阪神・淡路大震災から30年 兵庫が伝える「BOSAI」(下)人と防災未来センター
2025.01.24
JICAと兵庫県が防災分野の人材育成を目的として2007年に設立した国際防災研修センター(DRLC)は、世界各国から人材を受け入れ、知見を共有する拠点としてJICA研修事業を中心に活動しています。阪神・淡路大震災から30年という節目を迎え、かつては被災地だった兵庫の地で、人材育成の観点から世界にアウトリーチしている防災関係の団体をご紹介します。未曾有の大災害から30年を経て、災害の経験と教訓を伝える大切さや、平時から次の災害に備える意識を持つきっかけとなれば幸いです。
JICA関西は、阪神・淡路大震災からの復興の象徴とも言える地域、神戸市の東部新都心・通称「HAT神戸」に立地しています。JICA関西に隣接している「人と防災未来センター」は、防災研修で来日した研修員のみならず、年間300名を超すJICA研修員が見学し、日本の防災の経験と知見の学びを深めています。
阪神・淡路大震災の復興と教訓を世界に発信し続ける施設として、毎年国内外から大勢の訪問者が訪れています。2025年1月17日には、天皇・皇后両陛下が阪神・淡路大震災30年追悼式典後にご視察をされたことで話題になりました。
発災日の1月17日は「半旗」で追悼
「人と防災未来センター」の正式名称は「阪神・淡路大震災記念 人と防災未来センター」、英語名は”The Great Hanshin-Awaji Earthquake Memorial Disaster Reduction and Human Renovation Institution(通称DRI)”です。同センターの特徴が、ミュージアム機能だけではないことはあまり知られていません。阪神・淡路大震災の経験と教訓を踏まえ、災害文化の形成、地域防災力の向上、防災政策の開発支援を図り、安全・安心な市民協働・減災社会の実現に貢献することをミッションとしており、①展示 ②資料収集・保存 ③実践的な防災研究と若手防災専門家の育成 ④災害対策専門職員の育成 ⑤災害対応の現地支援 ⑥交流・ネットワーク、という6つの機能を有しているセンターです。2002年の設立以降、日本の防災・減災専門機関として様々な活動を展開しています。
防災分野のJICA研修員は、来日直後に人と防災未来センターを訪問、阪神・淡路大震災からの復興や備えの大切さについて理解を深めます
2024年度には、JICA関西と人と防災未来センターとのパートナーシップのもと、「災害を契機としたレジリエントな社会づくり」研修を実施し、多大な協力とともに、JICA関西/DRLCとの連携を強化し続けています。同研修ではマレーシア公共事業局から担当官13名が参加し、防災に関する日本の知見、特に大規模災害からの復興過程における行政の役割と、兵庫県が提唱した「創造的復興」の経験を学び、被災を契機とした災害に強い社会づくりの実現に向けた活動計画を作成しました。「創造的復興」とは、兵庫県が阪神・淡路大震災からの復旧・復興の過程で掲げた理念で、震災からの復興は、単に以前の状態を回復するのではなく、新たな視点から災害前よりも“より良い社会”を目指すというものです。
「災害を契機としたレジリエントな社会づくり」研修に参加したマレーシアの防災担当官と人と防災未来センター講師の皆さん
人と防災未来センター、JICA/DRLCと開発途上国との強い絆 の一例として、トルコ北西のブルサ県に建設された「ブルサ防災館」があります。官民が一体となり、コミュニティ全体で防災に備える日本の取り組みに感銘を受けたJICAの帰国研修員が「人と防災未来センター」をモデルとして「ブルサ防災館」の設立に貢献しました。1999年8月17日のトルコ北西部地震(M7.4)から14年を迎えた2013年8月17日に開館し、JICAも「ブルサ防災館運営能力強化プロジェクト」やボランティア 派遣等を通じて支援を続け、トルコとの相互協力を行っています。
ブルサ防災館 震災追体験フロア 震災直後のまち
「人と防災未来センター」が発信を続ける兵庫県の創造的復興、そして、創造的復興の理念を受け継ぎ2015年に仙台市で開催された第3回国連防災世界会議で提唱された「Build Back Better(BBB)」は、JICA/DRLCでも防災人材育成を含む防災事業の柱であり、これからも国内外の皆さまとともに開発途上国の防災能力向上に貢献します。
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