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日本で学んだ知識を活用し、地元のごみ問題改善に一歩前進 ~ジブチ帰国研修員からのアクション・プラン実施報告~

2024.01.16

JICA関西では、大阪市環境局や公益財団法人地球環境センター(GEC)とのパートナーシップのもと「都市固形廃棄物管理の実務(B)」コースを毎年実施しています。2023年度はオンライン研修8月22日~10月3日、来日研修10月4日~11月2日に開発途上国の行政官が参加、本コースをつうじて、日本で学んだ知識や技術を自国の現状の改善にどのように活かすかという観点から「アクション・プラン」を作成しました。ジブチからの参加者ラドワン・アデン・アイナンさんのアクション・プランは特に優秀で、さっそく、帰国後に早速実施したという報告がありましたので、抜粋してご報告いたします。

ジブチ共和国 アリ・サビエ市のごみ問題と日本での研修で得た改善へのヒント

ジブチ共和国はアフリカ大陸の北東部に位置する、人口約100.2万人、面積約23,200平方キロメートル(外務省HPから引用)の国です。首都はジブチ市で、アリ・サビエ市はその南部に隣接する人口約11万人の自治体です。ラドワンさんは、住宅、商店、公共施設等から出るごみの収集・処分、幹線道路等の清掃作業を担うアリ・サビエ市廃棄物管理事務所(AVAS)の所長として2021年から勤務しています。現在同事務所では特に不法投棄、最終処分場でのごみ横溢による環境悪化への対応を迫られており、本コースでは家庭ごみの適正な処理技術を中心に討議や現場見学などを行ったことから、問題解決のためのヒントが多く得られたようです。

図:アリ・サビエ市の位置図(筆者作成、地図データ出典:外務省HP)

アリ・サビエ市遠景、職場の様子(ラドワンさん(中段・中央の写真左側))

日本の家庭ごみ収集現場の視察

日本の最終処分場を視察

帰国後の成果①:最終処分場のアクセス道路の改善

アリ・サビエ市では、最終処分場のアクセス道路の状態が悪く、収集トラックがごみを降ろすべきセル(埋立地点)までたどり着けず、周辺の空き地に投棄する問題がありました。このため、ウエイスト・ピッカー(ごみの中から有価物を拾い売却して生活している人々)や周辺住民にも、悪臭、水質汚染、害虫の発生など、衛生環境の悪化による健康被害が発生していました。ラドワンさんは、開発途上国でのごみ対策に関する国際協力経験豊かな本コースの講師陣からの講義や助言を参考に、この問題を改善するためアクセス道路の補修を行いました。結果、収集トラックが適切な投棄場所まで入ることが出来るようになりました。

AFTER:修繕後のアクセス道路

BEFORE:修繕前の様子

帰国後の成果②:ごみ組成調査(どの種類のごみがどのくらいの量を出されているかの実態調査)の実施

収集で使う車の種類や大きさ、回収頻度や中間処理方法等が、どの種類のごみがどのくらい出されているかに基づき決まることから、適正なごみ収集サービスを提供するには、それを把握することが重要です。例えば日本の都市では、自治体等が組成調査を定期的に行い、ごみを搬入する官民の施設には重さを記録する秤量台が設置されています。しかし多くの開発途上国ではこのような調査も十分できず、計器を設置する資金も無く、よって信頼できるデータが無いことが多いのが現状です。本コースではごみ管理のマスタープランに関する講義や討議を通して、それらのデータの重要性や取得方法について知見を深めることが出来たとのことです。その成果として、帰国後の11月19日、アリ・サビエ市で同僚と共にごみ組成調査を実施し報告書を作成しました。この調査で得られた貴重なデータは今後のごみ収集サービスの改善に大いに役立つことと思われます。

ごみ組成調査中のラドワンさん

調査報告書の表紙

帰国後の成果③:一般市民向け啓発セミナーの開催

アリ・サビエ市では、ごみを出す側の住民たちの知識不足も不法投棄の一因となっており、環境衛生問題を引き起こしています。ラドワンさんは2022年度にJICA中部で実施した「固形廃棄物管理の基礎C」コースも修了しており、日本の3R(リデュース(ごみ減量)、リユース、リサイクル)や市民参加についても集中的に学んだ経験に加え、今回のJICA関西のコースでも、大阪や京都の市民参加の現場を訪れ、住民との交流も体験しました。同じ日本国内でも、行政と市民の連携方法はそれぞれの都市環境や市民の生活状況によって異なることが分かり、対象地域の経済・社会状況に応じたアプローチが求められることにも気づいたそうです。これらの経験を基に12月にラドワンさんが主催した市民向け啓発セミナーでは、収集や最終処分場の現状などを説明し、市民の理解と協力の大切さを訴えました。将来的には、各家庭でのごみの分別の導入を目指す予定とのことで、今後のさらなる発展が期待されます。

啓発セミナーの様子

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