山梨・静岡・長野視察 ~観光で町興しを~

2023.09.21

9月3日より開始した課題別研修「観光マーケティング・プロモーション −ニューノーマルに向けて-」では、日本各地の観光地での視察が行われています。その一環として、12日に山梨・静岡・長野県を訪れ、県庁や考古博物館、オートキャンプ場を見学しました。

町興しのための観光とは?

地域の資源を活かして地域振興を図る観光をテーマに実施された今回の視察。一行はまず、山梨県庁にて、観光文化・スポーツ部職員の方から、県の観光振興について伺いました。
コロナ禍に観光客が大幅に減少した一方で、観光業における人手不足や労働条件の課題を抱えている山梨県は、観光推進策を練り、観光者数増加という量の観点以上に、観光客の満足度という観光の質の引き上げに注力した戦略を立てているそうです。研修員は、熱心にメモを取りながら傾聴し、活発に質問していました。

熱心に説明を聞く研修員たち(山梨県庁にて)

マラウイからの研修員イヴォンヌさんに感想を聞くと「地域資源を多様なニーズに合わせて活用したり、観光の担い手である県民のおもてなし精神を促したりする取り組みを進めていることが素晴らしいと思った。私の国は“Warm Heart of Africa”として知られており、人々はフレンドリーで観光客を歓迎している。観光の促進と活性化には、山梨県のような『おもてなし』が重要だと思う」と話してくれました。

縄文の風を感じられる場所

午後は二手に分かれ、それぞれ長野県と静岡県へ。1つ目のグループ、エジプト、モンゴル、マラウイ、タンザニア、ドミニカ共和国、サモアの研修員たちの訪問先は、長野県の茅野市尖石縄文考古館でした。全国で初めて縄文の環状集落一帯が発掘された地に位置し、それに関する展示を行っている博物館です。まずは学芸員の方の案内のもと、国宝「縄文のビーナス」「仮面の女神」を始めとする館内の展示を見て回りました。研修員からは多くの質問が上がり、「日本の歴史がこんなに長いとは知らなかった」という声も上がるなど、日本の新たな一面も知れたようでした。
その後、縄文の暮らしを屋外に再現したエリアを見学しました。竪穴住居や栗の木なども忠実に再現されたこのエリアでは、澄んだ空気と穏やかな時間が流れており、研修員たちは歴史と自然を肌で感じられるよう施された工夫に感銘を受けた様子でした。また、日本の博物館ではお馴染みの自由に記念スタンプが押せるブースも、目新しかったようで好評でした。

国宝「仮面の女神」の説明を受ける研修員

竪穴住居の中は、どこか神秘的に感じたそう。

「観光×林業」~持続可能な経営のための工夫~

もう1つのグループは静岡県に移動しました。ヨルダン、マダガスカル、ザンビア、エクアドル、エチオピア、パレスチナからの研修員6人は、静岡県の大人気な観光スポット「ふもとっぱら」オートキャンプ場を訪れました。
「ふもとっぱら」の経営者、竹川さんは、江戸時代から続く専業林家を継ぎ、林業振興と観光レクリエーションとの相乗効果による持続可能な経営を模索してきました。研修員らは、キャンプ場内のショップ、水場、宿泊棟などの施設を見学しながら、このような経営方式に対して興味津々のようでした。当該キャンプ場はどのように人気を得たのかについて、長渕剛のライブコンサートやアニメ「ゆるキャン」の話から、日常運営面の工夫点まで伺いました。観光客が心地よくキャンプを楽しめるように、水回りをきれいに保ったり、入場人数の制限をしたりするなど、スタッフたちは隅々まで配慮しているのです。観光マーケティングにあたって、知名度を上げる戦略は大事である一方で、口コミをPRに活用するための日々の努力の重要性も伝わってきました。

キャンプ場の経営利益は林業の持続可能性の向上に使われていると伺いました

キャンプ場の雰囲気を感じながら、この安らかさを保つための工夫を伺いました

自国の魅力に目を向けて

それぞれの地域がもっている、様々な資源や魅力。観光客の多様なニーズに合わせてそれらを活かした観光は、観光客にとってはもちろん、地域にとっても価値の大きいものです。今回の視察では、そこに重きを置いた観光を実際に目にしてきました。観光客と観光行政官の両方の視点を併せ持つ研修員たち。日本の魅力を味わいつつも、常に自分の故郷にも目を向けています。
研修期間は今月末までとなっており、残りの期間には更なる地方視察に加え、学びを実例に活かすためのグループディスカッションなども行います。様々な地の様々な形の「観光」を見てきた彼らは、吸収してきた沢山のことを、どのように自国の観光マーケティング・プロモーションに繋げていくのでしょうか。熱心に、朗らかに研修に臨む13名の研修員たちにご期待ください!

JICA東京インターン ウ ジンユアン・金井 綾花

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