庵原監事監査意見についての対応

平成18年7月

「平成16年度 国際協力機構庵原監事監査結果意見」に関する対応について(報告)

I 現場主義と案件形勢段階における業務の迅速化

提案1:「新規案件の検討は在外を主体として一本化する」について

平成18年度新規案件の要望調査では、在外から本邦に要請書が送付される前に、関係者間での意見交換や案件検討の実施を推進したところ、多数の事務所と本部間でテレビ会議を利用した要請案件やプログラムに係る意見・情報交換のための会議が開催され、要請提出に向けた調整が行われました。また、要請書の送付後も10以上の在外事務所とテレビ会議を利用した案件検討会が開催され、地域部、課題部、無償部等、JICA内関係部署が一同に会した形での案件検討が行われています。
平成19年度向けの要望調査においては、要請書の送付前の調整・検討等を積極的に推進する。特にテレビ会議を活用した在外事務所との合同会議は非常に有用と思われるところ、これを促進します。

「提案2:事前評価など計画策定のための作業は可能な限り前倒しする」について

事業規模に応じた合理的な評価を実施すべく、事前評価を含む小規模案件の評価について簡易な手法の適用を可とする制度を導入するとともに、中規模以上の案件の評価についても、基本的に要点を得た簡素な記載とするように周知徹底を図っています。
また、平和構築支援や災害復旧支援など緊急対応が求められる事業(ファスト・トラック案件)に対し、迅速かつ機動的な事業展開を行うため、案件開始時点での情報の制約を考慮して、計画策定(PDMの作成)や事前評価表への記載内容の簡素化や案件開始後の対応が可能となるように案件開始段階での制度の改善を図っています。
案件の在外主管が進んだ結果、案件採択から立上げまでの期間が短縮されています。他方、近年の事業予算逼迫の状況下においては、予算上の理由から採択確定に時間を要する傾向があるところ、今後はこの点に関して意思決定の迅速化に努める必要があると考えます。
先方政府の要請から案件の開始までの期間の短縮は、このような状況を総合的に勘案し、改善の優先度を考えながら検討を進めて行く必要があると考えます。

II 現場主義と機材調達

「提案1:調達企業登録制度の確立と市場調査など現地調達体制の整備」について

調達部では、在外事務所における企業リストの整備等を目的として、現地コンサルタントを活用することによる「企業情報等整備調査」を平成15年度から実施しています。これまでに19ヶ国で実施し、企業リスト作成のほか、現地法令に関する情報収集、市場調査等を行っています。
企業登録・リスト未整備の国については、引き続き各国の市場を踏まえ、「企業情報等整備調査」の活用等により情報収集を行うことが必要と考えます。さらに、企業リストを作成済みの国についても、適切なタイミングにおいてリストの更新・充実を行うことが必要であると考えています。
また、長期的には、第三国調達の効率化にも資するべく、同一地域内の市場や企業情報を地域支援事務所が中心となって域内事務所が共有する体制を整備して行きます。

「提案2:中小事務所の調達業務体制強化」について

「各国が制定する現地調達に関する内規」の雛形においては、各事務所が調達班(選任又は兼任)を置くことを定めており、これによりプロジェクト担当者と調達班との間で相互牽制が図られることが期待されます。
また、調達部においては、在外事務所の調達機能整備・強化のために、ナショナルスタッフに対する調達実務研修、現地調達指導、契約結果に対する精査とアドバイスを制度化しています。平成17年度の実施状況は以下のとおりとなっています。

  • 地域支援事務所におけるナショナルスタッフ研修・・・延べ45ヶ国、約100名のナショナルスタッフが参加
  • 現地調達指導・・・6ヶ国に対して実施
  • 契約結果の精査とアドバイス・・・6ヶ国に対して実施

調達手続きの透明性・公平性の確保のため、引き続き各事務所において相互牽制に留意するほか、調達事務に関するノウハウ強化のためのスタッフ向け研修を引き続き継続して行きたいと考えています。

「提案3:調達部の機材調達に関する役割・機能の再構築」について

調達部の機材調達に関する機能は、本邦調達業務から現地調達支援にシフトしつつあり、これを踏まえた適切な体制整備を検討しています。
今後、調達の実績のモニタリング及び分析、並びに今後の調達見込みの精査を通じ、適正な業務量の把握と外部委託化推進の検討を行う他、調達部内に残る支援、監督機能の内容を精査し、適正な人員配置案を策定します。

III 研修員受入事業(集団研修コース)の改善について

「提案1:「集団研修の質の向上」には在外事務所の関与強化が重要」について

平成18年度対象の要望調査から、集団研修につき各国プログラムとの結び付きを検討するよう要望調査システムを変更しました。その結果、プログラムの構成要素として明示的に位置づけられた要請が、平成17年度向け0%から平成18年度向け62%に増加しています。
また、在外事務所の関与強化を主眼として、平成17年12月にメキシコに研修改善ミッションを派遣し、中南米14ヶ国事務所の日本人職員、ナショナルスタッフを対象とした「研修改善ワークショップ」を開催しました。
このワークショップでは、成果重視の視点から、各国プログラムの中に集団研修を位置づけて行くための要望調査上の工夫、GIの送付、A2A3の受領、在外における研修員候補者のスクリーニング、アクションプランの活用、フォローアップ、同窓会の活用、インパクト事例に至るまでの主要な論点について、本邦ミッションから国内における取組み動向の説明を行うと共に、意見交換を行い、今後の具体的取組の方向性を共有しています。そして、ワークショップの成果として、在外および国内での各々の具体的フォロー事項を、「共同ステートメント」という形で取りまとめています。
この研修改善ミッションは、併せて在トリニダードトバゴ日本大使館も訪問し、同大使館兼轄国10ヶ国に対する集団研修要望調査についても今後の改善への取り組みの方向性を共有しています。
また、平成18年1月の在外事務所次長会議では在外事務所の関与強化の必要性を共有しています。
上記の研修改善ワークショップの共同ステートメントに基づき、在外、国内各々で取組む改善に向けたフォロー事項を取り纏める予定です。
また、研修改善ミッションに続く在外事務所関与強化の取り組みとして、全世界の研修担当ナショナルスタッフ(15−20名)を対象とした本邦における研修改善ワークショップを開催する予定です。併せて、中南米以外の他地域に対する研修改善ミッションの派遣についても検討します。
上記各取り組みを通じて、集団研修事業にかかるインパクトの発現に向けた在外事務所の関与強化と、在外と国内とのインターフェイスの強化を図ります。
また、長期的には、国内においてはコースの質の向上を図り、在外との関係では集団研修を各国のプログラムに融合させていき、研修員の選考過程から帰国後のフォローアップに至るまでの各段階における在外とのインターフェイスを強化することにより、事業効果の向上に取り組んでいきます。

「提案2:集団研修のサブスタンス(研修内容など)に対する課題部の関与強化」について

集団研修のラインアップを課題対応型のラインアップに再構築するために、23の分野課題において、課題部と国内機関がタスク形式で「集団研修グランドデザイン」の策定に取り組んでいきます。グランドデザインでは、課題毎の課題別指針、開発課題体系をベースとして、技術協力プロジェクト、開発調査、国別研修等と集団研修との関係性を、ニーズ分析をもとに整理することから入り、既存コースの整理や望ましいラインアップ、コンテンツ開発、個々のコースの改編、改善への提言等を行っています。各作業チームには、国際協力専門員からなる課題アドバイザー等も参画しています。
集団研修グランドデザイン作業により、これまでスタンドアローンの感の強かった集団研修につき、課題部と国内機関が共同で見直していくメカニズムが整備されつつあります。そして、具体的な研修コースのデザインに際しても、課題部は引き続き国内機関に対して技術支援を行っていくこととしており、その一環として、課題アドバイザーや課題部職員が研修現場に参画する機会を増やしていきます。
また、長期的には、グランドデザインにより構築している分野課題毎の課題部と国内機関の連携体制を個別のコースのレベルでも更に強化していき、集団研修のサブスタンスに課題部が制度的に関与していく方向性を志向しています。

「提案3:課題対応型モデルコースの試行」について

平成17年度、各国内機関は課題対応型のモデルコースを選考し、コース全体の包括的な質の向上に取り組みました。平成18年度は、これをさらに推進し、各国内機関はチーム毎に最低1コースを目標とし、このような研修コースの実現に取組むことを決定しました。
平成18年度では、引き続き、各国内機関は各チーム最低1コースを目標としてモデルコースの形成に取組みます。また、モデルコースの選考、形成にあたっては課題部(グランドデザインチーム)と協議を行うとともに、課題部の技術的支援を受けます。さらに、モデルコースに対する候補者スクリーニング強化等、在外事務所とモデルコースにかかるインターフェイスの強化を図ります。
そして、長期的には、各分野課題の集団研修グランドデザインに沿いつつ、モデルコースを拡充して、課題対応型ラインアップを充実させて行きます。

「提案4:委託先との関係改善」について

これまで、国内部が有していた「特別案件調査」の予算枠は非常に厳しく、年間1〜2件程度しか調査が実施できませんでした。このため、研修受託機関等が途上国の最新の状況を把握する機会も少なく、結果として途上国のニーズが適切に反映されないコースを実施せざるを得ない状況もありました。
このため、平成18年度以降については、ソフト型フォローアップ予算等を活用し、研修受託機関がもっと途上国の現場を訪問する機会を増加させることを目指しています。
さらに、第三国補完研修のガイドラインを策定し、本邦での研修と第三国での研修を有機的に組み合わせ、最大効果が発現できるような研修プログラムを実施できるよう検討する予定です。

「提案5:集団コース概要書の改善について」について

現在のコース概要は、各集団コースが平板に課題別に並んでいるのみであり、各課題においてどのコースが重要であるかが判り難く、たとえ様々な工夫をされているコースがあってもその内容が読み手に伝わり難いものとなっています。
この反省から、18年度向けのコース概要では、目次や索引の機能向上、重要コースの紹介スペースの拡大等により、様々な集団コースの中で何が重要であるかが伝わりやすいものに見直す予定です。

IV 青年海外協力隊派遣事業について

「提案1:海外ボランティア活動の趣旨を踏まえ、ボランティア意欲を鼓舞するような「テーマ」・「開発課題」を設定して、その枠組みの中で「職種・専門分野」の募集を行うこととする」について

開発課題との関連性を明確にした募集は、ボランティアのプログラム化の流れに合致しており、まずは要請案件を開発課題や協力プログラムに組み込むことを目指してきています。この流れはほぼ定着しつつあり、各国の協力プログラムに即したボランティア要請があげられるようになっています。また、要望調査票には、援助重点分野、開発課題、協力プログラム名を明記することとしています。
募集方法に関しては、課題/テーマを明確に打ち出して募集するのが良いという意見は外部からも寄せられていました。そのため、従来の「職種別募集」を平成18年度春募集から「案件別募集」に変更しています。また、平成18年度春募集では以下のことを実施しました。
(1)エイズ対策に焦点を絞った特別募集セミナーの開催
(2)ボランティアの役割が明確なプログラム(例えばガーナの保健分野(アッパーウエスト州地域保健強化計画)、モンゴルの教育行政支援プログラム)を明示した募集

「提案2:募集のためのターゲット絞込み」について

要請に対して応募者が少ない職種(自動車整備、保健師等10職種)を募集重点職種として分野毎に担当を決め、要請内容、リソース情報を蓄積、活用する体制をとっています。また、技術顧問・実業界・大学・専門学校・青年会議所・OB会等の様々なネットワークを活用して募集活動を行うことを心がけています。平成17年度は、協力隊OB会との連携として、愛知・地球博において都市計画・建築関連OVの会とともに公衆衛生に係わる隊員の活動紹介をはじめ協力隊事業の広報を行っています。また、応募者が要請より多い職種(村落開発普及員等)については要請開拓のための目標数値を設定しています。
大学との連携については、昨年帯広畜産大学を皮切りに北海道大学、広島大学等と協定を結んでいます。その上で、帯広畜産大学とは、平成17年8月〜9月にフィリピン及びタイに学生の派遣を行なっています。
平成17年度は参加者実績10名未満の地域における募集説明会を取りやめ、比較的参加者を得やすい地域に重点を置いて募集説明会を実施しました。
要請に対する応募者確保のための方途としては、平成18年度も引き続き前述の方法で強化をして行きます。
国立大学の「国立大学法人」化で、付属校教員を含め国家公務員の身分が解けたことで、学校側の協力が得やすい状況となりました。また、「公立学校教員(即ち、地方公務員)に留まっていた「現職教員特別参加制度」については、これまでの成果を評価した上で国立大学法人教員への適用拡大を検討していきます。併せて一般職・行政職の地方公務員の現職参加促進のための制度構築に係る検討を開始します。
他方、大学との連携においては、広島大学とは既にザンビア理数科教育における協力関係を強化し内容の充実を図っていくこととなっており、現在さらに、フィリピンの酪農強化プロジェクトに対する後方支援の体制作りを検討中です。
また、協力隊OB会との連携については、都市計画・建築関係OVの会とケニア及びセネガルでエイズ対策に関わる協力の実施も検討しており、これらOB会との連携を一層強化していく予定です。
さらに、長期的には、国民参加事業の一環であることから同事業としてのより効果的な事業実施の方途としてボランティア事業と草の根技術協力のそれぞれの特徴を生かした連携を検討して行きます。また、大学との連携をさらに深め、帰国後の大学院進学における優先枠の確保、大学・大学院における協力隊経験の単位化等の取り組みを検討します。

「提案3:協力隊広報誌について」について

クロスロード誌は、協力隊事業40年の中で一定の位置づけを有して存在してきましたが、平成18年度から複数年をかけて、頁数を漸減して行きます。現行91頁から平成18年度は16頁減として内容の整理を行う予定です。
また、平成19年度以降、クロスロード誌の役割、発行頻度を再検討する予定です。

「提案4:協力隊活動を可能な範囲で開発課題プログラムの中で位置づける。そのため在外事務所の体制整備を図る。」について

基本的にすべてのボランティアを協力プログラムに位置づけることとしており、調整員事務所所在国等、国別事業実施計画を策定していない国を除いては、ほぼすべての国で協力プログラムへの位置付けは行われています。
また、在外事務所においては、技術協力事業とボランティア事業を有機的に組み合わせた案件形成・要請開拓が多くの国で実現しています。
ボランティアの協力プログラムへの位置付けは、ほぼ完了していますが、現状では多くの場合プログラム目標を共有するレベルに留まっており、事業間の相乗効果を生み出すには一層の努力が必要であると認識しております。今後、引き続き同一プログラム内での情報共有・協働の動きを広げつつ、ボランティア事業の特性を踏まえた上で連携に関する制度面の整備を検討していきます。また、事業連携の成功事例や課題を抱えた事例の情報共有を行っていきます。

「提案5:要請背景調査での安全性確認重視(安全対策を講じた上での候補任地の決定/治安情勢などが急変した場合の新たな安全措置の是正の検討)」について

現行でも、要請背景調査の際、安全対策は最優先確認事項です。具体的には、交通手段・宿舎・勤務先・通勤ルート等の安全を確認することに加え、通信手段の確保や連絡網の整備に努めています。また、配属先、ホームステイ先に対し、安全対策について配慮するよう依頼をしています。治安情勢が急変した際は、各国の安全対策基準に基づき安全対策を講じています。

「提案6:メンタルケアー、ハラスメント対策」について

現在、メンタルケアー、ハラスメント対策として以下の内容を実施しています。

また、派遣中については、以下にある対策の充実を検討します。

V 南関東直下型地震対策について

「提案:非常時対応マニュアル、緊急時オペレースションルーム、机上シミュレーション等」について

外部コンサルタントを活用し、本部、対象の国内機関(国総研、JICA東京、JICA八王子、JICA横浜、JICA広尾)にかかる大規模地震(東京湾北部地震、M7.2、震度6強を想定)発生時のインパクト調査(耐震性、周辺環境、緊急対応体制等)を実施しました。
また、研修員等の安否確認方法の検討ならびに緊急時の全勤務者用マニュアルのドラフト作成、震災後の速やかな業務復旧を図るための事業継続計画(BCP)作成にかかる必要な部署別の業務優先順位付けにかかるヒアリングを実施しました。
また、以下の作業を完了しています。

今後、緊急対応マニュアルの整備(全勤務者用、緊急オペレーション用、研修員用)に取組みます。
また、コンサルタントによる調査結果、各種提言を踏まえた必要な対応措置(パソコンなどの什器の固定、ネットワーク機器に関する必要なバックアップ体制、研修を通じた各マニュアル、事業継続計画の定期的見直しなど)に取組みます。
そして、研修及び訓練の機会(例:防災の日など)を通じて、継続的な改善(Plan-Do-Check-Act)を図り、JICAにとってより有効な災害対策を組織的に実現して行きます。

以上