのが良いかといった議論を彼らと行っていました。
伊藤さんの活動拠点:サマルカンド観光案内所にて
(大久保)なるほど、学生と議論されたアイデアが将来実現化されると良いですね。ウズベキスタンはイスラム建築が旅行者の間で有名であるように、多くのモスクが国内に点在するなど宗教色が強いイメージがありますが、実際のところはどうなのでしょうか?
そうですね、日本人の感覚からすると宗教色が強い国に見えるかもしれません。もちろんモスクがあったり、礼拝堂が至る所にあったり、日本にいるより宗教や神への信仰を身近に感じます。だからといって彼らは自分とは異なる宗教を遮断することもありません。イスラム教徒が大多数を占めるものの、一方でロシア正教やカトリック・プロテスタントといったキリスト教徒やユダヤ教徒の方もいらっしいます。このように多様な宗教が共存し、様々な人種・民族や異文化に寛容なウズベキスタンの方はホスピタリティに富んでいます。その背景には、恐らく、歴史的にウズベキスタンはシルクロードの要所としても栄え、色んな人々が行き交う環境下にあったからだと思います。その点で日本の「おもてなし」と同じように客人を敬う精神は強くあると感じます。ただ、何事も「過度に提供(おもてなし)しすぎる」部分があり、相手(お客様)にとっては十分すぎるおもてなしをしている様子も良く見受けられました。
ライトアップされるグリアミール廟
ユネスコ世界遺産の一つでサマルカンドの名所 シャーヒズィンダ廟群
INTERVIEW② 門戸が開いた2016年
(大久保)伊藤さんは学生時代にもウズベキスタンに訪れたと伺いました。当時と現在でウズベキスタンに対して感じる違いはありますか?
はい、一番大きな変化は多くの国に対してウズベキスタン入国時の査証が撤廃され、人の移動が多くなったことです。2016年に新たな大統領が就任してから、かつてのような閉鎖的な体制が大きく変わりました。観光客誘致に積極的に取り組む政策が掲げられ、世界各国からの人々を受け入れるようになりました。人の移動が多くなれば栄えるのが観光です。サマルカンドなどの都市部は、本当にきれいになったな、観光地化が進んだな、と感じます。一方で、中央集権体制は今も残っている部分はあり、政府主導で大規模な観光地開発が進められている現状もあります。昔ながらのまち並みや遺跡を残しつつ、地元住民に利益があるような持続可能な観光開発の在り方をこれからも考えていくことが大事だと思っています。
サマルカンド最大の市場(バザール)”ショブバザール“で商品の販売方法を指導する伊藤さん
INTERVIEW③ こんなところに日本発見!
(大久保)日本語に興味がある学生も多いと伺いましたが、他にどんなところで「ウズベキスタンにおける日本」を感じましたか?
日本のアニメと漫画は言うまでもなく、大流行していました。現代のポップなものだけでなく、連続テレビ小説『おしん』や『火垂るの墓』などメッセージ性の強いものも多くの人が見ているようでした。また、文化面だけでなく、ビジネス面でも日本への注目が高まっています。もともとロシアへの出稼ぎが多い国なのですが、昨今その矛先が日本に向いていて、日本で「一攫千金」を狙う若者も最近増えてきています。
(大久保)日本の文化的コンテンツは奥深い内容のものまで流行しているとのことで驚きました。最近はビジネスチャンスを獲得しようと、日本への関心が一層高まっているとのことで、現地の方の日本への心理的距離が近くなってきている事が伝わってきました!
サマルカンド観光案内所にて講義をされる伊藤さん
INTERVIEW④ 人と人との交流、そのカギはウズベク料理!?
(大久保)徐々に観光力をつけてきているウズベキスタンですが、今後さらにその魅力を広めるためには何が有効だとお考えになりますか?
やはりウズベキスタン料理でしょうか!人は食事に魅力を感じる動物で、食は旅の醍醐味だと思いますので、ウズベク料理の知名度を向上させていきたいです。私のイチオシが串焼き肉の「シャシリク」です。日本の焼き鳥よりも何倍も大きい肉の塊を炭火で焼く料理です。ウズベキスタンを訪れる方にはぜひ羊肉にも挑戦してみてほしいです。このようなおいしい料理を、例えば、日本で「ウズベクフェス」などを開催してより多くの人に広めていきたいです。また肉だけでなく、野菜や果物も美味しいのが特徴です。町にあるバサール(市場)がとても広いのですが、そこではスイカやメロンがたったの200円で手に入ることもあります。ウズベキスタンに来たら、是非バザールにも足を運んで頂き、現地の方々の生活の一端を感じてもらいたいです。
ウズベキスタンを代表する肉料理の一つ「シャシリク」
大きくて食べ応えのあるサマルカンドナン
(大久保)串焼き肉、お酒とも合いそうでおいしそうです!最後に日本のみなさんに一言お願いします。
ウズベク人は超が付くほど人懐っこくて、優しい人が多いです。仲間で助け合う精神が強く、また困っていることがあってもなんとかなる「なんくるないさ~」と、皆で協力してことを進める姿勢が私は大好きです。日本の皆さんにもぜひウズベキスタンに来ていただいて彼らの温かみを肌身で感じてほしいです。またウズベキスタンは日本の文化や成長から学び、そして日本人もウズベク人の温かさをさらに吸収し、お互いが高めあっていけたらいいなぁ、と願うばかりです。
(大久保)これからまだまだ発展が期待されるウズベキスタンのこれからが楽しみです!!また、隊員としての任期を終えられた伊藤さんの今後のご活躍も心よりお祈りしております!
家族を大事にするウズベク人にとって結婚式は一大イベント
観光案内所の学生と伊藤さん
本記事は2024年12月に作成・公開されました
インタビュアー: 経済開発部民間セクター開発グループ インターン 大久保 桃花
2024年8月から3か月間JICA経済開発部にてインターン。大学では途上国における民主化がもたらす国際協調をテーマに勉強。中央アジアやアフリカなど未知なる世界に挑戦し、そこで得た感動を共有することが好き。そのため、広報を通じた国際協力の在り方を模索中。
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