JICA社会基盤部 「急がば回れ」の復興支援-被災地の経験と知見を国際協力に-

2022年10月20日

JICAの復興支援

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2018年インドネシアで発生した中部スラウェシ地震。

2018年9月28日、インドネシア中部スラウェシ州で発生した地震では、死者・行方不明者4547名、被災者17万2999名、住宅損壊約10万戸という甚大な被害が生じました。

インドネシア政府からの要請により、JICAは2018年12月から2021年11月までの期間、中部スラウェシ州パル市、シギ県、ドンガラ県を対象に、「中部スラウェシ州復興計画策定及び実施支援プロジェクト」を実施することとなりました。

この度制作したJICA-Netマルチメディア教材「インドネシア国中部スラウェシ地震復興支援:コミュニティ再生・生業回復の取り組み-日本の復興経験の現地適用化-」では、本プロジェクトを通して、自然災害からの復興におけるコミュニティ再生・生業回復の取り組みを通じた災害に強い地域社会作りの経験と知見、及び日本の災害復興の経験の現地適用化の事例を国内外に紹介しています。

被災者に寄り添う復興

本プロジェクトで、JICAは過去の日本国内外の被災地での復興経験を踏まえ、物理的な復興だけでなく、被災して分断されたコミュニティを新たに創造し再生することを目指すことが重要であると考え、生業回復・コミュニティ再生支援を行いました。

そのため、中部スラウェシ被災地には東日本大震災の被災地である宮城県東松島市、岩手県釜石市の復興で得たその経験と知見を現地適用化することが必要でした。

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釜石市鵜住居町根浜地区では、高台移転による再建を目指し、行政と住民が積極的に意見交換をしました。

プロジェクトにおいては日本の復興経験、特に釜石市、東松島市による復興の段階から災害に強いコミュニティ作り及び被災者に寄り添い、復興計画や移転計画づくりのプロセスにおける被災者との合意形成の重要性を自治体職員が発信しました。

被災者の暮らしの回復や災害に強いまちづくりには、自治体と住民が何度も話し合い、丁寧に合意形成していくことが重要です。合意形成は簡単なことではありませんが「急がば回れ」で、そのプロセスが共助のしくみを強化し、後戻りしない現地の復興計画、復興の実施につながっています。

こうしたメッセージがインドネシア被災地自治体職員など被災地の様々な人々に届き、津波被害にあった沿岸地域では、自治体職員が被災者の意向を丁寧に聞き取り、合意形成したうえで移転計画を進めるなど、現地の復興活動に変化をもたらすことができました。

さらに2019年に仙台で開催された「第二回世界防災フォーラム2019」では、インドネシアと日本の復興関係者が共同で発表を行い、その経験を世界に共有しました。

災害多発が予測される未来への備えに

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パル市では、生業回復の取り組みとして、収入源の資材や機材を失った女性グループ向けに、手工芸づくりと、販売・食品販売活動支援が行われました。

本教材では、まず中部スラウェシ地震災害や支援プロジェクトについて概観し、そして東日本大震災の後、東松島市、釜石市ではどのようにして復興が行われたか、またその経験をスラウェシ州被災地でどのように適用化したかを、JICAの支援や自治体、被災住民の活動事例を挙げて判りやすく説明しています。

今後はJICA研修員、専門家、カウンターパート、釜石市・東松島市役所職員および同市訪問者などを対象に、東北センター主管の課題別研修、国別研修、釜石市役所での国際協力勉強会、釜石市による草の根技協における現地での上映会、釜石市の一般社団法人や地域振興事務局による活動案内、東松島市の語り部による活動案内等、今年度で100名以上を対象に活用を予定しています。

他には、高校のSSH(スーパーサイエンスハイスクール)探究活動などでの活用も考えられます。

住民に寄り添い丁寧に合意形成を行うやり方は、通常の途上国との技術支援でも重要です。本教材が幅広く活用され、様々な活動の参考となれば幸いです。

平林 淳利
社会基盤部 テクニカルアドバイザー/協力隊事務局 相談役/地域連携アドバイザー

このページで紹介している教材

インドネシア国中部スラウェシ地震復興支援:コミュニティ再生・生業回復の取り組み-日本の復興経験の現地適用化-

自然災害からの復興におけるコミュニティ再生・生業回復の取り組みを通じた災害に強い地域社会づくりの経験と知見、および日本の災害復興の経験のインドネシアへの現地適用化の事例を国内外に紹介するもの。

日本の復興経験に基づき、復興の段階から災害に強いコミュニティづくりおよび被災者に寄り添った支援の重要性を伝える。