5月17日、JICAが国立大学法人長岡技術科学大学（以下長岡技大）と実施する高専生のハッカソン「高専オープンイノベーション（KOI） -Challenges from Africa 2025-」（以下高専OI）の最終審査会が、新潟県長岡市で行われました。今年度は、過去最多である16チームから応募があり、書類選考を通過した日本全国の高専計9校12チーム54名が一堂に会し、英語によるプレゼンを通じてアフリカの社会開発課題解決のためのアイデアを競いました。

今年度の課題国となったガーナとセネガルのテーマは、それぞれ「カカオの危機を救え」と「ラストワンマイル問題を解決せよ」。ハイテクを駆使した夢のあるアイデアやアナログな技術を組み合わせて現地でのニーズを追求したアイデアなど、試行錯誤を重ねアイデアをもとに、様々な視点からの課題解決方法が提案されました。

審査会当日は、宮下幸雄・長岡技大副学長の他、KOIチャレンジ事務局長の中山忠親・長岡技大特命副学長・教授や国連開発計画（UNDP）の審査員に加え、民間企業からブルボン社、JICA関係者らが対面参加しました。当日対面で参加ができなかったCFAO（セネガル：豊田通商子会社）、や株式会社　立花商店（ガーナ）からも事前審査に協力いただきました。
質疑応答では「コスト計算の根拠は?」、「現地の技術で維持が可能か?」など、実用化や現場状況を踏まえた質問が多くあり、それらに対して高専生たちは、これまで自分たちが検討してきた内容について回答しました。

審査員による厳正な投票の結果、今年度の入賞チームは以下の通りです。今後、日本でのプロトタイプ試作・実証実験を経た後、各チームがそれぞれガーナ、セネガルに渡航し、現地で実証実験を行う予定です。

●ガーナ課題：「ガーナの危機を救え！」
・入賞：長岡高専「カカオの殻が未来を変える-廃棄物から収入と環境を生む新たな循環-」

●セネガル課題：「ラストワンマイル問題を解決せよ」
・入賞：函館高専「重曹とナノバブルの力で魚の鮮度アップ-漁師へ鮮度向上技術の導入による持続可能なセネガル漁業-」

また、企業・団体特別賞として、以下のチームが表彰されました。

●ブルボン賞：函館高専（ガーナ）:ジア・ポット冷蔵庫を用いてカカオ豆発酵の安定化を目指す

●CFAOモビリティセネガル賞：函館高専（セネガル）:重曹とナノバブルの力で魚の鮮度アップ　-漁師へ鮮度向上技術の導入による持続可能なセネガル漁業-

●立花商店賞：大分高専（ガーナ）:次世代に繋ぐカカオ農園 メタンエネルギーで実現する持続可能な農園再生

●UNDP賞：富山高専（セネガル）:QRコードを利用したセネガルの物流改革 Logistics reform in Senegal using QR code

高専OIは、2019年から今年度までに計６回実施され、全国の高専から延べ約308名が参加してアイデアを競いました。

過去の高専OIではケニア（長岡高専：アメリカミズアブの肥料・飼料化）やルワンダ（北九州高専・都城高専：コーヒー豆の糖度自動測定装置の開発、宇部高専：ゲーム機能を搭載した栄養・健康改善指導アプリ機能の開発​）、ナイジェリア（佐世保高専・北九州高専：自己発電型水道メーターの開発）など計15件を提案・制作しました。また、アフリカで実証実験を行った高専生発案のソリューションを日本の地域課題にも応用すること（リバースイノベーション）を目指しており、実際にアメリカミズアブの肥料・飼料化事業はアフリカでの実証実験を経て日本での実用化が進められています。

アフリカの社会開発課題への取組とリバースイノベーションを組み合わせた試みが評価され、高専OIは2023年度日本オープンイノベーション大賞（内閣府主催）の最優秀賞（内閣総理大臣賞）に選ばれました。


関連リンク

●高専OIウェブサイト
Kosen open innovation challenge | オープンイノベーション (kosen-oi.com)

●24年度高専OIキックオフイベント
高専オープンイノベーション（KOI）のキックオフイベントを長岡技大と開催しました！ ｜ アフリカひろば - JICA

●JICA・長岡技術科学大学「アフリカ地域のソーシャルイノベーションに関する教育研究の覚書」（2024年3月）
長岡技術科学大学とアフリカ地域のソーシャルイノベーションに関する教育研究の覚書を締結 ｜ アフリカひろば - JICA

​​​​​​​●第5回日本オープンイノベーション大賞・内閣総理大臣賞受賞について（2023年2月）
「JICA-高専オープンイノベーションチャレンジ」の取り組みが「第5回日本オープンイノベーション大賞」内閣総理大臣賞を受賞 ｜ ニュース・メディア - JICA