「伝える、学ぶ“水と衛生の大切さ”」(草の根技術協力・日本研修報告)
2023.08.14
世界には、トイレがないため野外排泄をするか、屋根や壁もなく足場の不安定な穴掘り式トイレを使わざるを得ない地域があります。そんな状況を改善するためにNPO法人日本ハビタット協会と現地団体SAWA YUME KENYAが協力して2019年からケニア西部のホーマベイ郡にて、草の根技術協力事業「スマイルトイレプロジェクト-持続可能な衛⽣環境改善による笑顔あふれるまちづくり-」を実施しています。今回は7月3日から16日にかけてSAWA YUME KENYAの関係者を招いて実施した日本研修の様子を、現地でプロジェクトを主導する統括員よりご報告します。(報告:Javan Okello /SAWA YUME KENYA 現地プロジェクト統括員)
7月3日~16日にかけて日本に滞在し、早稲田大学をはじめ、椙山女学園、大阪公立大学、東京女子大学で講演イベントを行いました。ケニアの衛生状況を日本の方々に知っていただくとともに、私達が現在JICA草の根技術協力事業として実施している衛生環境改善事業「スマイルトイレプロジェクト」を知っていただく機会となりました。私の話にみなさん真摯に耳を傾けてくださり、とても嬉しかったです。また、専門知識をお持ちの大学教授をはじめ学生のみなさんとのさまざまな意見交換をとおして、私達の事業の良さを見直す機会ともなりました。余談になりますが、日本の大学の講演では学生達は後ろの方の席に座ろうとしますが、ケニアでは教授に講義内容についてすぐに質問できるよう前の方に座ろうします。ですので、後ろの席に座ったら質問ができないのではと、とても不思議な気持ちになりました。
大学だけでなく、逗子や東京で開催された市民向けの講演イベントにも参加でき、幅広い年齢層やさまざまなバックグランドを持った方々との交流も貴重な経験になりました。高齢の方が話してくださった昔の日本のトイレや水の状況は、今の私達のプロジェクトで建設している穴掘り式トイレに似ていて、とても参考になりました。
(東京女子大学での講演イベントの様子)
ケニアの農村地域のトイレ普及率は50~60%程で、トイレがあっても屋根や壁がなかったり床の木材が朽ちていたりして実際には使われていないケースもあります。日本では官民連携による衛生システムの土台がしっかりと出来上がっていて、全ての家庭だけでなく公衆においても高品質なトイレが備わっています。水洗ですし、ウォシュレットや温水、温かい便座などさまざまな機能が付いていて、しかも自動的に流れたり音楽までかかるなんて驚きました。ケニアが今後発展していくためには、日本のようなしっかりとした法律や制度、システムがとても必要だと感じました。また、社会全体で衛生改善を行っていくためには、政府による投資や取り組みはもちろんですが、ケニア市民の行動変容を促す教育やきっかけづくりが重要であるということがあらためて分かりました。
岐阜県郡上市では、湧き水といった自然資源を活かした水供給システムも視察しましたが、貴重な水資源を守りつつそれを適切に農業などに活用する手法や小規模発電はとても勉強になりました。環境に配慮しながら自給自足や持続可能なコミュニティづくりを見ることができました。
(岐阜県郡上市八幡町本町にて)
(石徹白地区における小水力発電を視察)
さまざまな地域に訪問しましたが、日本では高度な技術やシステムが進んでいるだけでなく古い文化もしっかりと残っていると感じました。高層ビルが整然と立っている街並みや時間通りに運航する鉄道や新幹線があるかと思えば、古い建物や文化も残っていたりする日本の社会が印象に残りました。鎌倉に行く機会もありましたが、蓮の花が咲いているお寺の庭園はとても綺麗で、僧侶の方がとても丁寧に仏像や仏教について説明して下さり、多文化や他の宗教に触れる貴重な機会になりました。畳の上で背の低いテーブルでの和食を楽しむこともできました。
日本の質の高い技術やシステムに触れるだけでなく、日本のみなさんとの交流を通して日本のすばらしい文化を学べたことは、私達ケニアの日常や文化、社会を見直す機会ともなりました。今回学んだことを今後の活動に活かしていくとともに、日本とケニアとの協働がさらに促進されることを願っています。日本滞在中で出会った方々に心から感謝を申し上げます。
(鎌倉にて)
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