JICA人間開発部 子どもの栄養改善にむけて-東京栄養サミットサイドイベントで活用-

2022年2月22日

すべての形態の栄養不良をなくす

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「人生最初の1000日」は、低栄養対策が最も効果的であると言われています。

JICAは、SDGsゴール2のターゲットの一つでもある「すべての形態の栄養不良をなくす」ため、低栄養対策が最も効果的とされる「人生最初の1000日」を重点とし、母子保健分野での協力を通じた取り組みを積極的に推進しています。

2021年12月7日(火)、8日(水)には、日本政府主催により、東京栄養サミット2021が開催されました。栄養サミット時・以降で議論される方向性、日本の経験をストーリー仕立てで教材化し、今後のJICAの母子栄養協力の方向性をわかりやすく国内外に示すために、JICA-Netマルチメディア教材「日本の母子栄養・食育の取組み-子どもたちの健やかないのちと学びのために-」を作成しました。

日本の母子栄養と食育の取り組み

日本では、妊婦健診、乳幼児健診、学校給食、健康診断等ライフステージのあらゆる場面で栄養改善が行われています。こうした施策や政策を一貫して進めてきたことにより、日本は戦後の低栄養を克服し、乳児死亡率の低下等子供の健康改善を実現し、世界有数の長寿国となりました。

また、母親の妊娠から子供の幼児期までに集中した様々な母子保健サービスとその連携を通じた栄養サービスの提供、そしてその後も給食・食育プログラム等により、日本では子供のうちから高い健康意識や食習慣が醸成されています。

教材では、このような日本の母子栄養及び食育の取り組みが具体的にどのように行われているのか、母子手帳から始まり、健診、離乳食や学校給食等、子どもの成長の各段階に沿って紹介します。

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乳幼児健康診査の様子。母親や父親にとって、育児で普段から気になっていることを医師や保健師に相談できる貴重な機会となっています。

東京栄養サミットのイベントで活用

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公式サイドイベントの様子。冒頭で本教材の英語版ダイジェストを流しました。

東京栄養サミット2021に先立ち、12月2日にUNICEFと共催で行った公式サイドイベント「子どもたちに健やかな未来を-給食と栄養教育の可能性-」では、本教材を軸としてプログラムやスピーカ-を構成しました。具体的には、冒頭で本教材の英語版ダイジェストを流し、日本の経験、母子手帳、学校給食といった流れで、それぞれの分野の第一線で活躍する方々にお話しをいただきました。当日は300名弱が参加しました。

さらに栄養サミットでは、まさにこの教材で作成したような栄養政策の内容・展開が議論されており、教材が国際潮流に沿った内容であったことが確認されました。

また、日本の栄養政策の中心となる厚生労働省にも共有し見ていただいたところ、高い関心と評価をいただきました。

母子栄養を学ぶ必須の教材

他にも、母子栄養関連のプロジェクトや研修には、日本の母子栄養に関する導入として必ず研修員に見ていただくようにしています。既に南アジア栄養研修、母子栄養研修、農業を通じた栄養改善、マレーシア食育LEP2.0といった課題別研修や国別研修で使用し、関係者含め約150名が視聴しました。今後は、モンゴル学校給食導入プロジェクトや母子手帳(能力強化研修)に活用予定です。

本教材は、日本の母子栄養・食育の経験と今後の方向性がわかりやすくまとまっているため、栄養に関する研修のほぼ全てにおいて活用できる教材です。

研修を実施する側からの強い要望を受けて、教材の仏語版の作成も実現しました。今後は、アンゴラ母子手帳プロジェクトやモザンビーク母子栄養プロジェクトでの活用等ポルトガル語圏での紹介に向けて、ポルトガル語への翻訳を検討しています。

本教材を通じて様々な国や地域において日本の知見を活かし、広く母と子の栄養改善の助けとなることを期待します。

野村 真利香
JICA人間開発部 国際協力専門員

このページで紹介している教材

日本の母子栄養・食育の取組み-子どもたちの健やかないのちと学びのために-

この教材では、日本人の健康意識や食習慣を醸成している母子栄養・食育の取組みについて、妊娠、出産、乳幼児、学童を対象に行われている内容に焦点を充てて紹介します。

日本では、妊産婦健診、乳幼児健診、学校給食、健康診断などの場でそれぞれの目的で栄養・食育の取組みが行われています。特に日本人のライフステージのうち、人生早期(妊娠期から乳幼児健診、就学前・初等教育)に集中して栄養・食育の取組みが行われることで、日本人の高い健康意識や食習慣が、子どものうちから醸成されています。そしてこれらの取組みは法律・政策に基づいて、多職種によって有機的に支えられていることが特徴です。 SDGsゴール2にあるように、「すべての形態の栄養不良をなくす」ためには、また生活習慣病の予防のためにも、人生より早期からの栄養改善が必要であると言われています。この教材では、私たち日本人の各ライフステージに根付いている母子栄養と食育の取組みについて、その特徴とポイントを、30分に凝縮してお伝えします。