jica 独立行政法人 国際協力機構 jica 独立行政法人 国際協力機構

えりこの部屋|大学生が見た国際協力の現場──地域と世界をつなぐ「広報」の力とは?

2025.09.17

JICA四国センターでは、2025年8月18日(月)~29日(金)にかけて、大学生・大学院生を対象としたインターンシッププログラムを実施しました。テーマは「JICA国内事業の広報を考える」。今回の「えりこの部屋」では、インターンシッププログラムに参加した岩中真歩さん、小原彩結さんのお二人を迎え、期間中の学びや気づきについて語っていただきました。

学生インターンのお二人は、インターンシッププログラムの期間、四国センターで実施した別子銅山での地域理解プログラムや香川県坂出市で開催されたイベント「世界とつながるWEEK~みて、ふれて、たのしもう~」に参加しました。四国で学ぶJICA研修員や地域の高校生、四国センター職員との交流を通じて、JICAが行う広報の役割や「伝える力」の大切さを実感したといいます。それぞれの専門分野を活かしながら、JICAの業務に取り組んだお二人。地域と世界をつなぐ広報の可能性を、実践を通して深く考える機会となりました。 

左から小原彩結さん(岡山大学3年)、田村所長、岩中真歩さん(四国学院大学3年)


国際協力との出会い─インターンシッププログラム参加のきっかけ

田村:お二人がインターンシッププログラムに応募されたきっかけ、そして四国センターを選んだ理由について教えてください。

小原さん:大学の先輩からJICAの話を聞いたことがきっかけです。最近は国内事業にも力を入れていると知って、岡山県出身の地方出身者として「地方から国際協力をどう繋げていけるか?」という点に興味を持ち、応募しました。私は文化人類学を専攻していて、地域の儀式や文化、伝統を中心に学んでいます。今回のインターンシッププログラムでは、別子銅山の地域理解プログラムに同行することが決まっていたのも魅力的でした。

小原さん

岩中さん:大学で平和学を専攻していて、国際協力に関心を持つようになりました。四国センターのインターンシッププログラムのテーマが「JICA国内事業の広報を考える」だったので、大学で当時学んでいたジャーナリズム論を実践に活かせると思い、応募しました。

岩中さん

田村:岩中さんはジャーナリズムについて大学で勉強されていたのですね。実際にその学びは活かせましたか?

岩中さん:机上の学びだけではなく、実務を通じて“伝える力”の大切さを実感しました。インタビューでは、相手に失礼のないように話を聞く姿勢が求められますし、文章を書くときも、読み手に誤解を与えないように構成や言葉選びに細かな配慮が必要だと感じました。広報を見てくださっている人にどうすれば理解を深めてもらえるか、どんな伝え方が効果的かなど、実務の中で多くの気づきがありました。また、世界の様々な課題にも触れることができて、国際協力の現場をより深く理解する機会になりました。

田村:理論を実践に移す。すごく理想的な取り組みですね。インターンシッププログラムで学んだことは、ぜひ大学の先生や仲間の皆さんにも共有していただけると嬉しいです。

別子銅山から広がる“共創”の可能性

田村:インターンシッププログラムでは別子銅山地域理解プログラムにご同行いただきました。どんな学びがありましたか?

小原さん:ある研修員の方が「別子銅山の技術や歴史はとても有益で、母国にも活かしたい」と話していたことです。地域の資源が国際的な課題解決にも貢献できる可能性を感じました。それから、案内をしてくれた愛媛県立新居浜南高等学校の高校生ガイドの皆さんの活動が記憶に残っています。現場では、高校生と研修員が意欲的に意見交換していて、互いに学び合っている様子がとても印象的でした。地域の人にとっても、別子銅山の歴史を改めて知ることで新しい視点が得られる、すごく良いプログラムだと思いました。

別子銅山地域理解プログラムの様子

岩中さん:地域の歴史を教えてもらうだけではなく、研修員と地域の学生が互いに学び合える研修だったことが良かったと思います。研修員の方々が積極的に質問していて、私たちもすごく刺激を受けました。

田村:JICAでは最近、「共創」「革新」「環流」というキーワードを重視しています。お互いに意見を交換しながら新しい視点や価値を生み出し、日本の経験や知見を相手国に伝えるだけでなく、相手国からも現状や知見を教えてもらって、それをまた日本に環流させていく──このような流れを事業に取り込むように意識しています。

別子銅山のような国内の地域資源は、開発途上国の皆さんに知ってもらいたい価値があるリソース(資源)ですし、それを伝えたいという温かい思いを持った地域の方々がいます。四国には誇れる歴史やノウハウがたくさんあるので、ぜひ広報を通じて発信していきたいと思います。

広報活動の意義──伝える責任と工夫

田村:今回はインターンシッププログラムのテーマを「JICA国内事業における広報を考える」と設定していました。実際に活動を通して、広報の役割や重要性についてどんなことを感じましたか?

小原さん:JICAの活動は税金によって支えられているので、国民の皆さんに対して、どんな事業をしているのか、日本の技術をどう伝えているのか、その目的や成果、意義をきちんと説明する責任があると思います。だからこそ、広報はとても重要な立ち位置にあると感じました。

田村:そうですね。税金を使った仕事をしている以上、説明責任があります。資金が有効に使われていること、そしてその成果をきちんと発信することが大切です。

日本は島国で、食料やエネルギーなど多くを海外から輸入しています。身の回りでも外国人が増えていて、日本だけで完結する社会ではなくなってきています。だからこそ、海外への関心を持ってもらうこと、そして国内でもグローバル化を意識することが重要です。JICAがその“きっかけ”をつくる媒体になれたらと思っています。今回のインターンシッププログラムでは広報記事の作成にも取り組んでもらいましたが、どうでしたか?

岩中さん:記事はまだ作成途中ですが、進めていく中で“どのポイントを伝えるべきか”を見極める感覚が少しずつつかめてきたと思います。言葉ひとつで誤解を生むこともあるので、慎重に取り組みました。JICAが発信する情報には責任があると実感しました。

田村:広報は個人ではなく、組織を代表しての発信になります。誰に向けて、何を伝えるのか。相手が何を知りたがっているのかを考えた上で、わかりやすく伝えることがとても重要です。

“きっかけ”を届ける広報──国際協力をもっと身近に

田村:四国センターでは、JICAの活動をもっと多くの方に知っていただくために、広報を強化しています。地域の皆さまや関係機関に、四国センターの取り組みをより深く理解してもらい、関心を持っていただくには、どのような工夫が必要だと思いますか?

小原さん:インターンシッププログラムを通して、国際協力のきっかけは思っている以上に身近にあることを感じました。普段の生活の中ではハードルが高く感じますが、実は“海外に興味を持つ”だけでも国際協力の一歩につながっていると思います。四国センターでは公式HPに加えてFacebookやInstagramなどのSNSを使って発信しています。記事を通じて「高校生がこんなことやっている」とか「身近なところでこんなイベントがあった」と知っていただき、身近な一歩を踏み出せることを後押しする広報ができると良いと思います。

「世界とつながるWEEK~みて、ふれて、たのしもう~」アフリカ布貼り絵ワークショップの様子

岩中さん:四国センターの職員にキャリアインタビューをしたことで、国内でも様々な事業を行っていることを知りました。こうした活動をもっとわかりやすく発信できると良いと思います。たとえば、SNSでスタッフの1日を紹介したり、インタビューを継続的に掲載したり、国内事業の内容を簡潔にまとめたコンテンツを発信したりなどの工夫が考えられます。そうした情報が公式HPやSNSで見ることができるようになれば、もっと多くの人に関心を持ってもらえると思います。

田村:もっと身近に感じてもらえるように、私たちも努力していきたいと思います。“きっかけづくり”って大事ですよね。国際協力は遠いものに感じられがちですが、実はとても身近なものです。今回ご同行いただいた坂出市のイベントや、直近ではJICA海外協力隊の秋募集説明会など、いろんなイベントがあります。ぜひお友達も誘って参加してみてください。JICA海外協力隊のキャッチコピーに「人生なんてきっかけひとつ。」という言葉があります。今すぐではなくても、海外に関心を持ったことが、いつか人生の中で何かにつながるかもしれません。

国際協力の現場から得た学び

田村: インターンシッププログラムを通じて得た経験を振り返りながら、学びや気づきが今後の進路や職業選択にどのように影響するか、またキャリア形成においてどのように活かしていきたいと考えているかについて教えていただけますか?

小原さん: インターンシッププログラム期間中は、多くの業務を経験し、非常に充実した時間を過ごすことができました。研修員との交流や多文化共生に関するイベントへの参加を通じて、改めて「多文化共生とは何か」という問いに向き合うようになり、今後さらに理解を深めていきたいと感じています。

また、各国から訪れる研修員の方々との対話を通じて、日本の知られざる一面に気づくことができました。こうした経験から、日本の優れた技術や知識を世界に発信していきたいという思いが芽生え、将来のキャリアにおいてもこの経験を活かしていきたいと考えています。

岩中さん:JICAの活動の裏側を知ることができたのは非常に貴重な経験であり、国際協力の現場をより深く理解する機会となりました。秋から開講する大学の授業で「国際協力論」の授業が始まるため、今回得た知識を今後の学びに活かしていきたいと考えています。

国際協力の分野では、市民団体や政府機関など、さまざまな立場の関係者が関わっており、JICAの視点からそれらをどう捉えるかを意識しながら活動に参加しました。将来的には大学院への進学も視野に入れており、今回の経験を通して得た知識や視点を、自身のキャリア形成にも活かしていきたいと思っています。

田村: 四国には世界に誇れる素晴らしい知見が数多くあるので、今回のインターンシッププログラムの経験をぜひ繋いでいただきたいです。平和学の視点から見ると、毎日のように戦争や飢餓のニュースが日々報道される中で、国際協力の必要性を強く感じています。過去にパレスチナの案件を担当した経験から、自分が何もできないことへのもどかしさや悔しさを感じることもありました。しかし、その気持ちも周囲と共有することで、平和への関心を広げ、共感を生み、アクションに繋げていくことができると信じています。

今回、四国センターのインターンシッププログラムに真剣に取り組んでくださったことに、心から感謝しています。お二人は現在大学3年生ということで、卒業後の将来を考える時期かと思います。この経験が、今後の人生の中で何かのきっかけとなれば嬉しいです。これからもさまざまな場所で新しい発見や経験を重ねていっていただければと思います。そして、四国センターでの経験もぜひ心に留めておいてくださいね。

編集後記

今回のインターンシッププログラムでは、岩中さんと小原さんのお二人が、JICA四国センターの業務に向き合い、広報というテーマを通じて国際協力の現場を深く学んでくださいました。地域資源の価値や、多文化共生の意義、そして「伝えること」の責任と工夫──短い期間ながらも、たくさんの気づきと成長があったことが伝わってきます。

「国際協力は遠いものではなく、身近な“きっかけ”から始まる」。そんなメッセージを、学生インターンのお二人の言葉から改めて感じました。日々の発信を通じて、JICAの活動がより多くの人に届き、関心の輪が広がっていくことを願っています。お二人の今後の学びとキャリアが、今回の経験を土台にさらに豊かなものとなるよう、四国センター一同、心より応援しています。

今回お二人に作成していただいた記事は以下からご覧になれます。

【レポート】別子銅山地域理解プログラムから研修員が学んだこと | 日本国内での取り組み - JICA

【イベントレポート】 坂出市でワークショップ「アフリカ布であそぼう!」が開催されました | 日本国内での取り組み - JICA

関連リンク
本邦研修 | 事業について - JICA
別子銅山記念館
ユネスコ | 愛媛県立新居浜南高等学校
東平歴史資料館 – マイントピア別子

\SNSでシェア!/

  • X (Twitter)
  • linkedIn
一覧ページへ