庵原監事監査意見についての対応

平成16年12月

「平成15年度国際協力機構庵原監事監査結果意見」に関する対応について(報告)

I アフリカの特性に配慮した援助

課題1:実施機関の脆弱性と低い援助吸収能力

「提案1:準備段階プロジェクト」について:

既に一部の技術協力プロジェクト、開発調査案件においてはローカルコスト手当てを確実にするため受入国予算年度に配慮した協力期間を設定しています。「人間の安全保障プロジェクトモデル案件」においては、プロジェクト形成段階から現状の把握・分析ともに、課題解決のための活動方針、実施体制・手法等の検討を行い本格調査の下準備を行っています。

先方政府の財政状況、予算システムを的確に認識することが必要であることから、アフリカ部で実施する「アフリカ地域PRSP/公共財政管理にかかる基礎調査」(H16〜H17)を通じて現状把握と本部・在外事務所関係者間での認識共有を図っていきます。

「提案2:社会的弱者・最貧層をターゲットとしたモデルプロジェクト」について:

「人間の安全保障」の考え方を反映した事業を推進するとの観点から、既に今年度採択案件においては極力「現場型モデルプロジェクト」を組み込む形で案件形成を実施しています。

マクロ、メゾレベル(プロジェクトの直接裨益範囲を超えた受益対象)へのインパクトを具現化するためには、技術協力だけでなく無償(ノンプロを含む)等資金協力との連携強化が不可欠であり、各国現地ODAタスクフォースにおいて一層の連携促進を図ることとします。

「提案3:貧困層の収入向上に向けたクレジットトレーニング」について:

現物供与→リボルビングファンド方式は農村開発型プロジェクトを中心に既にJICA事業において導入済みであり、これらの経験を踏まえ、今後は経験の整理と組織内普及が必要となっています(参考:H15国総研客員研究員報告書)。

また、平成16年度調査研究「マイクロファイナンス」において、現制度枠組み下で実施可能な短・中・長期的な取組みの研究を予定しています。

課題2:相手は重債務貧困国

「提案4:見返り積立資金の有効活用」について

既協力案件の活動費に見返り資金を充当することは、トレーニング等活動内容が特定されるケースを中心に実施事例が存在します(タンザニアバガモヨ農業プロジェクト等)。

近年の公共財政管理の議論において、見返り資金の存在自体が、受入国の財政管理上、今まで以上の透明性を求められる状況にあります。このため、既協力案件の持続性を担保するための方策としては、中長期的に当該国の予算が確保されるよう働きかけていくことも必要と考えます。

「提案5:コモンファンドなどの有効活用」について

既にタンザニア、ウガンダ等においては、MTEFに掲載するべくプロジェクト予算概算額を提供しています。今後はその他の国における同種の状況に対応するべくガイドラインを設定するべく研究を進めていきます(「アフリカ地域PRSP/公共財政管理にかかる基礎調査」(H16〜H17)。

課題3:外部条件の変化と柔軟性を持たせたプロジェクト運営

「提案6:小規模案件の組み合わせもしくは段階的開発方式の採用」について

小規模の協力から始めて育てていく発想を根付かせることが必要であり、そのためには、案件形成・採択段階からプロジェクト単位での検討だけでなく、プログラム単位での検討を積極的に進めていく必要があります。そのため、プログラムアプローチや協力全体のマスタープランを支えるものとして、ポジションペーパー策定やセクタープログラムへの参加に一層取り組んでいきます。

課題4:発展途上の対アフリカ援助経験

「提案7:現地リソースの有効活用」について

現地リソースの活用に関しては、すでに一部の技術協力プロジェクト等で実施しており、プロジェクトの持続性確保の観点から、日本側投入を補完する形で、現地の大学や研究機関をプロジェクトのステークホルダーとして取り込んでいる案件も実施中です。

今後も、技術的、言語的、文化的に最適な人材の活用によりプロジェクトの費用対効果向上が見込まれることから、現地リソースの有効活用を進めることとし、在外事務所において、ドナー会合等の場も活用して現地リソース活用に関する他ドナーの実施事例の情報収集、活用可能なリソースの特定に努めていきます。また、地域支援事務所による実施中案件のモニタリング支援を通じて、現地リソース活用のグッドプラクティスを蓄積し、共有化を図ります。専門家の養成・確保に関しては、専門家養成研修(例えばエイズ分野)の立ち上げを検討していきます。

II 優良案件の形成に向けて

課題5:案件審査から優良案件の形成へ

「提案8:相手国オーナーシップの尊重」について

相手国オーナーシップの尊重は、本部・在外の双方にて、基本的認識として共有されています。

提案に記載されているような成功事例の教訓とともに、失敗事例からも学ぶ必要があることから、地域支援事務所を通じた情報の蓄積・共有化を検討していきます。また、成功案件との技術交換や第三国研修等を通じた相互交流を通して、途上国間でのオーナーシップの発揚の場を積極的に設定するほか、過去の協力案件(特に失敗事例)においても、オーナーシップ尊重の観点から、フォローアップ協力等による継続的な支援に努めます。さらに、相手国のオーナーシップ尊重を中核とする「キャパシティ・ディベロップメント」を、JICA事業の援助アプローチとして主流化していきます。

「提案9:「人造り、国造り」のコンセプト重視」について

本部・在外ともに、提案内容は基本的認識として共有されており、今後、単一スキームでのアプローチではなく、技術協力、無償資金協力、青年海外協力隊の組み合わせによるプログラムアプローチを、より一層推進していきます。具体的には17年度要望調査の案件検討からは、協力プログラムについての検討・評価を行って事業の有効性や自立発展性を総合的に検討します。また、個人・組織・制度といった多層的な支援を共有する「キャパシティ・ディベロップメント」アプローチの普及を図ります。

「提案10:「プログラム型ODA事業」の形成と現地タスクフォース」について

平成16年度より援助効率促進費と開発事業費の一部を統合した「国・課題別計画策定経費」の導入に併せ、従来のプロジェクト単位ではなく、プログラム単位で案件形成を行う体制を整備しました。現地ODAタスクフォースでの議論等を通じて当該年度に案件形成を重点的に行うプログラムを選定した上で、プログラム単位で実施計画書を作成することにより、成果重視を念頭においた案件形成が可能となるとともに、企画調査員やプロジェクト形成調査などの案件形成に必要な投入を従来より柔軟に行い得るようになっています。

すでに現地ODAタスクフォースへの参画を推進してきており、現在まで64カ国において参加を確認しています。本年度実施中の要望調査では、技術協力・無償資金協力と有償資金協力の連携をも視野に入れつつ、現地ODAタスクフォースで十分な意見調整を行うことになっています。

また、プログラム単位で事業を進めるステップとして、平成16年度より案件決定後の実施段階においてプログラム実行計画書を導入しました。今後、国別事業実施計画改訂、案件形成、要望調査、案件検討、案件実施等一連の年間業務フローにおけるプログラムの取り扱いを整理し、プログラム単位での事業実施を強化していきます。「現場強化」の推進により、在外事務所のイニシアティブが発揮されるようになっており、現地ODAタスクフォースの活動に対してより貢献できるよう、在外事務所における取り組みを強化していきます。

III 事務所体制の整備

課題6:ロジからサブへ

「提案11:事務の簡素化、IT化、英文化」について

「ナショナルスタッフの有効活用」に関しては、各種研修を充実強化するとともに、採用・昇進等を事務所長が柔軟に行えるよう変更しています。また、「IT化」については、17年4月までに主要事務所〈約30事務所〉と本部を国際情報通信網で結ぶ予定です。「英文化」については、経理関係書類や各種申請書類等を中心に原則英文化する計画です。

さらに「現場強化の推進」〈緒方プラン〉により、現地事務所に大幅に権限委譲を行い、職員等の在外事務所へのシフト、ナショナルスタッフの充実強化、ロジ業務の一層のアウトソーシングを進めていきます。

課題7:調達・経理・法務等守りの体制の強化

「提案12:在外事務所への支援」について

「機材の現地調達ガイドライン」および「ローカル・コンサルタント活用の手引き」を作成し、本年6月に全在外事務所宛に送付、周知徹底するよう指示済みです。また、機材の現地調達への移行に伴い、職員への調達研修の内容を現地調達中心にシフトすると共に、新たにプロジェクトの調整員を対象とした派遣前の現地調達研修を開始しました。今年4月より、在外赴任者派遣前研修において試行8事務所への赴任者を対象とした在外主導に関する調達制度についての研修のコマを新設し、毎月研修を実施しています。

今後は、現地調達の実施に伴い、仕様書作成等調達支援、調達業務全般に関して助言を得られるヘルプデスク機能を外部委託により整備します。また、「調達情報」の内容を、より充実させることで、現地調達を支援します。さらに、巡回指導等により、在外事務所調達担当職員、ナショナルスタッフ等への情報提供、研修を行います。また、コンサルタント契約制度は、在外主管案件におけるコンサルタント契約のための制度変更を本年9月末までに行いました。また「在外主管案件コンサルタント契約手続きマニュアルも同じく9月に、完成・配布済みです。なお、在外主導が30事務所体制に拡大されたときには、現在設計中の調達制度が中小の事務所にも適したものであるか否かを常にモニターしつつ、必要に応じ改善してゆく必要があります。

コンサルタント契約に関する守秘が必要な情報や大容量の情報については当面、在外事務所との間では業務公電FAXや郵送での送受信となるものの、可能な限り早期に電子情報での遣り取りができるよう、システム環境を整備中です。

IV 情報の発信

課題8:有識者への情報の発信

「提案13:関係者間の相互理解の促進」について

広報活動奨励については、派遣前の研修や現地事務所を通じ、専門家、先方実施機関等に働きかけます。また、現地ODA協議会については、ODAタスクフォースの活動の一部として、国際機関職員、NGO関係者等を含む現地有識者との意見交換等を積極的に行うよう、現地事務所を通じ働きかけていきます。

「提案14:在外における案件の検討強化」について:

本年度実施中の要望調査では、現地ODAタスクフォースでの議論等を通じて現地で候補案件を一定レベルに絞り込んで回答することになっています。また、「現場強化」の推進の中で、現地ODAタスクフォースへの積極的参画等を含めて、現地主体での案件形成および案件検討をより一層進める体制整備を図っていきます。

「提案15:本邦における案件絞込み作業の軽減」について:

本年度実施中の要望調査では、現地で候補案件を一定レベルに絞込み、本邦での案件検討においては、案件の順位・優先度についての在外での判断を最大限配慮・尊重することとしています。さらに、本邦から現地ODAタスクフォースへの技術的支援機能を強化し、なるべく早い段階での要請(候補)案件の適否に関する助言を行うことで、更なる案件の絞込みが可能と考えます。

「提案16:事業実施に至る事前準備段階の短縮」について:

在外主管については、アフリカ地域では、ケニア・セネガルにおいては10月1日に開始しており、さらにタンザニア、ガーナ、エチオピア、マラウイ、ザンビア、南アフリカにおいては明年4月1日より導入予定です。専門家リクルートの早期事前検討については、(1)制度・手続き面の整備、(2)人材基盤の整備、(3)情報収集・整理を通じて改善しているところです。第一に制度面の整備では、派遣手続きの見直し、公募期間の短縮等を実現しており、第二に人材基盤の強化としては、PARTNERの登録人材の充実を図っています。第三に、人材確保グループにおいて、課題部等とも連携して、人材情報の蓄積と整理を進めており、案件検討段階を含めた供給サイドからの事業実施の可能性の早期検討に資するよう取り組んでいます。

「提案17:技術協力協定の締結による事務手続の簡素化」について

現在までに31カ国との間で技術協力協定が締結され、包括口上書による年度計画単位での国際約束形成が行われており、また、外務省によるより多くの国との技術協力協定締結促進の努力を支援しています。さらに、技術協力協定締結を交渉している国および交渉を開始しようとしている国との間では、技術協力協定締結までの過渡的措置として、口上書(新雛形)による案件単位での国際約束形成が制度的に可能となっています。これらの措置は、事務手続きの簡素化につながるものと言えます。

今後は、国際約束マニュアルの整備などを通じて、技術協力協定の締結、および過渡的措置としての口上書(新雛形)の導入促進を引き続き支援していくとともに、国際約束関連業務(年度計画の策定、形成状況のモニタリング等)を一層確実、かつ、円滑に実施していきます。

「提案18:継続検討案件等の取扱い」について

継続検討案件については、採択に必要な条件を明確に示すとともに、地域支援事務所による技術支援などのアクションを迅速にとることにより、早期に実施の可否に目途をつける体制の整備を進めます。また、未採択案件の先方への説明については、さらに翌年度への優良案件要請に繋げるべく、誠意を持って対応していきます。

以上