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旭川ビースターズ外国人選手に試合前突撃インタビュー! ~なぜ彼らは日本で野球をするのか?野球にかける熱い想いを聞いてきました~①

2025.06.10

試合中の旭川ビースターズ

北海道の独立リーグ、北海道ベースボールリーグ(HBL)に所属するプロ野球チーム、旭川ビースターズには、多数の外国人選手が所属しています。彼らの中には、JICA海外協力隊員や、日系連携事業がきっかけで、日本で野球をすることになった選手もいます。そんなビースターズの控室にお邪魔し、6人の外国人選手たちにインタビューをさせていただきました。今回はその中でも、中南米地域のベリーズとアルゼンチンの選手にそれぞれお聞きした内容をお届けします!

「日本で野球をしたい!」という夢を叶えたベリーズ出身のデルバート選手

自己紹介をするデルバート選手

JICA海外協力隊員としてベリーズにやってきた椎葉さんとの出会いがきっかけで、日本で野球をしたいという夢を叶えたデルバート・ハインズ選手。ビースターズの選手として日本で生活する中での、率直な思いをお聞きしました。

~椎葉元隊員へのインタビューはこちら~
旭川ビースターズに青年海外協力隊・椎葉隊員の教え子が入団!~ベリーズで活動中の椎葉隊員にインタビュー~ | 日本国内での取り組み - JICA

控室でインタビューを受けるデルバート選手

―ベリーズでは野球はメジャーな競技ではないと聞きましたが、なぜ野球を始めようと思ったのですか?

2021年に、ヒューストンのプロ野球チームがベリーズに来て、トライアウトに参加しました。そこから野球にとても惹かれました。

―日本に来ることを決めたのはなぜですか?

まず第一に、ずっと日本で野球をしたいと思っていました。そして、協力隊員である椎葉さんに出会い、日本で野球をすることへの熱意を伝えたところ、その夢を叶えるための手助けをしてくれました。彼が全力を尽くしてくれたおかげで、ここに来ることができ、今はベストを尽くそうと頑張っています。

―デルバートさんのご家族は、日本で野球をすることに対してどう思っていますか?

ただただとても喜んでくれています。私が夢のために毎日練習に励む姿を見て、それが叶うようにと祈ってくれていました。家族なしにはここに来ることはできなかったので、必ず恩返しをすると誓っています。常日頃応援してくれています。

―日本に来て、最も大変だと感じたことは何ですか?

食べ物です。ベリーズではコメ、豆、鶏肉などを食べますが、ここでは魚です。生魚が苦手で、食について困ることが多いですが、何とかやっています。

―日本の他のチームメイトはどうですか?

彼らは皆フレンドリーで、優しいです。チームメイトは兄弟のような存在です。

―旭川ビースターズの良い所はどこですか?

チームです。最後の一秒まで諦めません。そして皆がお互いを応援しています。私が負けているときでも、ただ座っているのではなく、もっともっとと励ましてくれ、力を出し切ることができなかったときは、誰かがそばにいてくれます。私たちは家族同然であり、一つになって同じ場所に向かっています。

―将来の展望は?

最も高いレベルで野球をすることです。NPB(日本プロ野球)でもMLB(アメリカ・メジャーリーグ)でも、私の母国をサポートできるようなところに到達したいです。そしてその先は、より多くの扉が開かれるように、リトルリーグをサポートすることを目指しています。ベリーズにも野球選手を目指す若者はいますが、私も長い間仕事をしてきたように、彼らはお金がなく、生きるために働かなければなりません。私は誰でもチャンスがあると信じています。

―子どもたちへのメッセージをお願いします。

何よりもまず、Never give up.(最後まで諦めないで)と言いたいです。何事も遅すぎることはないですが、何かを始めるのに最後まで待つ必要はありません。そこにチームがあって、来月行く機会があるのなら、今すぐ準備を始めることを勧めます。毎晩でも努力しなければなりません。あなたが努力したことは、必ず返ってきます。

終始穏やかな笑顔で質問に答えてくれたデルバートさん。本当に日本で野球をすることができて嬉しい、という気持ちが伝わってきました。

日系社会とのつながりから日本で野球をすることになったペドロ選手

自己紹介をするペドロ選手

また、アルゼンチンから野球をプレーしに日本に来ているペドロ・アンマ選手にもお話を聞くことができました。日系アルゼンチン人であるペドロさんは、どのような経緯で日本で野球をプレーすることになったのでしょうか。

試合前にインタビューにこたえてくれたペドロ選手

―なぜアルゼンチンで野球を始めようと思ったのですか?どのように野球のことを知ったのですか?

アルゼンチンでは日本と同じように野球が知られていて、私の兄が10歳の頃に野球を始めました。その時私は5歳で、兄がどこに行くのにもついていっていました。兄はよく野球で遊んでいて、私も趣味として野球を始めましたが、上達するにつれて野球選手になることが自分の夢になりました。

―はじめはお兄さんと一緒に野球をしていたんですね。

そうです、兄と同じチームで野球をしていました。日本人の高校生とアルゼンチンの野球をしている高校生が半分ずついるチームで一緒にプレーしていました。彼は私より年上でしたが、彼と一緒に野球をするというところからアルゼンチンでの私の野球人生が始まりました。

―日本に来た経緯はどのようなものだったのですか?

最初は2023年にJICAから私にJapan Winter League(トライアウト)の連絡がありました。私の夢はプロ野球選手となって、野球を自分の人生の仕事とすることだったので、迷わず参加を決めました。海外で野球をプレーする、また日本に来る初めての機会で、私にとってとても大きな機会でした。それに加え、世界中の人々が日本の文化、特に日本の野球文化が素晴らしいことを知っていたので、その文化から学び経験し、日本でより良いプロ野球選手となりたいと思いました。アルゼンチン国籍であっても日本でプロ野球選手になることはできます。日本に来る機会があったということは、私のプロ野球選手への夢に扉を開いてくれました。
昨年も日本に来てビースターズでプレーしていましたが、今年はより時間があるため、自分の技術を磨いたり、より良いチームを見つけることができるかもしれません。

―日本での生活の中で、あるいは野球をする中で障壁となるものはありましたか?

文化がかなり違うというところです。アルゼンチンはラテンアメリカであるため、友達とハグするなど、より社交的です。日本の方々はより礼儀正しく、そこが違うなと感じました。文化を学ぶという観点でそれはとてもいいことでした。その両方の文化をプレースタイルにも活かすようにしています。ベネズエラやドミニカ共和国の野球は時にアグレッシブで、怒りをプレー中に表すこともありますが、(中南米の野球と日本野球の)文化の良い面をつなぎあわせて、プレースタイルに反映させることで、自分の中でいい経験となっています。

―野球のほかにもお仕事をされているのですか?

はい、2週間ほど前にビースターズに合流し、今年はワーキングホリデーで日本に来ました。野球をする傍ら、ビースターズのスポンサーのひとつである農業関係の会社で働いています。ほかのチームメイトも何人かそこで働いています。パートタイムで平日は会社で働いていて、週末になると野球をしています。どちらも北海道で暮らすためのお金を稼ぐ手段です。

―それは大変なことではないですか?

そうですね。これは大変なことの一つですが、アルゼンチンでも同じような状況でした。常に勉強と野球を両立しようと努力していました。長期の遠征に行くときは、その期間仕事を離れなければなりませんが、北海道ではその調整がよりやりやすくなっていると感じます。なぜなら野球の練習を行った後にバイクで会社に行くことができるからです。コーチが朝に練習をセッティングしているので、午後に仕事をすることができたり、寮に行けば夜ごはんを食べることができたりと、野球選手にとっては過ごしやすい環境になっていると思います。

―ご家族やアルゼンチンのお知り合いは、ペドロ選手自身が日本に野球をしに行くことに関してどのように思われていますか?

彼らは皆、好意的に思ってくれています。父親の祖父母が日本出身で、日本の家族とイタリアの家族、そしてアルゼンチンの家族がいます。祖父母はいくつかの日本語を知っていて、家でもたまに日本語で話をします。日本に来ることに関して、彼らは喜んでくれています。なぜなら日本でいい経験を積めますし、いい国だと思っているからです。(アルゼンチンと日本は)とても遠いため、彼らは私がいないことを寂しく思っていますし、私も彼らに会えないことを寂しく思っていますが、(プロ野球選手になることが)私の夢であるため、私のことをサポートしてくれますし、私に日本に行ってほしいと考えています。というのも、日本は安全な国で学びがありますし、自分の野球技術を成長させることができるので、皆応援してくれています。

―いつかペドロさんの家族が日本に来て、ペドロさん自身が野球をする姿を見ることができるかもしれませんね。

それが実現することを願っています。ただとても離れているため、日本に来るまでにとてもお金がかかってしまいます。しかし、もっと日本で活躍することができれば、彼らが日本に来ることができるかもしれません。私も日本に一人で寂しく感じていますし、日本語もまだ学んでいる途中です。日本での友達はいますが、家族を日本に呼ぶことは素晴らしいことだと思います。日本は観光するのにとてもいい国ですし、日本で私が野球をプレーするのを家族に見てもらうことはとても素敵な、何物にも代えがたい経験になると思います。

―将来の展望はありますか?

この旭川ビースターズでの経験から学び、より良い野球選手になって、より上のリーグでプレーしたいです。日本で、アジアで、あるいはアメリカで、どこで自分の最高のレベルの野球ができるかわかりませんが、野球を自分の仕事として、自分ができる限りの最も高いレベルの野球を実践することを自分の目標としています。素晴らしい野球選手になること、素晴らしい人格を持つこと、そしてどこの国でプレーすることになろうとも、その国で最も上のレベルのリーグでプレーすることが、私の目標です。

―最後に、このインタビュー記事を読んでくれている方に向けてのメッセージをお願いします。

自分自身を信じること、良い目標・夢を持ち続けること、そしてその目標に向かっての努力をやめないことが大切です。楽しさをもって努力すれば、敬愛する日本でとても良い経験を積むことができます。日本は本当にいい国です。外国人の私を受け入れ、尊重してくれた日本のすべての方々に感謝したいです。そして子どもたちと自分自身を信じて目標に向かって努力し続けるすべての人を尊敬します。

ペドロ選手は試合前のご飯を食べた直後でも快くインタビューを了承してくださり、この日の試合で先発メンバーとして活躍されていました。強い意志と高い目標を持つペドロ選手の、今後の活躍に期待したいです!


今回は中南米地域ご出身の外国人選手お二人に、日本に来た経緯などを詳しく聞かせてもらいました。お二人ともとても優しく、誠実さが伝わってきて、とても応援したくなるお人柄でした。ぜひ、今後とも旭川ビースターズでご活躍されて、日本と母国を野球でつなぐ架け橋のような存在になっていかれることを願っています。 また、同チームに所属する、ウガンダ人選手4人へのインタビュー記事もぜひご覧ください!

■関連リンク:
旭川ビースターズホームページ
旭川ビースターズ外国人選手に試合前突撃インタビュー! ~なぜ彼らは日本で野球をするのか?野球にかける熱い想いを聞いてきました~②

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