「防災リーダー育成研修」―日本を襲う災害から、日本人・在住外国人は共に どう身を守るべきか―

2023.09.20

【背景・目的】
 目まぐるしく変化を遂げる現代社会。グローバル化は一層進展し、日本企業で働く外国人も増加しています。
同時に、日本では台風や地震をはじめ、大規模災害も増加の一途を辿っています。災害大国日本では、日本人はもちろん在住外国人も、災害時に命を守る行動をとることが肝要です。そこでJICA関西は、京都府国際センター、八幡市役所、地域で活躍する防災士と連携のもと、在住外国人へ防災知識を伝授するため、多くの外国人従業員が在籍する京都府八幡市の株式会社鶴見製作所にて、同社の外国人従業員に対する防災リーダー育成研修を実施しました。全国各地で「多文化共生」の取組が活発になってきていますが、JICA 関西として「外国人防災リーダー」の育成に関わることは初めてのことです。研修は全 3 回にわたり、鶴見製作所のベトナム人従業員を「外国人防災リーダー」として育成し、そのリーダーが将来的に社内のみならず、地域と連携した防災活動を行う事を目的として実施しました。
 本研修では、JICA 関西の山本国際協力推進員、八幡市役所危機管理課から松浦氏、京都府の防災士である松本氏の3人が講義を行いました。実際に災害が発生するとどういった事態が起こるのか、どう身を守るべきか、それぞれの講師が分かりやすく説明し、参加していた従業員も熱心に耳を傾けていました。研修の後半では、鶴見製作所の海外人材担当の山本課長からクイズ形式で参加者に講座で勉強したことを確認する時間が設けられ、より知識を定着させる工夫も見受けられました。外国人従業員に対する研修ではありましたが、我々日本人も、災害時に在住外国人とどう接するべきか考えさせられた研修となり、参加した全ての関係者にとって実りある時間となりました。

【研修の内容】
 研修には会場(鶴見製作所)に約60人、オンラインで約30人が参加され、見学者である他の自治体からの参加等を併せると、100人を超える参加者となりました。
初めに話したのは、JICA関西の山本国際協力推進員です。台風や地震を経験したことがあるか、参加者に問いかけを行って挙手を呼び掛けたりしながら講義を進められました。

「日本の災害・多言語での情報取得方法」について紹介し、日本の災害情報の発信方法について提示すると同時に、災害時に正しい情報を知ることの大切さ・難しさを訴えました。また、災害時に発令され、緊急度を示す「警戒レベル」については、黒が最も危険…など、色と危険度をリンクさせて覚えてほしいというとわかりやすく説明されました。災害発生時に日本の災害情報を得ることは外国人にとって困難であり、情報を得るには知識を蓄えている必要があることを強調されました。どうしたらより外国人が情報を入手しやすくなるのか、外国人がより災害の知識を身につけるにはどうすべきか、私自身も山本推進員の講義から考えさせられました。

 次にお話しされたのは、八幡市役所危機管理課の松浦氏です。松浦氏は、鶴見製作所の京都工場が位置する「八幡市で起こりうる災害」について話されました。冒頭に、災害情報を知るために覚えておくべき言葉、注意報・警報の違い、ハザードマップを紹介されました。特に詳しく説明されていたのは、地震からどう身を守るかということです。日本でも教えられている基本的な知識を確実に伝達されていました。また、最も強調されていたのは、無料アプリによる災害情報の入手方法についてです。気象庁ホームページ、NHK WORLD、Safety Tipsの順に紹介され、すべてベトナム語での閲覧が可能であることを伝えられました。さらに、多言語音声翻訳アプリや、八幡市防災アプリも併せて紹介されました。最後には、間違った情報に惑わされず正しい情報を得ることの重要性を訴えられ、松浦氏のお話から、正確な情報を確実に届ける「アプリ」の機能向上についてさらに考えてみたいと感じました。

 最後にお話しされたのは、京都府の防災士の松本氏です。松本氏は、「災害時のタイムライン作成」について話されました。「災害は忘れたころにやってくる」という言葉がありますが、今はもう「災害は忘れる前にやってくる」ことを訴えかけられました。未曽有の災害は、いつやってくるか分からないのです。ベトナム人従業者に向けては「マイタイムライン」の作成を呼びかけていました。「いつ・どこで・誰と・どう動くのか」自分の目で見てわかるように整理しておくことが大切です。また、防災マップの作成も併せて呼びかけられており、私もまずは自分自身のタイムラインと防災マップを作ってみようと感じました。松本さんのお話から、自分だけでなく、自分の身の回りの人や、今回の研修を例に外国人をどう助けることができるのか、改めて考えてみたいと思った次第です。

【JICAインターン生の感想(多文化共生防災について)】
 実際に、外国人就労者を受け入れている企業を訪れたのは自分自身初めてのことで、見るもの聞くものすべてがとても新鮮でした。また、これまで多くの災害に見舞われてきた日本で生活するにおいて、どう災害と向き合えばいいのか、日本人目線でしか考えてこなかったことを深く反省しました。災害時、言語の壁や災害の知識不足で一歩出遅れる危険性が高いのは外国人だと思います。多文化共生社会の中でいかに育った文化背景の違う者同士が助け合えるかが鍵だと思いました。互いの違いを受け止め合いながら、言語の壁を越えて協働した先には、笑顔が待っていると感じます。この世界は、もっとつながることができると思いますし、この研修を通してさらにその思いは強まりました。終始感じたのは、ベトナム人従業員に対する日本人の愛です。工場長に、外国人人材を受け入れる上で一番大切にしていることを伺いました。「外国人就労者には、安全に仕事をしてもらうのが一番。モノづくりには外国人の力と協力することが必須であり、いかに日本人がそこを理解していくかが重要だと思います。」とおっしゃっていました。

自分とは違う世界で生きているから、自分とはかけ離れた人生を歩んでいるから。そういった理由で互いを認めないのではなく、一人ひとりが命を輝かせて生きていきたいと願っている、そんな願いの実現のために動ける自分、世界でありたいと思いました。毎日を生きる一人の大学生として、災害時にどういった行動がとれるか、とるべきか考え直したいと思いました。
 世界は一人ひとりの努力によって変えられる、そう信じています。

JICA関西 市民参加協力課 中里 向日葵(インターン)

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