授業実践紹介vol.9 「日本の裏側とオンラインでつなぐ!~チリの環境問題と経済発展について考えよう~」(千葉市立稲浜中学校)
2022.12.23
千葉市立稲浜中学校で社会科を教える鎌田理子先生は、JICA地球ひろばが主催する「国際理解教育/開発教育指導者研修」に参加され、全国で継続的な授業実践に取り組まれている先生方と意見交換やディスカッションを重ねました。
その研修での学びを活かし、同校の中学1年生を対象に、単元「世界の諸地域」を展開されています。
その中で唯一、環境問題に触れる「南アメリカ州」の中で、今回はチリとオンラインでつないだ第5時となる授業をご紹介します。
「チリに住む「ダンディ先生」を呼んでみましょう。ダンディー先生~!」
ダンディ先生はJICA海外協力隊として、リサイクルの啓発活動などをチリ北部の地方都市「イジャペル」で行っています。
イジャペルは鉱工業と農業が盛んな地域です。鉱山の廃棄物処理場があるため、環境汚染が問題となっています。また鉱業・農業による水不足も深刻な問題。
一方、首都のサンディエゴは第三次産業(商業、金融業などのサービス業や、外食産業・情報通信産業)で働く人が多数います。
帽子をかぶり登場から生徒の心をキャッチするダンディ先生(吉田大祐さん)
教室では生徒が首都サンディエゴと鉱山の町イジャペルの2つの地域の住民に分かれ、経済発展と環境問題についてグループで話し合いました。
「環境保全は大切だと思うか」
「あなたは経済発展と環境保全、どちらを優先すべきか」
この議論は実際にチリ各地で巻き起こり、デモにもなったそうです。チリ国内では「環境規制を憲法で義務化する」という内容が新憲法に盛り込まれ、今年9月にその是非を問う国民投票が行われました。
首都サンディエゴ側の生徒
地方都市イジャペル側の生徒
さて、チリ国民はどのような判断をしたのでしょうか。
環境保全は大切だと思うか「重要~重要でない」をグループで5段階で表現。マグネットにより可視化した。
新憲法の是非を問う国民投票
ダンディ先生がインタビューした、「サンディエゴ在住の語学講師Chicaさん(賛成)」と、「鉱物関係の仕事に従事するMiguelさん(反対)」の意見を伝えます。
遠く離れたチリの環境問題は、自分とは直接関係ないと思ってしまいがちですが、チリの人々の「個人にフォーカス」することで、生徒はグッと親しみを感じられます。
「どちらの意見が正しいというわけではありません。皆さんも真剣に考えて、自分が決めた、という感覚を大事にしてください」
ダンディ先生は最後に自分で決めることの大切さを伝えました。
インタビュー相手
「正解はない」
授業を終えて、鎌田先生とダンディ先生に聞きました。
Q:この授業で一番伝えたかったのは?
A:ダンディ先生の住むイジャペル市民の現状です。教科書には載っていない「きれいごとでは食っていけない」という現実を生徒に知ってもらいたかった。
Q:オンライン授業として気をつけたことは?
A:間延びしないこと。そのために「それではお戻しします」という言葉を合図に教室側が進めることや、生徒が理解していないときは、教室側で補足したり質問を復唱したりします。
Q:ダンディ先生は生徒の雰囲気わかりましたか?
A:わからないんですよ!スライドを表示すると生徒が映りませんし、いくら現地とつなごうが、やはり「目の前で話す人の緊張感」にはかないません。だからこそ鎌田先生と同じく、「間」というものを大切にしました。
Q:今回の授業を二人で組み立てるのに苦労した点は?
A:情報の切り取り方には悩みました。9月の国民投票をした新憲法には、環境規制だけでなく、公職の男女平等や社会保障の拡充など他の内容も盛り込まれていました。それに実はイジャペルにはサンディエゴ市民よりもお金持ちもいます。授業の趣旨として必要な情報のみ切り取り、生徒の理解が促せるよう注力しました。
生徒は終始集中して授業に取り組んでいました。
その理由は「ライブ」で現地チリとつながっていたこと、そして二人の先生が生徒の「その時の反応」を大切にしていたこと。「生きた時間」がもたらす効果を再認識しました。
(報告:地球ひろば推進課 竹信裕美)
事業事前評価表(地球規模課題対応国際科学技術協力(SATREPS)).国際協力機構 地球環境部 . 防災第一チーム. 1.案件名.国 名: フィリピン共和国.
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