「平成20年度 国際協力機構 監事監査報告」に関する対応について(報告)

平成22年9月

中期計画及び年度計画の達成状況について

独立行政法人整理合理化計画に基づく横断的措置について

随意契約の見直し

(1)随意契約見直し計画の進捗状況

  • ア.総合評価落札方式の導入
    「本邦にて契約する委託契約のうち、コンサルタント契約を除くものについて、原則として競争入札(総合評価落札方式)にて実施する。」旨、総務部長から公電にて各部署に通知済み(平成22年1月18日付)。総合評価落札方式を円滑に導入するため、平成21年12月に本部内説明会を2回開催したほか、執務マニュアルを改訂した(「国内契約業務執務マニュアル(平成22年1月版)」(平成22年1月4日執務要領(PR)第1-04019号))。
  • イ.競争性のない随意契約の点検と見直し
    平成21年11月17日閣議決定「独立行政法人の契約状況の点検・見直しについて」に基づき設置した契約監視委員会において、競争性のない随意契約について、随意契約事由が妥当であるか、契約価格が他の取引実例等に照らして妥当であるか等の観点から点検と見直しを行い、新たな随意契約等見直し計画を平成22年4月に策定した。

(2)関連公益法人との契約見直しの状況(競争性の向上)

行政刷新会議による事業仕分けや「独立行政法人の契約状況の点検・見直しについて」(平成21年11月17日閣議決定)を踏まえ、競争性のない随意契約の一般競争入札・企画競争へのさらなる移行について検討した結果、平成22年度の関連公益法人との契約においては、競争性のない随意契約はさらに減少し、金額ベースで関連公益法人との契約全体の1パーセント未満に留まる見込みである。

関連公益法人には、役員報酬・退職金に関する規程および決算指標等を既にウェブサイト等で公表している法人もあるが、そうでない法人については、今後、公益法人改革等の動きに合わせつつ、関連公益法人に対して、役員報酬額、決算指標等の経営情報の公開を促すことを検討していきたい。

(3)1者応募の状況

  • ア.関心表明後、競争に参加しなかった社を対象にアンケート調査(任意)を実施し、理由の把握に努めている。国内業務の契約についても同様のアンケートを実施するべく、準備中。
  • イ.「公募しても一者しか応募がなかった契約」の明示については、全く同じ案件を公示するのは建物管理等の管理系の一部業務に限られており、それら契約の殆どは複数者応募になっていること、また個々の契約の選定結果をホームページ上で公開する際に応募者名を列記することにより一者しか応募がなかったことを周知していることから、御指摘の措置の制度化は行っていない。一方、当機構独自の登録制度を廃止した他、特にコンサルタント契約については、関心表明の受付方法の拡大と受付期間の延長、実施予定案件情報の開示、公示期間の延長、同種案件の一元的公示、プロポーザル作成期間の延長、評価対象業務従事者数の制限、要員計画の柔軟化、公示閲覧の勧奨など、応募者数を増やすための対策を講じ、順次実施している。

保有財産の見直し

施設運営の効率性・有効性の確保のため、機構が建物を建設・改修する際には、設計VEによる計画・設計の見直しや、改修事業の計画的な実施等を図っており、右は国交省が策定した「公共事業コスト改善プログラム」に記載されている施策とも合致する。

具体的には、竣工後10年を超える施設について建物診断調査を実施し、改修を実施している。また、建物の建設にあたっては、ライフサイクルコストの改善を目的として、自然採光・自然通風の積極的導入や屋上緑化の採用、太陽光や屋上雨水の利用等を図っている。(例:中部国際センター)

給与水準の適正化等

内部統制

コンプライアンスマニュアル作成の際に、試行的にリスク評価を依頼し、当該情報をもとにリスク・マップ(暫定版)を作成した。平成21年度監事監査対象部署の総括課長向けに内部統制研修を実施し、内部統制の概要及びJICAとしての重点課題(リスクの洗い出し、クレーム情報等への対応、業務の可視化)について説明した。

また、内部統制の所掌部課は総務部とし、組織規程上明記した。

留意する事項について

わが国海外開発コンサルタントとの継続的な協働関係について

経済基盤開発部が中心となって行っているコンサルタント業界との勉強会において、コンサルタント人材育成分科会を設置し、「若手の養成」について検討している。具体的な対策案のうち、専門分野「事業管理」の試行導入については、業務調整員へ直接経費、直接人件費、間接費の全ての経費を支給することとして整理し、平成22年度より運用を開始した。

また、プロポーザル選定時の要員計画の柔軟化や評価対象業務従事者の絞込みを図るなど、経験の少ない業務従事者を調査団等に加え易くするといった取組みを進めている。

L/A以降の円借案件の実施促進について

円借款の迅速化は大きな課題であり、関係省とも迅速化策を検討しており、調達段階においてはJICAが雇用したコンサルタントを派遣することで、手続の迅速化に取り組んでいる。

調達代理方式の導入は、事業の途上国側オーナーシップを尊重する立場、また、借入人である途上国側が自らの債務負担を伴いつつ事業を実施する円借款の特性等に鑑みれば、円借款事業での導入は一般的には適当ではなく、また、途上国側から受け容れられる蓋然性も低いものと考える。

しかしながら、災害復興のように相手国側の体制が十分でない中で迅速な対応が求められるような場合においては、何らかの対応が必要であるところ、調達代理方式も選択肢の一つとして、そうした場合の対応を検討してまいりたい。

無償資金協力事業における予備費の制度的導入について

予備的経費の導入については、事前に予測が困難な経済状況等の変化、自然条件、自然災害、治安状況等の変化に対応すべく、(社)海外コンサルティング企業協会、(社)海外建設協会等団体へのヒアリング及び協議も含め検討を行い、外務省と調整の上、ガイドライン・マニュアル作成、契約書等の改訂等を踏まえ、平成22年8月までに12案件で試行導入している。

金利リスク管理に係る対応について

金利リスクについては、リスク管理手法の多様化も踏まえつつ引き続き適切な管理を実施し、決算期毎に機構内関係者への円滑な情報伝達を行う所存。

国内研修委託契約の適正化について

援助の事後調査等について

「事後調査等」は以下の2つに大別される。重点目的や評価/調査主体等の相違はあるが、事後の事業状況の改善や持続性確保に役立てる手段になる点は共通である。

事後調査等の情報は、各担当部署において適正に管理され、内容に応じて内部/外部公開されている。

会計検査報告の指摘に関して、無償資金協力の資材調達型の援助の進捗報告及び完工後の活用状況報告については、当機構において同情報を蓄積し、必要に応じて事後調査等へ反映させていくこととしている。

事後評価結果の事後監理については、平成20年度実施の事後評価に関し、事後評価における指摘や提案事項に係る対応状況の確認並びに今後の対処方針の検討を行った。本取り組みは、今後毎年実施する予定である。なお、事後評価においては、スキーム間連携が含まれている案件の評価実施にあたり、連携効果に関する評価視点を盛り込むため、評価過程でスキーム間の情報共有が行われている。また、事後評価の結果、先方の財政的、組織的あるいは技術的な制約等により十分な維持管理がなされていない場合や、予期せぬ自然災害等でこれらの機材や施設に不具合が生じている場合に対応するために、モニタリングを継続し、相手国への働きかけや、有償勘定技術支援等により完成後案件の開発効果の増大に関する支援も開始されている。

協力プログラムに関しては、今後協力プログラム計画書等の関連文書を整備・共有することにより(一部作成済み)、期待される成果に応じたスキームの使い分けや組合せに関する情報の充実化を図りたい。

プロジェクト等に関するノウハウの伝達について

  • ア.無償資金協力事業にかかる事業ノウハウ等の共有化については、次のとおり取り組んでいる。新規案件にかかる事前の調査や案件選定の際(act, plan)は、過去の類似案件から得られた教訓をチェックし、必要な見直しを行い、参考とするべき点につき反映させている。案件の実施中(do)は、コンサルタントや施工業者からの定期報告の確認や現地の現況把握を行うこと等により、問題の早期発見や解決に努めている。
  • 案件修了後は、国際的な評価基準に基づき、社会経済開発面での有効性、効率性、実施を通じて得た教訓等を把握するため、より詳細な事後評価(check)を実施する体制を整備した。これに加え(act)、施設が十分活用されているか、あるいは機材が適切に管理されているかといった実施状況を確認するため、施設・機材の全案件を対象とした現地調査を定期的に行っている。その上で、改善の必要があれば先方政府への働きかけや追加的な支援を行う等のフォローアップを行っている。
  • 施設案件については、一般無償では日本のコンサルタント、建設会社が受注することで、耐久性の高い施設の建設が可能となっている。他方、「ODAコスト総合改善プログラム」や事業仕分けの提言を受け、現地化できる案件については現地の施工基準・現地業者の活用をする方向性にあり、今後は耐久性等に影響するケースが散見することが懸念される。環境調和については、日本の太陽光パネルや浸透膜といった先進的な技術を用いた環境プログラム無償を実施中である。
  • ライフサイクルコストについては初期投資の増大につながる側面もあり、上記状況の中、積極的な活用は難しい側面もあり、また、ライフサイクルコストの算定基準を含め、その定義は国内でもいまだ議論がある状況にはあるが、公共事業への適用状況等に関し情報収集を行いつつ、ケーススタディ等を行っており、今後、無償資金協力への適用可否について検討する予定である。
  • イ.日本の建設会社が現地で施工する際に、監督者として日本の無償資金協力事業の経験を持った第三国からの外国人技術者を配置するケース、継続的に日本の建設会社の下請けとして活動していた現地建設会社がコミュニティ開発支援無償の受注者になるケース等が出てきており、日本のノウハウが伝播することにより技術向上が図られている事例は確認されている。他方、個々の途上国における日本の建設会社の活動は限定的であり、そのインパクトを定量的に測定する段階までには至っていない。日本施工による無償の品質の確保に関し、例えば
  • 1. モルディブのマレ島では日本の無償協力による護岸がスマトラ沖大地震に伴う津波から首都を守ったこと
  • 2. 鳥インフルエンザの対策を強化するためにベトナムにバイオセーフティレベル3の実験室を供与したことにより、同国内において新型インフルエンザの診断が可能となったこと
  • 3. フィリピンに日本が供与した学校はその強固な作りから場所によっては災害時の避難場所としても活用されており、他方他ドナー施工によるものは台風で倒壊したケースも見られること
  • など、日本の高い技術力が途上国の経済・社会に大きな影響を与えた例は多数見られる。日本の技術力にかかる周知・広報については、被災国等における日本の無償資金協力による施設の現況等を用いるなどして、広報ツールとして活用していきたい。
  • ウ.若手職員のみならず、無償資金協力事業にかかる知見については、課題部が協力準備調査を担当することになったこと、2008年10月から実施促進業務がJICAに移管されたことから、各種研修及び実践により広がってきている。またそのプロセスにおいて課題部・資金協力支援部間の交流(実施計画検討会、案件引継ぎ会議)が積極的に行われており、調査と実施の融合を図っており、これらにより現場感覚の醸成につなげている。併せて、平成21より職員等向け事業マネジメント研修を実施し、事例研究等を通じたプロジェクト・マネジメントに関する知識経験の伝達等により組織内での定着及び現場での実践の強化に努めている。

以上