2030年の達成に向けて国連が採択した「持続可能な開発目標(SDGs)」には、世界が取り組むべき17の目標が掲げられています。多様で複雑な開発課題を解決するためにはあらゆる関係者の連携が重要であり、このことはSDGsの17番目の目標として定められています。また、2023年6月に改定されたODAの指針である開発協力大綱では、様々なパートナー、とりわけ民間企業との共創が重視されています。開発途上国の開発において、民間企業の皆様の優れた製品・技術・サービス・ノウハウを一層活用し、課題を解決する取組みが大きく期待されています。同時に、企業関係者の間においても、企業活動を進める上でSDGsや社会的課題への関心が高まっており、新興国の市場や途上国が抱える課題をビジネスの機会と捉える動き、SDGsや社会課題解決を経営戦略へ取り込む動きが広がっております。
このような潮流の中で、JICAは民間連携事業を推進しており、海外展開調査支援や海外投融資等を行っております。
中小企業・SDGsビジネス支援事業(JICA Biz)は、日本の民間企業等が自社の優れた製品・技術・サービス・ノウハウを活用して開発途上国の課題解決に貢献するためのビジネスづくりをサポートする事業です。JICA Bizでは、ビジネス段階に応じた2つの支援メニュー「ニーズ確認調査」、「ビジネス化実証事業」を用意しており、ビジネスモデルや事業計画を支援し、当該ビジネスの成功確度を高め、開発途上国への裨益を実現・拡大することを目指しています。
公募提案による本事業は、各社の創意工夫に富んだ企画を盛り込んでご提案いただくことも特徴となっており、近年では革新的な技術やアイデアを持つスタートアップ企業からの応募も増えています。
海外投融資は、開発途上国において民間企業・金融機関が行う開発効果が高い事業に融資や出資等を行うもので、開発インパクトの創出と財務的リターンを同時に達成するインパクト投資です。民間の金融機関のみでは対応が困難な開発途上国の開発事業に対してJICAが融資や出資等により支援します。海外投融資も企業の皆様の持つ事業の立案・運営ノウハウを開発途上国の開発に活かし、ビジネスの力による課題解決・発展を目指します。海外投融資を活用した開発事業への投資を目指す日本企業の皆様にご利用いただける制度として、事業計画の策定を支援する「協力準備調査(海外投融資)」も用意しております。SDGsの達成には民間資金の役割が重要です。JICAは海外投融資を通じて、民間資金動員の触媒となるとともに、JICAが有する知見等を活用しながら開発事業を推進することで、開発インパクトの最大化を目指します。
これら事業を開始して以来、全国の数多くの企業の方々に活用いただいています。その一方で、国内にはJICAの制度を利用し、海外に展開頂ける企業がまだまだ多くいらっしゃると思います。今後とも、JICAは国内に深く根を張った国際協力を進めることで、開発途上国と日本との双方の発展に貢献していきます。
JICAでは、企業の皆様とJICAがそれぞれの強みを生かして、共に社会課題解決やSDGs達成を目指す「企業との共創推進(Private Sector Engagement)」の取り組みを開始し、国や課題・テーマのラウンドテーブルを開催しました。今後も取り組んで参りますのでご注目ください。
JICAには、国内15カ所、海外約100カ所に拡がる拠点ネットワークや、これまで現場で培った開発途上国関係者との信頼関係があります。これに加え、国内の企業支援機関、各地の商工会議所などの経済団体、地方金融機関等、地方自治体とも協働し、オールジャパンの体制で事業に取り組んでいます。企業の皆様がJICAと共創いただくことにより、皆様のビジネスが更に拡大・発展することを願っております。
独立行政法人国際協力機構(JICA)
理事 廿枝 幹雄
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