【福井県】より良い外国人材の送り出し・受入れを目指して!



2025.04.07
インドネシアからの研修生を受入れている福井県の農園を訪問したインドネシア農業省の一行
現在、株式会社農園たや(福井県)では、JICA草の根技術協力事業「技能実習生の帰国後就農・起業支援を通じた人材還流促進プロジェクト」をインドネシアで実施しています。このプロジェクトでは、インドネシアの農業人材の送出し・受入れ環境の改善や実習生の帰国後のキャリア形成支援に取り組んでいます。
今回、プロジェクトの一環として、インドネシア農業省の行政官や農業研修センターの担当職員ら5名が日本での研修(以下、本邦研修)に参加し、福井県と群馬県を訪問しました。研修では、インドネシア農業省が実施する来日前の技能実習生・研修生を対象とした派遣前研修のカリキュラム改善を図るため、日本における外国人材の受入れに係る制度や支援体制について学ぶとともに、実際に受入れを行なっている農業法人および個人農園を訪問し、就労・生活環境などの受入れに係る課題や実習生ら当事者が抱える課題について学びました。
訪問した農園では、受け入れる際の工夫として、1年ごとに1名ずつ受け入れることで、先輩が後輩をマンツーマンで指導できる体制をとるなど、来日直後の日本語が十分できない時期でもミスコミュニケーションを防ぐための取り組みの紹介がありました。また、農園たやを訪問した際には、取り組むべき具体的な業務内容が記載された予定表や予定出荷数を会社から貸与されたスマートフォンで確認し、作業後の報告をLINEで行うことで進捗状況を把握し作業ミスを軽減させる取り組みが紹介されました。他にも、普通自動車免許および原動機付自転車免許の取得支援を行うことで、仕事や日常生活での制限が少なくなるように努めているとの説明がありました。
また、実習生や研修生からは、来日後に慣れない機械操作を求められ戸惑うことがあるので、選考や派遣前訓練時に事前に情報提供してほしいというなどの要望があり、受入れ現場のリアルな様子を把握できました。
インドネシアからの研修生や技能実習生を受入れている農園を訪問した際の様子
研修員たちは群馬県にある外国人材の受入れ機関、NPO法人I.A.E.A. JAPANも訪問しました。
そこでは、研修員や受入れ機関、受入れ農家を一緒にしたグループを作り、各関係者が課題と感じている項目について意見交換会を行いました。
仕事内容について、同じ農業といっても畜産なども含まれることや、栽培品目によって作業工程は大きく異なるため、研修員からは受入れ農家の作業内容がわかるようなプロフィールが必要との要望が挙げられました。また、イスラム教の礼拝や断食といった文化慣習について「どこまで日本の常識に合わせてもらえるのか?」といった日本側参加者からの質問が寄せられました。それを受けて研修員からは「宗教を優先することなく、実習を第一にするように派遣前研修で指導するが、休日や休憩時間は礼拝ができるよう配慮していただきたい」といった回答がありました。参加者からは「生活や宗教、細かな業務内容についてそれぞれの対処法まで議論することができ、大変有意義な意見交換会だった」といったコメントをいただきました。
NPO法人I.A.E.A JAPANと受入れ農家との意見交換会の様子
今回の研修でも、第1回の本邦研修から実施している「外国人材受入れ懇談会」を開催しました。
この懇談会では、外国人材の「送出し」から「受入れ」までの関係者が一堂に会し、「仕事」と「生活」の2つのテーマでグループディスカッションを行いました。
「仕事」のテーマでは、複数の受入れ農家から挙げられた課題として、「指示した言葉がわからなくてもインドネシアの方がすぐに『はい』と答えてしまう」ことが挙げられ、それに対して研修員からは「インドネシアでは目上の人に反論する、自ら話しかけることは失礼という文化があるので、受入れ農家から歩み寄って実習生の理解度を確認してほしい」とお願いがありました。「生活」というテーマでは、仕事以外の時間でも会話が増えるように週に2回はインドネシア人従業員と夕食をともにしているという事例が挙がり、いつでも気軽に話をできる雰囲気づくりが大事であることを参加者間で認識しました。
ディスカッションを通して、作業現場や生活で生じている問題の一部が、両国の習慣の違いによるものであることを理解することができました。研修員からは「派遣前訓練のカリキュラムに日本の仕事場での常識を学ぶ座学を取り入れたい」との提案があり、今後のより良い送出しと受入れに向けて、それぞれの関係者が現場レベルでの課題を把握し議論を深める貴重な機会となりました。
外国人材受入れ懇談会の様子
在東京インドネシア大使館にて研修結果を報告した際の様子。本研修で得た知見や解決すべき課題について発表しました。
今回の研修では、日本国内における外国人材受入れの包括的な制度を知るとともに、現場視察や、実習生や研修生、農家を交えた議論を通して、来日前から来日中における現場での課題について、研修員だけではなく、受入れる側も一緒に学ぶことができました。今回の研修での学びが、より良い外国人材の送出し及び受入れに繋がることを期待しています。
scroll