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- 海外進出時に活用できる資金調達方法とは?
開発途上国での新規ビジネス開発というものは、自社にとって未開の市場であり地の利がなく、地理的にも遠く想定以上の時間や労力を要し、ビジネスの実現前の調査に、多額の人件費や調査費を要します。また、現地でのビジネスを本格展開する段階では、出資、工場建設、高額な資機材や大量の原料等の調達等持続可能なビジネスを実現するためにまとまったお金を要することがあります。事実、2023年度に実施したモニタリング調査の結果、ビジネスの継続状況について「断念した」と回答した106事業のうち、50件の企業が「海外展開のための資金を確保できなかった(資金不足)」ことを断念してしまった理由の一つに挙げていました。
資金調達は海外進出における障害の一つであると同時に、大きなレバレッジをもたらす鍵でもあります。本コラムでは、JICA Biz参加企業による資金調達の成功事例、JICA Biz参加企業の資金調達の現状・課題、あなたに合った資金調達の手段の見つけ方について解説します。
なお、関連テーマとしてビジネスTipsコラムの第2回目の『途上国ビジネスでのお金との向き合い方』があります。第2回のコラムでは、財務状況を踏まえた限度額の設定や、初期投資費用を抑えたビジネスモデルの検討、海外事業の取組に対する金融機関等からの理解が重要なポイントであることを解説していますので、まだお読みになっていない方は併せて一読ください。
1. 資金調達に成功した事例
JICA Bizを経て外部から資金を調達し、ビジネスを拡大させている企業の例を公表情報をもとに以下に紹介します。このような企業は、進出する国の課題解決に向けて独自の技術やノウハウを駆使し、外部から資金を得ながら持続可能なビジネスを実現しています。
・株式会社HAKKI GROUP(東京)は、配車アプリやモバイルマネーの利用履歴を元にクレジットスコアリングを実施することで、銀行口座等を保有しないギグワーカーでも活用が可能なタクシードライバーに特化したマイクロファイナンスサービスを提供する会社です。同社は、SMBCベンチャーキャピタル株式会社よりインパクト投資を受けています。
・株式会社トマス技術研究所(沖縄)は、煙を出さず、完全自動運転、有害物質の排出抑制と簡単設置が可能な小型・中型焼却炉「チリメーサー」の製造販売を手掛けるベンチャー企業です。同社は、自社の有する技術力やJICAに採択された信用力が評価され、沖縄振興開発金融公庫より融資を得ています。
2. 資金調達の現状と課題
続いて、JICA Bizに参加する企業全体の資金調達の現状と課題について確認します。
2024年度のモニタリング調査によると、JICA Bizに参加した企業の約25%が資金調達ニーズを持つと回答しました(表1の左)。また、資金調達手段としては、資金調達の手段として地方銀行や信用金庫等の金融機関からの融資が最も多く、助成金・補助金が続いていました(表1の右)。そのうち資金調達を実現した会社に資金調達額を問うたところ、「1千万円~1億円未満」の調達が38%で最多となり、「1億~10億円未満」が29%、「10億円以上」が12%という分布結果でした(表2)。
(表1)JICA Bizにおける資金調達ニーズの有無と資金調達方法
(表2)実現した資金調達額
一方で、同モニタリング調査で資金調達ニーズのあった38社(表1の右)のうち、およそ4分の1にあたる9社が「資金調達ニーズはあったが、実現しなった」と回答しています。こうした企業は資金調達の確保にめどが立たず、ビジネス展開を断念、または縮小せざるを得なかった状況が窺えます。このことから大規模な設備投資が資金や事業継続のための運転資金が必要な場合には、JICA Biz後の資金確保が重要な課題となっています。
3. 自分に合った資金調達手段を知る
大規模な設備投資が必要なビジネスモデルを検討している場合、規模を拡大していく場合には外部からの資金調達が必要になります。本コラムでは、どのような資金調達手段が存在していて、JICA Biz後にどのような資金を調達するのがあなたの企業にとって最適なのか、その選択肢について紹介します。
①必要資金、調達手段の検討
まずJICA Bizで策定したJICA事業後のアクションプランや、事業展開計画に沿う形で資金調達計画を策定しましょう。計画策定にあたって考慮すべき点としては、事業展開上必要な資金規模やその規模に応じた調達手段を検討することが必要です。その上で、大規模な設備投資が必要な場合には早期に金融機関や投資家に相談することが推奨されます。調査の計画段階で金融機関や投資家から資金を得るために必要な条件が明確になれば、資金調達の確保の観点からも調査、実証活動を効果的、効率的に行うことができます。
②公的資金・グラント活用
JICA Biz終了後など、海外事業展開初期段階では自社製品やサービスの実証が終了し、対象国市場へのエントリー段階であると思われます。この段階では、ベンチャーキャピタル等や金融機関から直接金融(すなわち出資を受ける)や間接金融(すなわち借入を行う)を受けることが難しい企業が大半かと思います。このようなフェーズでは、公的資金やグラントを活用することをお勧めします。JICA Biz後シームレスに事業展開を進めたい場合などは、JICA Bizのような公的支援事業を活用し、委託資金、助成金や補助金を活用することで実証事業を進めることが可能です。「経協インフラポータル」や所属する自治体等で利用できる公的支援を調べ、積極的に活用しましょう。公的資金やグラントを活用することで受け入れた資金は、返済する必要がなく、財務リスクを抑えながら事業展開を図れるというメリットがある一方で、資金規模が限られているだけでなく、用途や期間が短期であることが多いといった制約も見られます。
③直接金融・間接金融の活用
対象国事業が拡大し、現地での活動拠点などを設置し本格的に途上国でのビジネスを展開する段階では、一定規模の資金が必要となります。この段階では、公的資金の活用では不十分であり、金融レバレッジを利かせた金融取引を検討しましょう。金融取引の手段としては、直接金融と間接金融が存在します。
直接金融とは、金融機関を介せず資金調達を行う手法です。具体的には、ベンチャーキャピタルや、インパクト投資ファンド(SDGs/BoP向け)、進出国での現地の戦略的パートナーとの資本提携などです。直接金融は自己資本の受け入れですので、調達資金は返済する必要がなく、安定的な資金といえます。また、現地パートナーからの資金拠出であれば、当地でのネットワークや現地パートナーのビジネスを活用できるというメリットがあります。他方、外部株主が入ることによりガバナンスや意思決定の複雑化や自社持ち分の希薄化といったデメリットに留意が必要です。間接金融とは、金融機関を通じて資金調達を行う手段です。間接金融は所謂借入金ですので、自己持ち分の希薄化は生じません。また、公的資金に比べると資金調達金額が大規模になる傾向があり、大規模な海外展開が可能となりますが、あくまで借入ですので期限を決めて返済する必要があるとともに利払いが生じます。
資金調達はその手段により活用上のメリット・デメリットがあるだけでなく、財務指標にも影響を及ぼしますので多角的な視点から検討を行い最適な活用を決めましょう。
④サステナブルファイナンスの活用
JICA Biz、途上国ビジネスの文脈に適した資金調達方法をご紹介します。近年注目されるインパクト投資やサステナブルファイナンスを通じ、環境改善や地域社会の発展を目指す企業に特化した資金調達のアプローチを検討することも有用です。仮に取引先金融機関からの出資・融資を断られてしまった場合、インパクト投資やサステナブルファイナンスを行っている金融機関や投資家、VC等から助言を仰ぐことも有用です。
4. 資金調達を成功させるためのポイント
最後に、JICA Biz後に資金調達を達成する際のポイントを見てみましょう。JICA Bizに採択されると、社会課題の解決のための支援をうけますが、JICA Bizを卒業して自社でビジネスを展開するシーンでは、金融機関や投資家は、自社ビジネスの社会性だけでなく損益やキャッシュフローを見ています。JICA Bizによって実証したビジネスの収益モデルや、調査から得られた販売価格や製造単価の妥当性、粗利や資本効率の有効性などを検討されることになるでしょう。また、ビジネスが公的資金による補助頼みから脱却したビジネスモデルが確立されているかという視点で評価がなされるでしょう。
JICA Biz卒業後の世界を知ったうえで、JICA Bizをデザインして応募する(実施する)というバックキャスト(逆算)の思考マインドが重要となってきます。
いかがでしたしょうか?海外進出には多くの課題が伴う一方で、適切な資金調達手段を選び、効果的に活用することで持続可能なビジネスを構築する道が開けます。本コラムでの内容を参考に、資金調達への理解を深め、自社のビジネス成長の可能性を最大限に引き出しましょう。
次回のコラムは「実行可能な事業計画を策定するためのポイントとは?」についてご紹介します。お楽しみに!