兵庫ブレイバーズ共催試合『ウガンダKATO選手Day2024-JICA海外協力隊がつなぐ日本とウガンダー』
2024.08.16
兵庫県三田市・西脇市を拠点に活動する、さわかみ関西独立リーグに所属する兵庫ブレイバーズは、2012年よりウガンダ人選手の受け入れを始め、これまで6人の選手が活躍してきました。JICA関西では、現在、同球団に所属しているウガンダ出身のKATO選手(カトー・エドリン。以下、カトー選手)を応援するため、昨年度に引き続き、JICA関西と兵庫ブレイバーズの共催試合『ウガンダKATO選手Day-JICA海外協力隊がつなぐ日本とウガンダー』を2024年7月19日(金)に開催しました。
当日、始球式は、アフリカ・コートジボワール出身で、神戸情報大学院大学で学ぶJICA留学生(長期研修員)のアカ・マルセル(以下マルセルさん)さんが務めました。キャッチャーミットまで届く、力強い投球で会場を沸かせました。
マルセルさんを含め9人のJICA留学生が応援に参加。留学生の多くにとっては初めての野球観戦でしたが、応援する観客の中でも一番の盛り上がり。また、試合後には、選手と一緒に写真を撮ったり、サインボールをもらったりと心から観戦を楽しんでいました。
また、今回は、泉佐野市で国際交流員を務めるウガンダ出身のエマニュエル・オチョラさん(以下オチョラさん)が駆けつけてくれました。同じくウガンダ出身のJICA留学生エマニュエル・ニンシマ(以下ニンシマさん)さんとカトー選手、同郷の3人が交流し、祖国を遠く離れた日本の地でのお互いの活動に勇気づけられたようでした。
試合は、残念ながら2-5と敗れてしまいましたが、カトー選手は、6回裏に登板し、力ある直球でこの回を投げ切りました。
ご協力・応援いただいた皆様ありがとうございました。
なお、カトー選手は今シーズンのはじめ、南スーダン出身のジョセフ・デン・トン選手とともに、トライアウトのため福岡ソフトバンクホークスの春季キャンプに参加しました。
アフリカ圏からは初めての参加、今後の活躍にもご期待ください!
カトー選手とJICA留学生
始球式の様子(JICA留学生マルセルさん)
同郷の3人、カトー選手(右)・ニンシマさん(左)、オチョラさん(中央)
兵庫ブレイバーズのウガンダ人選手受入れは、JICA海外協力隊としてウガンダに野球を教えるために派遣された田中勝久さんがきっかけでした。田中さんは、ウガンダの野球少年の夢が「コーチになること」と聞きショックを受けました。そこで、野球を安全に楽しむ場所を作り、子どもたちがプロ野球選手やメジャーリーガーといった大きな夢を持てるようにと思い、ウガンダ野球に関わってきました。田中さんがウガンダで野球選手を教える中で、2012年に一人の選手に兵庫ブレイバーズのトライアウトに挑戦することを勧めて見事合格、以来兵庫ブレイバーズでは、ウガンダ人選手を受入れています。
また、ウガンダ野球チームの躍進にも、兵庫ブレイバーズに所属していた選手たちが大きな役割を果たし、2020年東京オリンピック予選で、アフリカ大会準優勝という結果をもたらしました。現在、ウガンダには、9つのクラブチームがあり、各チーム20名ほどの選手が所属、メジャーリーグ球団(ドジャース、パイレーツ)と契約している選手も輩出するまでになっています。
田中さんの他にも野球を教えるため、JICA海外協力隊で世界へ派遣された隊員はたくさんおり、これまでで36ヶ国707人が各地で活躍してきました。その中には、2023年夏の甲子園におかやま山陽高校の監督として出場された堤尚彦監督、ワールド・ベースボール・クラシック2013のブラジル代表コーチになられた黒木豪さんなどがいらっしゃいます。
今回のイベントでは、同じく野球隊員として2018年からブラジルに派遣され、帰国後は大阪府能勢町で地域おこし協力隊を経て、集落支援員として活躍する高江直哉さんが登壇。ブラジル日系社会での青少年との野球を通じた交流が、その後のブラジルから高校生を野球留学生として受け入れる活動や地域おこし協力隊・集落支援員としての活動に繋がっていることを紹介し、スポーツの経験がJICA海外協力隊への派遣だけでなく、様々な可能性に広がることを紹介しました。
高江さんは、日本の高校で社会科教師として勤めた後、オーストラリアで日本語教育に関わりながら野球を教えた経験から、海外で本格的に野球指導をしたいと考えるようになり、JICA海外協力隊に参加しました。2018年から2020年まで、ブラジルのサルバドール市で日系人とともに貧困層の青少年らに野球指導を行い、チームを2度の全国大会優勝に導きました。ブラジルに残る日本文化を目の当たりにして、帰国後は日本の文化を次の世代に伝えたいと、大阪府の能勢町で地域おこし協力隊を経て集落支援員となり、地域に根差した活動を継続されています。
また、イベント会場となった球場の出入り口にはJICA関西のブースを設置し、JICA海外協力隊の紹介、野球指導で世界各地に派遣された隊員のパネル写真やユニフォームの展示も行いました。
JICA海外協力隊でブラジルにて野球指導を行った高江さん。
下は5回裏のセレモニーの様子
田中さんのウガンダでの活動から約10年を経て、カトー選手のように日本で全力で野球に打ち込み、プロ野球選手になる夢に近づいている若者もでてきました。JICA海外協力隊の草の根レベルでの支援を通じて、かつてはコーチにしかなれないと思っていたウガンダの子どもたちの夢は大きく広がってきています。
日本でプレーした選手が母国に野球や日本のことを伝え、その次の世代が日本を目指す、また、日本の若者もカトー選手のような夢をもって日本でプレーしている選手を知り、JICA海外協力隊に挑戦する、そういった国を超えた繋がりの輪が続いていくことを願っています。
野球隊員が活動した国のユニフォームと活動紹介パネル
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