JICA人間開発部 日本の工学教育の発展の経験を活用-途上国の科学技術と産業発展に繋げる-

2022年12月8日

工学教育が支えた日本の科学技術振興と産業発展

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工部大学校阯碑。日本最初の技術教育機関で、自国人による自国語での技術教育を可能とする、日本の工学教育の自立化の基礎を築きました。

世界でもトップクラスの科学技術を持つ日本。JICA-Netマルチメディア教材「日本の科学技術・産業発展と工学教育」では、日本が近代工業を確立し科学技術立国として社会経済発展を遂げる過程をたどり、工学系高等教育による人材育成と高度産業人材の社会への供給がいかに国家の技術開発力の強化に貢献してきたか、日本の経験を概観します。具体的には、日本の政府や大学が工学教育や研究をどのように充実させ、産業界・学術界が必要とする人材を育成してきたかについて説明し、途上国の高等教育関係者(政府、大学)の理解を深め、途上国の高等教育の発展の参考になるよう、本教材を作成しました。

日本の工学教育の歴史とJICAの途上国への協力をわかりやすく紹介

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歴史的な写真、図やデータを豊富に用いて日本の工学系高等教育の歴史をわかりやすく説明します。

教材の第一部では、歴史的な写真、図やデータを豊富に用いりつつ、短期間で工業化を実現した日本の工学系高等教育の歴史をわかりやすく解説しています。日本の科学技術と産業の発展を支えたのは、高度産業人材を社会に送り出す工学系高等教育でした。日本では、工業化のスタートがヨーロッパよりも比較的に遅れていた一方で、海外から学んだことを自国に取り入れ(明治新政府下での『御雇外国人』等)、それをさらに日本国内で工夫・発展させることで工学系高度人材の育成に成功してきました。

第二部では、第一部の日本の工学系高等教育の発展の歴史を踏まえたうえで、JICAが途上国で進める高等教育協力の事例紹介を行っています。JICAは長年に渡り、日本が過去、欧米から技術導入を行い、高度産業人材を育成してきた経験を活かして、アジアやアフリカをはじめとした様々な国や地域で、大学をはじめとする高等教育機関にて、座学よりも研究・実験・実践を重視するという日本の工学系高等教育の強みを活かした協力を行っています。

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教材では、専門家やプロジェクト関係者のインタビューが多数挿入され、関係者の生の声を聞くことができます。

動画では、JICA 渡邊国際協力専門員(元九州大学副学長)の他、ケニアで実施中のアフリカ型イノベーション振興・JKUAT/PAU/AUネットワークプロジェクトの小疇浩チーフアドバイザー・(元帯広畜産大学教授)、同プロジェクトが実施されているジョモ・ケニヤッタ農工大学のジェイムス・ムトゥア博士、アセアン工学系高等教育ネットワーク(AUN/SEED-Net)プロジェクトフェーズ4からは、カンボジア工科大学のタン・リャズメイ博士や、東京工業大学・高田潤一教授(同元副学長)のインタビューが挿入され、各プロジェクトの特徴や途上国での工学教育の発展に向けた具体的な取り組みについて関係者の生の声を聞くことができます。

途上国の工学教育の基盤つくりを通じた、科学技術振興と産業発展のために

本教材は、特にJICA事業や途上国の教員・学生を受け入れる大学の皆様が実施する研修・講義などで活用することを想定しました。また、研修・講義前の自主学習としても活用可能です。さらに、国内の大学においても、国際協力や高等教育、工学の講義等で活用することができます。具体的には、JICAにて進める教育グローバル・アジェンダにおける「拠点大学強化クラスター」で支援する途上国の拠点(トップ)大学での活用や、JICA開発大学院連携プログラムでの活用を考えています。JICA留学生は毎年800名~1000名が新規来日し、常時2000人が日本に滞在していますが、そのうち工学分野で開発大学院連携プログラムを実施中の大学において、特に工学系分野で留学をする途上国の行政官や大学教員等を対象としています。現在、JICAの技術協力プロジェクトを通じて、日本の工学教育を理解する方々がそれぞれの国や地域で活躍しています。本教材を通じて日本の経験を国内外に広く紹介し、途上国の人材育成や科学技術、産業の発展に貢献することが期待されます。

JICA人間開発部
(教育ナレッジ・マネジメント・ネットワーク(KMN)「日本の科学技術・産業発展と工学教育」タスク)

このページで紹介している教材

日本の科学技術・産業発展と工学教育

現在世界でもトップクラスの科学技術を持つ日本。日本の科学技術と産業の発展を支えたのは、高度産業人材を社会に送り出す工学高等教育でした。第1部では日本の工学系高等教育の歴史を振り返り、第2部ではJICA高等教育プロジェクトを事例にしながら、途上国への日本の工学教育の伝播と活用について紹介します。日本の政府や大学が工学教育・研究をどのように充実させ産業界・学術界が必要とする人材を育成・供給し技術開発を行ってきたかを国内外で紹介する目的で制作されています。

監修者:教育ナレッジ・マネジメント・ネットワーク(KMN)