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- どうすれば途上国ビジネスの成功確度を高められるか
途上国ビジネスの世界にようこそ。魅力的な市場が広がり、活力のある人材が溢れる途上国。前回(第17回)に引き続き今回も「途上国ビジネス成功のためのポイントの優先順位」をテーマにお届けします。第18回目のコラムでは、「どうすれば途上国ビジネスの成功確度を高められるか」について定量データを用いて解説していきます。
1. 成功要因には自社で対応しやすい要因と、対応しにくい要因がある
成功要因には企業が直接的にコントロールしやすい要因とコントロールしにくい要因があります。コントロールしにくい要因の代表的な例は外部経営環境に関する要因です。具体的には政治・法律環境(政府の政策変更や新たな法的規制の制定)、経済環境(市場規模、景気動向、為替レート、金利の変動)、現地の社会・文化的環境(消費者の価値観の変化、商習慣、人口動態)や現地の技術環境(技術革新、デジタル化の進展)です。また、外部経営環境以外にも、進出国の競争環境や、自社の財務状況、これまでの製品・サービスの販売実績等の要因もまた、企業(海外展開担当者)がコントロールしにくい要因と言えるでしょう。もちろん、企業が完全にコントロールできなかったとしても、持続可能なビジネスを実現させ、成功に導くためには、これらの要因を把握し、対応していくことが求められます。
反対に、企業が直接コントロールできる、またはコントロールしやすい要因は何でしょうか。例えば、自社の製品・サービスを仕様面・価格面から顧客ニーズに合致させること、顧客の受容価格帯を把握すること、価格の観点から顧客の需要を喚起することは、企業努力次第で対応可能な要因です。また、次に述べるような社内の組織体制や事業計画の検討であれば、企業が直接コントロールできるでしょう。
- JICA事業に主体的に取り組むこと
- JICA事業に意思決定者を関与させること
- 流通網・サプライチェーンを構築することや、効果的に販売促進すること
- 実現可能性の高い収支計画を策定すること
- 事業終了後のアクションプランを明確にすること
2. どうすれば途上国ビジネスの成功確度を高められるか
それでは企業はJICA Bizを活用して、どうすれば途上国ビジネスの成功確度を高められるでしょうか。これを確認するため、ビジネスに影響を与える要因を、横軸に前述した企業の直接コントロールのしやすさ、縦軸に成功要因の売上の拡大に対する効果とした散布図を作成しました。
(図1)売上拡大に対するビジネスの成功要因と企業の直接コントロールのしやすさの散布図
効果的に途上国ビジネスの成功確度を高めるためには、企業が直接コントロールしやすく(内部経営環境)、またビジネスの成功に対して効果の大きな要因に着目して活動することです。散布図では右上に該当し、具体的には、次の成功要因が該当します。
- 想定顧客に効果的に販売促進ができた(効果的な販売促進)
- 提案製品・サービスを届ける流通網・サプライチェーン等を構築できた(流通網の構築)
- 価格の観点から、提案製品・サービスに対する顧客の需要を喚起できた(価格面の需要喚起)
- JICA事業終了直後、ビジネス化に向けた具体的なタスク・アクションプランが明確だった(明確なアクションプラン)
- 仕様面、価格面から顧客ニーズに合致した提案製品・サービスを提供できた(ニーズに合致した製品の提供)
また、上述の成功要因に比べるとビジネスの成功に対して効果は小さいものの、企業がコントロールしやすい社内体制の整備や適格人材の確保もビジネスの成功において重要な要因になり得ます。例えば次のようなポイントが挙げられます。
- 現在のビジネス継続に必要な現地の社外パートナーを確保できた(現地パートナーの確保)
- 必要な資金を確保できた(内部留保、各種資金調達や補助金等を含む)(必要な資金の確保)
- 社内に海外ビジネスや新規事業立ち上げに通じた人材がいた(海外ビジネス展開)
- JICA事業に対して外部人材任せではなく主体的、積極的に取り組んだ(主体的取り組み)
- JICA事業に提案企業の意思決定者が直接関与した、または、意思決定者を巻き込みながらJICA事業を推進した(意思決定者関与)
さらに、企業が直接コントロールしにくい要因についても、コントロールしくいからといっても何も対応を講じないと、その要因がその後の事業撤退や事業不継続の直接的な要因になることがあります。実際、政治、経済状況等の外部経営環境はビジネスの成功に少なからず影響を及ぼしていることは読者の皆様の経験からも納得できるのではないかと思います。また、法律を変える、法律を作ることを想像すると分かりやすいですが、外部経営環境を自社で変えようとするのは相当の経営資源や時間を要します。さらには進出国の政権交代や急激な為替レートの変動は企業にとってはどうすることもできず、そこに適応していくしかないでしょう。以上の通り、どのような場合であっても企業がコントロールしにくい外部経営環境の中で事業化に取り組む必要があることは変わりません。しかし、より効果的に事業展開をしたいと考えた場合、進出国を選ぶ最初の段階から少しでも自社展開に有利なビジネス環境(市場)を選んで進出する方が戦略的です。すでに進出国は決めてしまったという場合であっても、同じ国でも地域によって外部経営環境は大きく異なります。少しでも自社に有利な外部経営環境のある地域を比較検討し、各種調査、実証事業を計画、実施してはいかがでしょうか。
いかがでしたでしょうか。第17回、第18回のコラムは「途上国ビジネス成功のためのポイントの優先順位」をテーマに2回の連載記事をお届けしました。これらの記事を通じて、途上国ビジネスの成功のために特に重要なビジネスのポイントは何か、どうすれば途上国ビジネスの成功確度を高められるかについて、何かヒントとなる点があれば幸いです。
次回は、「海外進出時に検討すべき知的財産や盗難の対策とは?」についてです。お楽しみに!
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