地域と世界をつなぐ、奈良県十津川村でのJICA留学生の学びと挑戦
2026.01.08
2025年10月21日~24日、11名(10か国)のJICA留学生(*1)を対象に、奈良県南部の十津川村で地域理解プログラム「奈良県十津川村から学ぶ自然と共生する観光、村づくり」を実施しました。
十津川村は過疎化や高齢化といった課題を抱えながらも、国が選定する「SDGs未来都市」に選定され、持続可能な地域づくりに取り組んでいます。そんな十津川村で実施する地域理解プログラムは、2022年度に始まり、今回で4回目を迎えました。
2025年度は、十津川村が村の持続的な発展に向けて進める観光、林業、防災などの取組を多角的に学びました。毎年、JICA留学生が学ぶだけでなく、最終日に十津川村役場へ課題解決策を提案しており、今回は玉置村長も初参加し、例年以上に活発な意見交換が行われました。
また、北岡伸一JICA特別顧問も同行し、プログラムを視察しました。
出発の前に、JICA関西で十津川村在住者(元地域おこし協力隊)による村の概要、魅力、課題についてオンライン講義を受講し、十津川村への理解を深めました。
さらに、2024年度のプログラムで十津川村を訪問したネパール出身のJICA留学生(立命館大学)が提案した「自然と調和した健康増進(ヨガ)企画」を最終日に実施するため、参加留学生とヨガの練習を行いました。この企画は十津川村の雄大の自然を活かした観光客誘致を目的として提案され、最終日(10月24日)に村役場と協働で実施されました。
十津川村に到着後、谷瀬の吊り橋を見学。続いて、現在、十津川村で活動する地域おこし協力隊に話を聞きました。知り合いもいない中で当初は不安だったものの、村の人々の優しさ、美しい自然に触れて村が大好きになったという体験談が語られ、「過疎地には日本の社会課題が集約されており、村で自分ができることがあると感じた」と述べていました。
その後、村役場で村の企画観光課と農林課の職員から講義がありました。十津川村は豊かな自然が魅力である一方、土砂崩れなどの災害リスクがあり、水源管理や防災対策で安心な暮らしを支えています。生活を守るためには山の整備が不可欠であり、100年先の森をイメージして働きかける必要があることも学びました。
【JICA留学生の感想】
「村が開発、環境管理、地域の幸福をどうバランスさせているかを理解し、専門家の講義を通じて課題の複雑さと責任の重さを学びました。」
世界遺産である熊野古道が通る果無集落は「天空の郷」と呼ばれている小さな集落。訪れる人をもてなす水桶や花などを横目に、熊野古道小辺路を歩きながら自然・歴史・地域生活のつながりを体感しました。
【JICA留学生の感想】
「日本人の自然との調和の精神を感じ、文化遺産の価値を改めて理解しました。」
続いて、奈良、和歌山、三重の三県境に位置する瀞峡で、2011年の紀伊半島大水害の爪痕や、木材輸送に活用されていた歴史を学びました。
【JICA留学生の感想】
「瀞峡の美しさに感動すると同時に、過去を振り返ることが将来の解決策につながる重要性を実感しました。」
最後に、森林を活用したユニークなアウトドア施設「空中の村」を体験し、代表のジョラン氏から設立の経緯や想いを聞きました。
【JICA留学生の感想】
「地方創生と森林保全、天然資源の創造的活用を結びつけるアイデアを得ました。」
「自然林を教育やレクリエーションに活用する取り組みに驚き、人と自然をつなぐ情熱が、環境にやさしい観光や地域活性化への新しい視点を与えてくれました。」
ネパール出身のJICA留学生が提案したヨガ企画を実現し、村民の皆さんも約15名が参加。自然の中でのヨガは国際交流の場としても意義ある機会となりました。
【JICA留学生の感想】
「村民とのヨガセッションは心温まる体験で、彼らの温かさと笑顔に感動しました。会話を通じて村の生活を理解し、優しさと強いコミュニティ意識に深い感銘を受けました。」
「地元の方々と自然の中でヨガを行い、心身ともに満たされました。自然との深いつながりと、地域交流の可能性を学べる貴重な体験でした。」
最後に、JICA留学生は、十津川村での体験、見つけた課題を踏まえ、課題解決案を十津川村に提案しました。JICA留学生の主な提案は以下の通りです。
・都市部の小・中学生を招き、村の魅力や伝統を伝える交流企画(ガーナ)
・奈良県内の大学のサテライトキャンパスと大学寮設置による林業・農業学習(ナイジェリア)
・谷瀬の吊り橋を「緑」に塗り、自然を象徴する観光シンボル化(キルギス)
・留学生を「十津川村アンバサダー」に任命し、SNSで広報・認知度向上を図る(エチオピア)
玉置村長は2時間半にわたる意見交換に参加し、各提案にコメントを寄せました。村長をはじめとする村関係者からは、JICA留学生からの新鮮な視点、提案によって得られた気付きや学びへの感謝と、今後も継続的な交流への期待が示されました。
本プログラムは、地域課題の理解と国際的な視点による提案を通じて、十津川村とJICA留学生双方にとって学びと交流の場となっています。今後もこうした取組を継続し、地域と世界をつなぐ架け橋を目指します。
*1: JICA留学生について
JICAの人材育成プログラムで来日し、日本の大学院(修士課程あるいは博士課程)を通じ、母国の開発に寄与するために総合的かつ高度な技術や知識の習得を行っている、開発途上国の行政官、研究者、民間企業出身者などの人材です。JICA留学生は、将来国の発展を支えるリーダーとなることが期待されており、また、自身の専門の研究とともに、日本の近代化の歴史を学ぶことで、日本と途上国をつなぐ架け橋となることも期待されています。
【参考情報】
JICA開発大学院連携/JICAチェア | 事業について - JICA
(JICA奈良デスク 福西 真実)
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