歯から健康を守る。子どもたちのむし歯予防に向けて、モンゴルでの挑戦が始まりました。
2023.02.07
毎月8日は歯の日!健康な歯には毎日の歯磨きと定期的な検診が大切です。モンゴルは子どものむし歯率が高く、「健康な歯-健康な子供」を目標に掲げ、むし歯対策を行っていますが、むし歯を減らすにはまだまだ時間がかかる現状があります。JICA草の根技術協力事業で行われているモンゴルでの学校歯科検診の取り組みを見てみましょう。
2022年5月から開始された草の根技術協力事業(支援型)「二つのモデル公立学校を対象にした学校歯科検診の仕組みづくりプロジェクト」(実施団体:認定NPO法人健康都市活動支援機構)。事業開始後すぐに行われた本邦研修では、対象地域であるウランバートル市チンゲルテイ地区の行政担当官や対象校の校長先生、検診を担当する歯科医師等が実際に日本の小中学校の学校歯科検診の現場を視察し、日本が行う検診方法やノウハウを学びました。また、対象地域の子どもたちのむし歯の現状と課題について実施団体と意見交換を行い、帰国後、日本での学びを活かして、子どもたちの虫歯予防に向けての取り組みが本格的にスタートしました。
モンゴルの子どもたちのむし歯を減らすために
日本の歯科医師から技術指導を受ける様子
☆実は・・・
日本もかつては「むし歯が多い国」でした。平成11年歯科疾患実態調査(厚生労働省)を見ると、「1人平均の喪失歯数は総数で5.91本、1人平均DMF歯数※1は総数で15.67本」というデータがあります。歯科検診、フッ化物の塗布や8020運動(80歳で20本以上の歯が残ることを目指す運動)の取り組みによって年々むし歯は減少し、平成28年の段階で2人に1人が8020運動を達成しています。
※1DMF歯数・・・Decade(未治療の)、Missing(欠損している)、Filling(治療済みの)に属する歯の本数。
歯科検診を受ける生徒
モデル校2校※ではさっそく、日本が供与した歯科検診用機材を活用して、日本での研修内容に沿った検診方法・会場設営・運営方法で「学校歯科検診」が行われました。
モデル校の一校、1~12学年全63組1896名を対象に行った検診結果では、歯の健康に問題がある児童・生徒が小学校では9割、中学・高校では8割と、深刻な歯の健康問題が明らかになりました。
この結果をもとに、学校・地域・家庭でむし歯予防対策に取り組むべく、学校長、教員、保護者、生徒代表、区役所員、地区保健センター担当歯科医師で構成する「学校歯科保健委員会」を発足しました。委員会では、クラスでの歯磨き研修や検診データの集計と分析に基づく勉強会が開催され、むし歯予防に関する議論も活発に行われています。対象地区の行政も積極的な取り組みを進めており、モデル校両校に洗面台を新たに24台設置、保健センターで行う歯科検診の時間帯の拡大や歯科医師の増員が行われました。
むし歯予防の啓発活動も積極的に行われています。モデル校の取り組みを紹介するビデオを制作したり、生徒や教員を対象に「健康な歯・健康な生活」をテーマに、絵画、作文、エッセイ、新聞づくり、ポスター、TikTokのコンテストを開催しました。
※同地区にある二つの公立学校。一つは都心にあり、もう一つは低所得者が多く生活環境が悪い郊外の伝統家屋ゲル地区の学校。
新たに設置した洗面台で歯磨きする生徒
絵画コンテストの作品
事業対象地域には、生活水準の低い家庭も多く、むし歯予防の意識や知識が希薄でしたが、プロジェクトの意義が人々に伝わり大きな挑戦の第一歩を歩み始めました。対象校の子どもたちも歯科検診を嫌がることなく、積極的に歯磨きにも取り組んでいます。歯科検診だけでなく、家庭での歯磨き習慣や甘いものを摂りすぎない食生活の改善等、保護者の理解と協力の促進も大切です。本事業は、これからも現地関係者と密なコミュニケーションを図りながら取り組んでいきます。モデル校での取り組みが、将来的に広くモンゴル国内に波及し、子どもたちの口腔からの健康づくりに貢献することを期待しています!活動の詳細については、実施団体ホームページ内の記事を是非ご覧ください。
報告者:前田真鈴(市民参加協力第二課 インターン)
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