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ウクライナの復旧・復興・発展に貢献- 兵庫の知見と経験の共有を通じて

2024.10.01

 関西センターでは、年間約100件の研修を実施しています。1年を通じて様々な国から国づくりの中核を担う方が研修参加者として来日しており、ロシアの軍事侵攻を受けているウクライナからも参加しています。今回は、兵庫県に蓄積・強みがある知見や震災復興の経験から学ぶ国別研修「保健分野能力強化リハビリテーション」、および課題別研修「災害におけるこころのケア」をご紹介します。

〇国別研修「保健分野能力強化リハビリテーション」

 2022 年 2 月 24 日のロシアによる侵攻開始以来、ウクライナでは紛争により日々多くの負傷者が発生しています。特に四肢切断、頭部外傷等の重症患者は、紛争に関連して増加しています。JICAでは、義肢リハビリテーションに携わる上で核となる人材(ウクライナ保健省・医師・理学療法士・作業療法士・義肢装具士)を対象に、専門人材の育成とリハビリテーション臨床現場での治療技術の向上を目的とした実務者向けの国別研修「保健分野能力強化リハビリテーション」の実施を決定しています。
 これに先立って、2024年9月3日から9月12日まで、日本での視察プログラムを実施しました。ウクライナから来日した8名の専門人材は、プログラム全体を通じて兵庫県をはじめ日本国内の義肢リハビリテーションなどの臨床現場を視察し、ウクライナのリハビリテーション現場の状況や問題点、深刻なニーズについて、当該分野の日本の専門家らと意見交換しました。2025年1月には、この視察プログラムで確認したニーズを踏まえて、実務者向けの研修を実施予定です。
 今回参加した、ドニプロ市立第四病院 理学療法・リハビリテーション部上級作業療法士 トツカ・アンナさんからの感想です。「兵庫県立総合リハビリテーションセンターで同時に多くの患者さんの治療に当たっている光景を見て感動しました。作業療法士が装具を作成する過程を説明していただいたことや、患者さんが自立してできるリハビリを促す環境に感動しました。福祉サービスはソーシャルワーカーとの協力、患者が社会に復帰できる制度やシステムがあるから成り立っているのだと感じました。」

兵庫県立総合リハビリテーションセンターでのセッションの様子

アンナさん(右)と
ドニプロ市立第四病院理学療法・リハビリテーション部長(医師)ピウニク・アーラさん(左)

 この国別研修が形成された背景には、兵庫県が阪神・淡路大震災からの復旧・復興の過程で生まれた「創造的復興」の理念をウクライナの復興や地域社会の再生などに活かし、兵庫県の独自性を活かした復興支援の提言等を行うため2023年度に設置した検討会があります。JICA関西は、この検討会に支援機関の一つとして参画し、2024年度はJICA関西所長がアドバイザーを務めています。検討会の検討や取り組みを経て、兵庫県はミコライウ州、イヴァーノフランキーウシク州と覚書を締結するとともに提言書を作成し、自治体間の支援を中心に、現地ニーズに即した協力体制を構築しています。

〇課題別研修「災害におけるこころのケア」

 JICA関西が兵庫県こころのケアセンターの協力を得て2018年度から実施している課題別研修「災害におけるこころのケア」には、幅広い国から専門人材が参加しています。2024年度は9月3日から18日の日程で実施し、8名のうち3名がウクライナから参加されました。この研修は、開発途上国の中央/地方政府機関で災害保健医療や精神保健政策を担う行政官や、医療施設・コミュニティで災害医療や心理ケアを担う人材を対象としており、災害により心身に大きなストレスやトラウマを受けた人々への「心理社会的支援」に関するアプローチの習得を通じて、各国に適した「こころのケア」モデルの確立を目指すものです。
 ウクライナから参加した、ウクライナ保健省のビドヴァネツ・オレーナさん、ウーマニ市のクチャ・ソフィアさん、リウネ州立こども病院のドゥルゼンコ・アンナさんの3名は「情熱的な講師陣の豊かな知見や他国研修員の経験から学ぶものが多く、母国に帰って実践するのが楽しみです」と嬉しそうに語ってくれました。

(左から)アンナさん、オレーナさん、ソフィアさん

発表資料の作成に取り組む

兵庫県こころのケアセンターでのセッションの様子

※「心理社会的支援」とは:
 被災者のこころの健康の維持・回復のため、心理社会的ウェルビーイングを守り、より良い状態にし、または精神疾患を予防・治療することを目的として実施される各種のコミュニティ内外からの支援。緊急時は被災者やコミュニティによって状況が多様であるため、多層的な支援(①基本的ニーズ(衣食住等)への対応、②家族、コミュニティへの支援、③よりケアを必要とする人への個別の対応、④精神医療の専門家による介入)を同時並行で展開する。

 2024年度にJICA関西が実施する課題別研修では、その他にも「都市固形廃棄物管理の実務(5/8-7/18)」、「都市上水道維持管理(浄水・水質)(6/11-8/2)」、「橋梁維持管理(技術者向け)(9/10-10/26)」、「投資促進・ビジネス環境整備(9/23-10/17)」の各研修にウクライナからも参加し、日本の知見を自国に持ち帰って活かせるよう熱心に学んでいます。

(参考)
〇兵庫県・「創造的復興」の理念を活かしたウクライナ支援 関連サイト

〇ウクライナ国別研修「保健分野能力強化リハビリテーション」
 研修期間:視察プログラム 2024年9月3日(火)~13日(金)
         (うち関西実施 9月9日(月)~13日(金))
      実務者向け技術研修 2025年1月13日(月)~2月8日(土)※予定


〇課題別研修「災害におけるこころのケア」
 研修期間: 2024年8月15日(木)~19日(木)

(研修業務課)

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