JICA経済開発部 「売るために作る」農業-SHEPアプローチを実践する-

2022年1月25日

SHEPアプローチとは?

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SHEPアプローチを取り入れた国々からは、農家の所得が大幅に増加したという成功事例が次々と報告されています。

2006年にケニアで開発されたSHEPアプローチは、「作って売る」から「売るために作る」への意識改革をもたらす農業普及手法です。市場を意識した栽培技術や販売方法の改善によって農家の所得向上を支援し、新たな農業支援の柱として世界およそ50か国に広まっています。SHEPアプローチを取り入れた国々からは、農家の所得が大幅に増加したという成功事例が次々と報告されています。例えばケニアで2020年に終了したSHEPプロジェクトでは、対象農家において2倍以上の所得の増加が確認されました。またマラウイでは、農家の家の新築や改修が進むなど短期間に目に見える効果が現れました。
SHEPアプローチの実施者は、JICAの課題別研修を中心に育成されていることから、今回SHEP課題別研修の内容をダイジェストにまとめたJICA-Netマルチメディア教材「SHEPアプローチ研修ダイジェスト」を作成しました。

SHEPアプローチの実践を紹介

SHEPアプローチは、日本の農業普及から多くのヒントを得て開発されたため、日本の農業、農産物流通に関わる人々の働きとSHEPアプローチの活動は密接な関係を持っています。教材の前半では、日本の農業普及の根底にあると言われる、「考える農家」とそれを支える関係者について、日本の農業、農産物流通の事例を、北海道帯広を中心に紹介しています。
後半では、SHEPアプローチの概要と仕組み、各国で実施している活動や工夫について紹介します。SHEPアプローチは、4つのステップに従った順番で農家への普及活動を実施することで、農家のモチベーションを徐々に高め、農家が主体性をもって活動に取り組むことができるように工夫されています。SHEPアプローチの具体的な取組み方法の部分では、JICAが今まで携わってきた各国の事例を豊富な映像や現地の声とともに紹介しているため、理解しやすく、実践のイメージを持ってもらえる教材となっています。

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市場調査では、農家が直接市場を訪れて情報収集を行います。

稼ぐための農業を目指して

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JICA課題別研修でも、新しく作成したSHEPの教材として研修員に紹介しました。

JICAでは、2030年までに100万人の小規模農家にSHEPアプローチを活用した農業普及サービスを届けることを目標に掲げています。これを達成するために、SHEPアプローチを理解し、農家に対する実践が可能な人材1万人を育成する予定です。本教材は、これらの人材すべてを対象に制作しました。
具体的には、世界各国の活動現場におけるSHEP研修時や、課題別研修の事前自主学習教材、またSHEP実践者(各国政府機関、他ドナー、民間事業者など)がSHEPアプローチの基礎を学ぶためや、日本人を含めた専門家育成のための教材として活用する予定です。先日開催したJICAの課題別研修「アフリカ地域 市場志向型農業振興(行政官)(B)」でも、新しく作成したSHEPの教材として研修員に紹介しました。
他にも、大学講義等で実践的な農業普及手法を学ぶ教材としても有用です。
実際に、大学での実践的な農業普及を学ぶコースにおいて、SHEPがモジュールに取り入れられる事例がでてきています。今後、そのような授業の中でも、本動画教材の活用が期待されます。

教材の言語は、日本語だけではなく、英語、フランス語、スペイン語、ロシア語、アラビア語に翻訳され、世界各国で視聴されることを想定しています。
今後は遠隔でもSHEPアプローチを体系的に深く理解するツールとして活用され、世界中にSHEPのファンが増えることを願っています。

(注)動画の最後で紹介されているSHEPの教材・広報資料は、JICAウェブサイトの以下のページに掲載されています。ぜひご活用ください。

福田 晃子
JICA経済開発部

このページで紹介している教材

SHEPアプローチ研修ダイジェスト

「食べるため」から「稼ぐため」の農業への変革をもたらすSHEPアプローチは、日本の農業普及から多くのヒントを得て開発されました。この動画では、SHEPアプローチの概要と、各国で実施している活動や工夫について紹介します。
2019年に開催された第7回アフリカ開発会議(TICAD7)では、「SHEP100万人宣言」が表明され、JICAでは2030年までに100万人の小規模農家にSHEPアプローチを活用した農業普及サービスを届けることを目標に掲げています。SHEPアプローチの実施者は課題別研修を中心に育成していることから、SHEP課題別研修の内容をダイジェストにまとめた映像教材を作成しました。遠隔でもSHEPアプローチを体系的に深く理解するツールとして活用され、世界中にSHEPのファンが増えることを期待しています。