広い北海道を舞台に道路維持管理研修をしています。(その2)

2024.03.31

研修後の活動

ブルキナファソから参加したIssouf(イスフ)さん

私は、ブルキナファソ国インフラ・道路整備省で維持管理工事課長のイスフ・ズングラナと申します。日本での「道路維持管理」の研修に参加しました。研修では、路面の劣化を管理する予防的維持管理と、構造上の損傷を補修する技術について学びました。
予防的維持管理は、くぼみや亀裂の処理に役立ちますし、限られた維持管理予算内での効果を最大化することができます。

帰国後は、予防的維持管理を業務に取り入れ、日々の維持管理作業に組み入れたうえで、関係者と仕事に取り組んでいます。
私の部署では、現在JICAと連携して、舗装道路の予防的維持管理を実践しています。
最初に、損傷個所を見つけ範囲を特定します。その後、その範囲を計測し、機能を失った舗装材を取り除きます。次に、穴が開いた箇所に舗装材を載せ、圧密しつつ均した上で、乳化剤を浸透させます。

最後に、準備したアスファルトコンクリートで損傷個所を埋め、コンパクターで圧密します。
これは、JICA研修で学んだことをブルキナファソ実践している一例です。

他にも多くのことを実施しているところですが、別の機会があればお伝えします。
JICAと関係機関の皆様のご尽力に改めて感謝申し上げます。

研修成果のさらなる活用

無償資金協力との連携
JICAでは、途上国からの技術者を日本に招いた研修実施に加え、研修で身に付けた知識・技術を活用して彼らの国造りがより促進されるよう、無償資金協力による機材整備支援も行っています。例えば、道路維持管理の研修に参加し、効果的な道路整備・維持管理のノウハウを取得した研修員が、母国での道路整備に必要となる道路建設機械(重機、建設機器、その他関連機材)の整備を支援しています。2023年度は、ブルキナファソから参加した研修員がその後の道路整備を進めるために必要となる機材整備のための贈与契約をブルキナファソ政府と締結しています。(「道路維持管理機材整備計画」(供与限度額10億600万円))
ブルキナファソ向け無償資金協力贈与契約の締結:道路維持管理機材の整備を通じて安全で効率的な物流の改善に貢献 | ニュース・メディア - JICA


研修フォローアップ事業の実施
過去の研修に参加した途上国の技術者が、母国での研修効果の拡大を図るために、JICAはフォローアップ事業として彼らの活動を支援することがあります。過去の道路維持管理研修では、都市部の道路維持管理のみならず、地方農村部での道路維持管理を住民自身が継続的にできるようなノウハウを提供する機会も設けました。日本と異なり、多くの途上国では、砂利すら敷かれておらず土がむき出しの道路が多く見られます。そのような道路はいったん雨が降ると路面が崩れ、走行が非常に困難な状況にもなりますが、土のうを活用した道路整備方法により、村人自身の労働のみで路面を補強し崩れにくくするとともに、一度壊れても容易に修繕することができるようになります。ブルキナファソでは、2020年度の研修で取り上げた土のうによる道路整備技術を習得した技術者を中心に、2023年度はブルキナファソ国内の道路維持管理技術者に対してそのノウハウを広める研修を行いました。研修の視察を行ったブルキナファソ政府インフラ省大臣もこの手法に感銘し、配下の技術者を鼓舞していました。
千里の道も一歩から!歩みを固めて大きな壁も乗り越える~「土のうを活用した未舗装道路の整備研修」の実施(課題別研修「道路維持管理(E)」フォローアップ協力) | 海外での取り組み - JICA

研修事業をきっかけとした協力のひろがり

課題別研修にご協力をいただいた団体が、実際の海外の現場で道路管理の支援をする活動を開始しています。
英語とロシア語のコースで協力をいただいている一般社団法人北海道開発技術センター(dec)は、ロシア語コースの対象である中央アジア・コーカサス地域の国の一つジョージアでJICA草の根技術協力事業として「道路トンネル管理の高度化推進プロジェクト」を実施中です。プロジェクトが始まったきっかけは、ジョージアから本コースに参加していた研修員が帰国後も定期的に同法人と連絡を取り続け、情報交換を重ねてきたことです。
ジョージアはユーラシア大陸を貫く回廊の要衝に位置し、アジア、ヨーロッパを繋ぐゲートウェイとして地政学的にも重要な地域です。そのため、ジョージア政府も国の発展のため国際交通網の充実を政策目標の一つに上げており、東西・南北ハイウェイの整備を急ピッチで進めています。コーカサス山脈のふもとに広がる国土のため、道路網整備はトンネル数の増加を伴うものですが、政府としては将来的にトンネル管理が大きな課題になると考えていました。首都トビリシでも冬期には気温が氷点下まで下がるほか、山がちな国土を貫く道路では積雪や雪崩、吹雪の発生など、北海道で培ってきた技術や経験が有用です。現在実施中の本プロジェクトでは、ジョージア山間部に位置するトンネルを適切に管理し、地域住民の安全な移動はもとより、物流や人流を確保し、地域振興につなげるため、地域開発インフラ省道路部の職員に技術指導を行っています。
同法人は寒冷地技術の豊富なノウハウを持っていますが、課題別研修を通じて様々な国の道路事情、抱える課題を把握し、途上国の技術者が抱える課題に対して法人所有のノウハウを活用すべく、協力の場を海外の現場まで広げていただいています。

ジョージア地域開発インフラ省道路部とのミーティング

プロジェクト対象地域の道路トンネルの視察

研修事業委託先の声

公益社団法人北海道国際交流・協力総合センター(HIECC)
交流・協力チーム 課長 森内壮夫(もりうちたけお)さん

公益社団法人北海道国際交流・協力総合センター(HIECC)は、JICA北海道が1996年に設置されて以来、JICA研修事業に携わってきております。
現在はフランス語圏アフリカを対象とした「道路維持管理(E)」コースを受託し、国土交通省、北海道庁建設部、ニセコ町などの行政機関や民間団体等からの協力を得ながら、主にアスファルト道路の維持管理について網羅的な研修を行っています。アフリカと北海道では気候や地質などの条件に違いがあるものの、道路設置後の維持管理のプロセス自体に違いがあるわけではありません。JICA研修は単に日本の知識を学ぶのではなく、知識共創を目指しており、本研修でも日本人講師陣がアフリカの道路事情や取組について知ることで、共に考え、知見を寄せ合う場面がありました。例えば、アフリカでは、乾季には砂塵が道路に蓄積され、雨季には砂塵のせいで排水溝が詰まってしまう国もあることが研修員側から紹介されましたが、それを北海道の雪の問題に置き換え、対応策の事例としてニセコ町の防雪柵を視察しました。防雪柵が直接的な砂塵対策に繋がりにくいことは双方理解しつつ、研修員は考え方の転用は可能と受け止め、課題対策の考え方の種が蒔かれたことになりました。
 HIECCは研修員や講師の他、現場視察先での地域住民など、携わるすべての人が幸せになる研修を目指しています。それを継続することで、豊かで活力ある地域社会の創造と北海道の国際化の推進を可能にできると考えているからです。

<関連リンク>
研修員受入事業

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