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2024年度・JICA関西教師海外研修 ペルー研修現地レポート 【後編】

2024.09.24

JICA関西は、関西2府4県の教職員を対象に「教師海外研修」を実施しています。教師海外研修は、教職員の方々が実際に開発途上国を訪問し、国際協力の現場や開発途上国の現状・課題、日本との関係について理解を深め、その成果を、学校現場での授業等を通じて次代を担う児童・生徒の教育に役立ててもらうことを目的としています。研修は1年間かけて実施され、海外研修を中心に、日本国内で実施する事前研修・事後研修、そして海外研修経験に基づき帰国後に参加者の所属校で行われる授業実践、年度末に実施される報告会で構成されます。

 2024年度は、2023年度に引き続き、南米・ペルー共和国を研修国として実施しました。10名の先生方が、2024年8月に参加した海外研修の現地レポート後編をお届けします。
 海外研修参加後、参加した先生方は所属校で授業実践に臨み、来年2月には全体報告会が開催される予定です。

2024年8月15日(木)日系校ホセ・ガルベス校への訪問、ホームビジット

ペルー最古の日系校であるホセ・ガルベス校を訪問しました。ホセ・ガルベス校はまもなく創立100周年を迎える歴史ある学校で、日系移民が大切にしてきた日本的価値感が継承されています。5S(整理・整頓・清掃・清潔・しつけ)の考え方が教職員の共通理解となり、校内の掲示物をはじめ、教育活動においても浸透されていました。こうした学校経営が地域住民にも理解され、日系人以外の児童生徒も多く通っています。

訪問中は授業実践として、小学校4年生と中学校2年生に、日本の学校文化を紹介しました。
小学生向け授業では、日本の学校生活の1日の流れを写真や動画を見せながらスペイン語で説明。ホセ・ガルベス校の児童たちに、ペルーと日本の学校の共通点や違いなどを伝え、最後はみんなでビンゴ大会をして盛り上がりました。
中学生向け授業では、日本の生徒が委員会活動などで制作する掃除やあいさつなどの啓発ポスターを紹介。ホセ・ガルベス校の生徒たちにも実際に自分でテーマを決め、学校やクラスに掲示するポスターを書いてもらいました。文字やイラストも丁寧に仕上げられた、ペルー版啓発ポスターが作成されました。
訪問した日は、ペルーの全国一斉避難訓練開催日でした。避難時には校庭に円形になって集合してから、クラスから持ち出した防災バックを確認し、輪になって児童生徒の緊張をほぐす活動に取り組まれていました。私たち教師から、日本の避難訓練時に注意するおさない・はなさない・しゃべらない・もどらないを表す「お・は・し・も」の取組を紹介しました。
放課後から夜までのホームビジットでは、どのご家庭からも温かくもてなしていただき、有意義な時間を過ごすことができました。
ホセ・ガルベス校で出会った先生方、児童生徒、保護者の方々と、これからもつながりを大切にしていきたいです。
(門真市立第五中学校 前塚 卓三 先生)

2024年8月16日(金)ミ・ペルー地区 フェイ・アレグリア33校訪問

リマ市中心部からバスで約2時間。ミ・ペルー地区にある公立校、フェイ・アレグリア33校(FA33校)に訪問しました。到着してすぐ、グラウンドで子どもたちがスポーツを楽しんでいましたが、その姿の向こう側に建つ家の様子に驚きました。山肌に密集して建つ多くの家。この環境の中でどのような防災活動が行われているのか、これからどんな防災教育について話を聞けるのか、想像もつきませんでした。
校内案内を通じて、各教室の防災バックや校舎に掲示されている避難経路などについて説明をしていただいた後、ペルー・日本教員間の意見交換を実施。それぞれの国の学校内の防災推進について紹介し合いました。ペルーの教育カリキュラムには、防災学習が組み込まれていないと聞き驚きました。教員にとって、学校の体制整備だけでなく、子ども達への防災意識の啓発も大事であり、そのために、教員が発達段階に応じた防災学習を日々実践する事はとても重要です。日本の教育と同様に、ペルーの教育カリキュラムにも防災教育が組み込まれる日が近い将来に来て欲しいと願います。
学校訪問の後は、JICA草の根技術協力事業関係者やミ・ペルー地区近隣災害リスク管理委員会(CVGRD)の同行のもと、学校近隣を視察し、住民の防災力の向上や住民と行政の協力体制の整備など、取り組みを教えていただきました。
日本とペルーは環境の違いがあるものの、教員が目の前の子どもたちの命を守りたいという思いは同じであると感じました。これからもFA33校と情報を共有し、互いに防災意識を高めていきたいと考えています。
(たつの市立半田小学校 真島 千明 先生)

2024年8月17日(土)パチャカマック遺跡群訪問

研修最後のプログラムとして、パチャカマック遺跡群へ訪問。古代より巡礼の地として知られる神殿や遺跡群を見学し、遺跡の大きさや広さを体感しました。綺麗に積まれた石をじっくり見ると、近くの海からの潮風に晒されて少し黒くなっているところや、雨風に晒され、削れてしまっているところが多くありました。
見学の後は、実際に遺跡の修繕体験をしました。積み上げられた石に水をかけて、少し湿らせた状態にし、その部分に粘土質の土を固めて押し当てていく作業でした。一部分を修繕するだけでも、あっという間に時間が過ぎる。この大きな遺跡を保存していくために、力を尽くしてくださっている方に頭の下がる思いがしました。
またパチャカマク遺跡群・博物館にはJICA海外協力隊員が約10年前から派遣されており、今回の訪問でも派遣中の足立隊員が私たちを案内してくれました。足立隊員はペルー人同僚から常に声をかけられ、とても愛されている方だということが分かりました。初めて出逢った私たちを、キラキラした瞳で出迎え、終始明るく最後まで見送ってくれた足立隊員。私たちの訪問が充実したのも、足立隊員の明るさと遺跡への想いによるものだと感じました。そしてきっと、そのお人柄はペルーの方々にとっても、かけがえのない存在になっているのだと思いました。JICAの隊員の存在の大きさを改めて学ばせてもらえる一日となりました。
(葛城市忍海小学校 冨永 有里先生)

最後に…研修アドバイザー、佐藤先生から

8月20日(火)、10日間のペルー海外研修を終えて無事に帰国しました。
 今年は「日本人ペルー移住125周年」を迎えます。研修を通じて、日系社会の歴史を学び、お話を聞き、その上で、ペルー日系人協会、日系学校、ホームビジットのご家族、プログラムを支えてくださった多くのスタッフなど様々な方との出会いから、それぞれの参加者は“125年と自分とのつながり”を感じることができたように思います。
また、日本とペルーを往来しながら、子ども時代を日本で過ごした方々の経験や想いの共有、様々な方との出会い、防災は人と人のつながりから始まることを実感する経験など、研修中の心が響く出来事は語りつくせません。
 プログラムの密度もさることながら、教師海外研修では、参加者が学びと気持ちを共有しながら一緒に創るチームの深い関係性も特徴です。きっと今年の参加者も、これからも続く仲間として、刺激し合い、協力しながら国際理解教育/開発教育の実践を広げていかれるものと期待しています。
 これを読んでくださった教員のみなさん、濃く深いJICA関西教師海外研修に、ぜひ来年はご参加ください。
 (特定非営利活動法人 開発教育協会(DEAR)代表理事 佐藤友紀)

JICA関西教師海外研修 
https://www.jica.go.jp/Resource/kansai/enterprise/kaihatsu/kaigaikenshu/index.html

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