島田監事監査意見についての対応

平成16年12月

「平成15年度国際協力機構島田監事監査結果意見」に関する対応について(報告)

会計検査院による報告書掲記案件関連

リザルト・ベイスト・マネイジメントに関して

計画段階での事前調査、合意形成努力については、事前評価表の作成の義務付け、英文プロジェクトドキュメントを作成し相手国政府と案件のニーズ等につき合意形成を図るなど、既に制度化されています。また、環境等に影響が及ぶ案件については、「環境社会配慮ガイドライン」の導入により、環境等に影響が及ぶ可能性のある案件については案件採択前に相手国住民等の意見を広く聴取する制度を確立しています。

今後の対応としては、1)意思決定プロセスの明確化と質の確保、2)知識の蓄積と質の向上、3)供与機材の調達にあたり無償資金協力部審査室を活用し積算・技術審査の適正化を図ること、を検討していきます。

さらに、以下の項目等について方向性、課題を明確にするために、監事意見書で取り上げられたプロジェクトの総合評価報告書を作成します。

1)技術協力プロジェクト等の企画・運営に関連して、技術的な審査、助言を得る体制の検討(法人委託技術契約上の責任関係の明確化、課題別支援委員会機能の活用等)。
2)技術協力プロジェクトに活用する機材の調達に当たって仕様書作成の責任を明確にする制度の検討。

事業実施中における「フィードバックシステム」に関して

2001年度に実施した評価結果の活用状況に関するアンケート調査の結果、評価結果のフィードバックの促進のためには、評価結果の質そのものの向上に合わせ、「業務プロセスにおける評価結果活用の制度化」「評価に対する意識改革」「評価結果へのアクセスの改善」の必要性が挙げられています。

JICAではそれぞれの課題に対し、これまで以下の取り組みを行ってきました。

  • 業務プロセスにおける制度化—事業事前評価表への評価結果の活用を記入する欄を設定。
  • 評価に対する意識改革—国内外の評価主任に対する研修を定期的に開催し、評価の意義・目的を周知。
  • 評価結果へのアクセスの改善—事前評価表に対する事業評価グループのコメントを取りまとめたデータベースの構築。

また、「学習する組織の文化」の醸成及び組織内部の改善運動の一環として、良い評価・フィードバックを発掘・表彰することを通じ、さらに評価の質・マネージメントの改善の観点から、グッドプラクティスの提示とJICA内での知見の共有、学習効果の向上、並びにインセンティブの高揚を図る予定です。

事業評価関連

インパクト評価に関して

協力案件のインパクトに関しては、プロジェクトレベルのアウトプットの上位目標への寄与度・達成度の視点から、終了時評価において発現の見込みを立てるとともに、事後評価にて評価を行っています。但し、当該分野における協力成果に関しては、個別プロジェクトレベルでの評価は困難であり、プログラムレベルでの検証が必要であることから、今後、プログラム評価手法の研究を行うことを計画しています。さらに、そのプログラム評価手法の研究結果等を踏まえ、協力プログラムのアウトプットを含むインパクト評価を実施する予定です。

効率性評価に関して

事業評価ガイドラインの改訂に際し、旧来の効率性の視点であった投入規模の適切性、投入の活用度合い、タイミング等に加え、費用対効果(「アウトプットやプロジェクト目標をより低いコストで達成する代替手段はなかったか」「同じコストでより高い達成度を実現することはできなかったか」)や相手国において実施された類似プロジェクトの比較などの効率性の視点を盛り込み、その強化に努めています。また、実際の評価において効率性評価の視点が盛り込まれるように、評価手法の開発(ユニットコストの比較、投入に対する裨益対象の評価など)にも取り組んでいます。

平成17年度は、評価手法の開発の一環として、効率性評価の考え方に関する指針の策定を検討することを予定しています(現在策定中の評価指標の設定のあり方に関する指針の策定後に実施する予定)。

計画関連(PDM関連)

「上位目標」の考え方に関して

事前評価の際に、因果関係の論理性・納得性等について、評価可能性審査の観点から、目標の明確化、指標の選択・設定の適切性、5項目評価の視点の適切性等とともにチェックしています。さらに、評価研修においても評価の観点からロジック・モデルの考え方の説明を行うなどしています。

また今後の取り組みとして、職員研修等にて、上位目標が過大にならないよう留意して指導を行います。

数値目標の設定に関して

適切な指標・目標値の設定はプロジェクトを適切にモニタリングする上で重要であるとともに、評価の際に必要となるデータの種類・収集方法を確認する上で不可欠な情報と認識しています。このためJICAでは、指標設定の現状・課題を把握し、適切な指標設定のあり方を検討することを目的に、技術協力プロジェクトを対象とした上位目標およびプロジェクト目標に関する指標設定の状況の整理を行っています。また、本取り組みにあわせ、他ドナーの指標設定の取り組みに関する整理を行っているところです。

今後は、上記取り組みを踏まえ、過去の技術協力プロジェクトおよび他機関の事例をもとに、指標・目標値の設定に係る課題分野横断的な問題点の把握と適切な指標設定のあり方について検討するとともに、特定の課題分野における指標・目標値の設定に係る検討を行い、指標設定に関する指針の策定を行う予定です。

成功確率のフェアーな記載について

事前評価に関しては、案件実施の妥当性・必要性についても事業事前評価表に記載するとともに、過去の評価結果の活用についても事業事前評価表に記入欄を設け、教訓の活用を推進しています。また、事前評価結果の承認に際しては、一定規模以上の案件については理事会に附議されるなど、組織的に検討・チェックを行う体制を整えています。

PDM上の「外部条件」に関して

各チームに配属された評価主任を対象に行っている評価研修で、会計検査院において指摘された案件を事例として取り上げ、案件形成から事業実施中の案件管理の中において、外部条件への対応をいかに事業運営の中に包含し、マネージメントしていくかについて検討を行っています。

今後は、キャパシティ・ディベロップメントの概念を職員に普及させ、事業に反映させていく方向です。すなわち、従来外部条件として設定されていた問題を吟味し、極力プロジェクト内またはプログラム全体に取り込んでプロジェクト目標・成果の達成につなげる計画立案の思考に変えていきます。

計画の作成に関して(インディケーターの大切さ)

課題別指針の整備、技術協力プロジェクトの委託化推進の過程で、より適切な指標の設定に努めています(加えて上記6.の対応も参照)。

PDM作成者の研修に関して

従来の人事研修で作成者の能力向上を図っていることに加え、JICAが各プロジェクトレベル、課題レベルで蓄積された教訓や経験、ノウハウをJICA職員間または、外部援助関係者で共有するための分野課題ネットワークシステム(通称ナレッジサイト)にPDM等のプロジェクト情報が掲載されるようにしており、この仕組みを通じて作成者が類似案件のプロジェクト情報を参照するといった経験のフィードバックが行えるようにし、新案件のPDMの質の向上を図っています。

今後さらに、プロジェクト情報の整備を積極的に推進し、ナレッジマネジメント体制を強化していきます。

受入研修の活用によるプロジェクトPDMの作成に関して

いくつかのコースにおいてPDMを作成し、現状の問題分析、アプローチの検討を行うワークショップを開催し、右により策定されたPDMに基づき、技術協力プロジェクトを形成する取り組みをすでに行っています(例:ブータン地方行政、メルコスール観光振興等)。また、研修コースの成果をより明確化するために、近年より多くのコースでアクションプランの作成を推進しています。アクションプランの中では、具体的な開発案件につなげるためのPDMや年次計画を作成しています。

短・中期的には、PDM作成が適当であると判断されるコースで、PDM作成にあたって充分なガイダンスを日本側が提供できる体制にある案件については、PDMの作成を促進していきます。ただし、研修コースの中でPDMを作成するためには、充分なガイダンスとファシリテーターの存在が不可欠であるため、このような研修委託を可能にするための予算措置を行う必要があります。

「事業実施計画」作成アドバイザー制に関して

本指摘事項については、事業実施計画書の質的向上を含め、在外事務所のセクター能力の強化につき喫緊の課題として取り組んでいます。具体的には、国際協力専門員の本部課題部及び在外事務所への配置を進めています。特に在外事務所においては、国際協力専門員はセクターアドバイザーとして、国別事業実施計画策定、プログラム・プロジェクト形成、要望調査、事業実施計画書やPDMなどの計画策定、モニタリング、評価などを行っています。

その他事業関連

「受入研修」についての評価に関して

平成15年度より新しい実施報告書の様式を策定し、新評価方法を導入しました。この方法では、コースの計画段階において研修課題に応じた3から5点程度の到達目標と、それを評価するための方法(ベンチマークテスト、実習結果、レポート、アクションプラン等)を設定し、各研修参加者がそれらの到達目標をどの程度達成し得たかを集計し、それを最終的なコースの評価としています。

研修終了時に作成される研修員の帰国後の活動についてのアクションプランに関しては、積極的に導入を図っているところです。また本邦研修中にワークショップを開催してPDMを作成し、具体的な案件形成につなげている案件も何件か出てきています。

今後、こうしたアクションプランについては、研修効果を高めるツールとして、さらに、評価の指標として、今後の促進を図ることとします。特に組織・制度づくりに貢献するものや、プロジェクト計画案的なものについては、在外事務所に送付し、在外での案件形成の一助としていく考えであり、特に効果の高いものについては、フォローアップスキームを用いて、その実現への側面支援を行います。なお、適切なアクションプランの作成には、受入先の協力が必須であるため、先方の理解と協力を得ていくことが課題となっています。

帰国研修員フォローアップ事業に関して

平成14年度の帰国研修員向けソフト型フォローアップの開始により、帰国研修員自身による調査研究の実施、セミナー・ワークショップの開催、教材・マニュアルの作成など研修終了後の活動への支援が可能となりました。この結果、研修成果の活用・発展が効果的に実施され、極めて優れた成果を挙げる事例も出てきています。

他方、本邦研修の成果が帰国後の活動に十分生かされていないケース、帰国研修員と日本側関係者の間の協力関係が十分発展していないケースもあることから、JICA東京では、15年度より8コースを対象に、試行的に本邦研修とソフト型フォローアップ協力の一体的な計画、実施、評価を行っています。具体的には、帰国研修員に対しては、本邦研修で作成したアクション・プランの具体化のためのワークショップ、セミナーを開催するとともに、本邦研修で得た知識・技術などを自国で応用するための追加的な調査研究の実施を、本邦協力機関に対しては、課題別ホームページの運営、課題別の帰国研修員メーリングリストの運営、オン・デマンドによる助言・情報提供などを支援することとしています。

国内機関と在外事務所の連携に関して

研修事業においては、在外のニーズと国内のリソースをいかに結びつけるかが課題となっており、16年2月の機関長会議においても議論を行っています。国内事業部の取組みとしては、在外での研修案件形成のため、在外で活用しやすい国内リソースデータベースを検討中です。

また、草の根技術協力事業では、途上国住民に直接裨益するきめ細かい援助を実施するとともに、国際協力に関する国内の理解促進と担い手の育成に取り組んでいるところです。

なお、参考教材に関する取り組みとしては、以下を実施中です。

技術協力プロジェクトにおけるNGO等との協力に関して

意見書で述べられていることと同様の趣旨から、PROTECOの他、技術協力プロジェクトにおけるローカルNGOの活用を既に実施しているところです。

援助案件に対する専門員等による事前審査に関して

16年4月に実施した組織改革の一環で、各課題部には複数の専門員を「課題アドバイザー」として配置しています。また、「技術審議役」を配置することにより、案件のアプレイザル、実施等の面でより強力な専門的アドバイスを受けられる体制を整備しています。

さらに、16年度からの在外強化の大きな流れの中で、6つの「地域支援事務所」を設置したところです。地域支援事務所では、担当地域の案件形成機能の強化を目指しており、これら地域支援事務所に優先的に専門員を配置していくことを検討していきます。

映像資料関連

ビデオによるプロジェクトの記録に関して

パイロットの位置づけを持つプロジェクトの効果をどう普及させていくか(スケールアップ)については、メディアの活用方法を含めて16年度の調査研究でも検討したいと考えます。

国総研の映像資料の充実活用に関して

平成15年度より、JICAの課題別指針を援助関係者に説明するため、各課題タスクフォースで視聴覚資料作成に着手しています。現在、分野課題指針が確定またはほぼ確定した13課題で、分野課題別ビデオおよびWeb閲覧画像を作成中です。

この分野課題別ビデオは国総研にも配布し、援助関係者の研修に提供します。またWeb閲覧画像はJICAホームページに掲載し、関係者が自由にアクセスできるようにする予定です。

復興支援事業における安全対策については、平成15年度にUNHCRの協力のもと、職員向けのエマージェンシートレーニングを国内で実施しました。16年度はこれに加え、タイでUNHCRが実施してきたフィールドで実践を学ぶエマージェンシートレーニングをJICA関係者の研修として実施しています。

なお平和構築支援事業のための研修資料としては、「平和構築支援」課題チームが分野課題別ビデオを作成中で、15年度にはカンボディア・東ティモールへの現地取材を行いました。さらに平成16年度は、平和構築教訓事例集の作成、職員研修の開催を行っています(初級を年3回、中級を年2回)。

また、JICA図書館では、JICA内で作成したビデオ等の映像資料を受け入れています。図書館で所蔵している「映像資料」の15年度利用実績は、次のとおりであり、活用目的は特定できないが、相当数の活用が行われています。

貸出:292件 ビデオコーナー利用者数:99人

専門家養成研修、専門家派遣前研修(PCM研修を含む)においては、教材は講師が選定しており、必要に応じて活用されていますが、さらに映像資料の存在を委託先に周知していく考えです。また、JICA内各部署に対して、作成された映像資料の図書館への納品を呼びかけます。

なお、図書館に所蔵している映像資料の検索については、既に図書館ポータルサイトの目録検索において、「映像資料」を指定して国別・分類別の検索が可能になっています。

新たなビデオ資料のコンセプトに関して

上記「国総研の映像資料の充実活用に関して」の第1段落の取り組みと同様です。

援助のエクスパティーズの集積に関連して

上記「国総研の映像資料の充実活用に関して」の第1段落の取り組みと同様です。

国際広報に関して

タイムリーで有効な情報発信を行う手段として、英文のホームページが果たす役割は大きいと考えます(英文ホームページのトップページへのアクセスは月平均1万件を超えている)。しかしながら、英文のホームページでは国総研の調査研究報告書は閲覧可能になっているものの、各国においてJICAが行っている事業等についてのタイムリーな情報提供は現時点では不十分といわざるをえない状況にあります。よって今後、英文のホームページに記載するべき情報を整理したうえで、関連各部に対する情報提供の徹底を図り、平成16年度末を目処に英文ホームページの改善を行うこととしています。

機材供与関連

機材供与に伴うスペアパーツ、消耗品等の継続的確保に関して

現地でのスペアパーツ・消耗品の入手を容易とするためには、機材本体の現地調達の促進を図ることが必要です。このため、供与機材の調達は現地調達を原則とすること等を定めた現地調達ガイドラインを、H16年6月に作成しました。

今後は、既に制定済みの現地調達ガイドラインに基づき、現地で入手可能な機材については極力現地で調達することを徹底するなど、現地調達化を進めていきます。このためには、プロジェクト開始前、及び開始後の機材投入検討・協議段階において、極力現地で入手可能な機材を選定することなどにより、スペアパーツ等の入手が容易となる投入計画を策定します。このことにより、機材本体のみならずスペアパーツ、消耗品の入手ルートも相手国内に求めることが可能となり、更には相手国政府のよりいっそうの自助努力も期待できると考えます。

供与機材の処理についてのガイドラインに関して

供与機材は、供与後相手国政府に所有権が移転し、相手国の国有財産となるため、基本的には、相手国の国有財産管理法等に則って「処分」されるべきものと整理されます。現在、技術協力プロジェクトでは、R/D期間(協力期間)中、プロジェクト実施のために供与機材のプロジェクト優先使用権の行使を義務付けており、またプロジェクト終了後は、プロジェクトの成果を維持・発展させることも義務付けています。技術協力プロジェクトの案件別事後評価調査、開発調査のフォローアップ調査では、持続性を総合的に評価するなかで供与機材の活用状況も評価し、関係諸機関に必要な助言を行うこととしています。

さらに、在外事務所による案件別事後評価調査体制をはじめ、組織としてのフィードバック体制を一層強化していきます。

「ノー・アポ・キャンペーン」に関して

「サービスアップキャンペーン」の中の「ノーアポキャンペーン」の取組みについて、JICAニュースにおいて「ノーアポキャンペーン」の記事を掲載し広くJICA職員に紹介し、その趣旨の理解を促しました。

農業プロジェクトのフォローアップに関して

記述されている事項については、プロジェクト期間中に国立農牧林業技術センター研究員及び普及員の能力強化を行っています。また拠点農家に対する技術移転を実施しました。さらに、プロジェクトのフォローアップ協力を2005年1月までに実施し、この中で「栽培・普及」の長期専門家により持続的営農技術の定着を進めていきます。

なお、技術指導目標をプロジェクト期間中に達成できなかった400戸の周辺農家に移し、右長期専門家により持続的営農技術の定着を推進中です。これら400戸については、約10戸毎のグループ化を進め、さらにそれぞれのグループに対して共同育苗、共同圃場を設置し、活動支援を行っています。

将来的には、プロジェクトの成果を生かすための新たなプロジェクトの形成も検討しています。2モデルサイトから普及地域を拡大し、2008年までに1,500戸の農家への普及を目指します。

アマゾンの環境保全のための日系移民リソースの活用について

アマゾン日系移民は、胡椒栽培や「森林を創る農業」と呼ばれるアグロフォレストリー農業の先駆者として75年に及ぶ経験が高く評価されています。JICAは、日系農家と連携し、熱帯果樹、胡椒栽培に係る技術開発を実施してきました。また、現在は、現地NGOとの連携による小農支援プロジェクト及び、日系団体と我が国NGOの連携による環境教育プロジェクトを実施中です。加えて、アマゾン地域において先進的な活動をしている日系人農業従事者等を第三国専門家として派遣しています(ドミニカ胡椒栽培」専門家の派遣実績あり)。また、16年度より、北伯群馬県人会施設「群馬の森」を利用した「東部アマゾン森林保全・環境教育プロジェクト」を開始しました。また、日系移民が有するアグロフォレストリー技術の普及について検討を行っています。

今後、「東部アマゾン森林保全・環境保全プロジェクト」において研修を実施するための圃場を完成させるとともに、日系人によるアグロフォレストリーについての研修の実施に向け、引き続き努力していきます。また、現行の「第三国専門家派遣事業」及び「伯国在住専門家派遣事業」制度により日系移民を専門家として派遣し、熱帯雨林地帯の環境保全型農業を伯国内外へ普及する事業を検討します。

また、2004年4月には、アマゾン地帯の環境保全を目的に「アマゾン環境プログラムオフィス」を開設しました。今後、実施体制の整備を図り、戦略的にアマゾン環境保全のプログラム化を進めるが、その中で日系人材の利用拡大に努める計画です。さらに、協力対象地域をブラジルのみならず、その他のアマゾン諸国7ケ国へ拡大し、日系人専門家派遣及び日系移住地への技術普及、技術者受入を行っていくことを検討していきます。

日系人の援助リソースとしての活用に関して

日系人技術者は、南米諸国(やポルトガル語圏アフリカ)にて、(1)共通言語の強み、(2)自然・社会環境への知見に富む、(3)日本語・日本文化を理解することから、特に本邦派遣専門家との連携に際しては(非日系専門家と比し)高い優位性が認められます。このため、「第三国専門家」として派遣する等、国際協力への登用を積極的に図っており、平成15年度には、中南米諸国8カ国に対し、33名の日系第三国専門家を派遣しています。

また、日系人の援助リソースをさらに活用するため方策につき、以下の方向性を目指して現在検討中です。

さらに、日系人専門家ニーズ分析、人材発掘と人材データバンクの整備及びマッチングを促進するため、「日系専門家連携強化」に関する長期的アクションプランを検討していきます。

日系ブラジル少年問題に関して

在日ブラジル関係者数約27万人で義務教育適齢期3万人以上、この内1万人以上が未就学及び不登校者であり、在日外国人未成年者中、ブラジル国籍者の非行は第1位となっています。これはJICAにとっても看過しえない(重要)課題と認識し、以下の対応を講じました。

今後においても、この問題は基本的には国内行政機関(特に地方自治体等)が担う課題であるものの、JICAとしては既存の制度を弾力的に運用して側面的な支援を図る所存であり、具体的には以下の点について検討していきます。

監査で指摘されている本課題については、日本政府、ブラジル政府、地方自治体、NGO及びJICA等の関係者による連携が必要であることから、JICAとしては長期的にも、関係機関の役割を確認しつつ、連携可能なJICA事業のあり方を検討していきます。

安全対策クラーク地域会議に関して

14年度以降、安全対策クラークの実務能力の向上を図るため、域内連絡会議(本邦研修を含む)を6回開催し、治安情報収集法、防犯指導技法等の向上に努めています。

さらに、本会議の充実を図るため、(1)会議テーマの厳選(国際テロにかかる情報交換)、(2)安全対策クラーク用英文資料の作成(「最近のJICA関係者の犯罪被害の傾向と対策」等)を行っていきます。

以上