研修員に聴く~日本で出合い、出会ったもの~(前編)

2023.09.27

各国からの研修員が日本で学んだこととは? 彼らの目に、日本やJICA研修はどう映っているのでしょうか。JICA東京インターン生がJICA研修員へのインタビューを通じて聞いた、研修員の生の声をお届けします。

日本を肌で感じて

インタビューに応じてくださった7名の研修員は、国籍も参加するコースも様々。日本の印象を尋ねると、時間を守る風潮や秩序がある点、他者に対する丁寧さ・親切さが多く挙がりました。
JICAの課題別研修「スポーツを通じた障がい者の社会参加の促進」に参加し、前半プログラム期間、東京センターに滞在していたキルギスからの研修員BEKESHEV Dastanさんは、日本のユニークな文化に惹かれていると言います。例えば、当たり前のように飲食店が清潔なのは、客が快適に過ごせるようにという心遣いから来るものであり、この相手側目線に立った丁寧な姿勢は世界中が学ぶべきだと感じたそうです。また、グローバル化の中でも古くからの伝統文化を守ろうとしている点も魅力的だと話してくれました。
そんなBekeshevさんは、今回が2回目の来日。ただ高揚感を胸に来日した前回とは異なり、今回は、JICA研修に参加し、先進国の日本も経済・環境面など様々な課題を抱えているという冷静な視点も持ち、より深く学び、考える機会になったそうです。各国が直面する課題や危機の中には、状況や程度は異なれど、グローバル化しているものが多くあると感じます。

BEKESHEV Dastanさん
(課題別研修「スポーツを通じた障がい者の社会参加の促進」、JICA東北所管)

尊厳と尊重を考える

「日本人はみんな忙しいですよね」。日本に対する印象を聞かれたとき、南スーダンから来たWunさんはそう答えました。Wunさんは南スーダンのパラリンピック運営委員会会長。今回の来日研修を通し、「人間とは何か」に対する理解が深まったと言います。「私の観察によりますと、日本人はみんな常に何らかの目標に向かっており、生活も仕事も充実しているようです。その忙しさがあるからこそ、人として活力を持って生きていると実感できるのでしょうね」。
またWunさんは、今回の研修の中で、障がいのある方による講議を聞き、障がいがあっても尊厳を持って力強く生きている姿に大変感銘を受けたと話してくれました。また、地方の学校を訪問した際に目にした、教師が学生たちの選択の自由を尊重していた場面も忘れられない光景だったそうです。
南アフリカ人のNgcoboさんも、日本人の他者を尊重する姿勢が印象的だったと話してくれました。保健行政官のNgcoboさんは、課題別研修「ユニバーサルヘルスカバレッジ達成のための医療保障制度強化」に参加するため初来日しました。日本に来る前は、日本人はやや冷たい民族だと思っていたそうですが、来日後「日本人は実は親切で、他人のパーソナルスペースを尊重しているのだ」と認識を改めたと言います。「自分のやりたいことに対し横から口を出す人はいない」と感じ、安心して自分らしくいられたそうです。

WUN Peter Makouth Malualさん
(課題別研修「スポーツを通じた障がい者の社会参加の促進」、JICA東北所管)

NGCOBO Nomawethuさん
(課題別研修「ユニバーサルヘルスカバレッジ達成のための医療保障制度強化」、JICA東京所管)

多様な視点に触れる

今回お話を伺った7名が参加する研修はJICAの「課題別研修」に括られるものです。JICAの短期研修には国別研修と課題別研修の2種類があり、国別研修が1つの国の特定の課題解決のために実施されるのに対し、課題別研修は1つのテーマについて多様な国から多様な背景を持つ人たちが集まり実施されます。この課題別研修ならではの多様性から、どのような価値が生まれるのでしょうか。
チリの国立研究所から来たVielvaさんが自身の考えを話してくれました。今までプロジェクトを立案する際、自分の組織の視点が起点になることがほとんどでしたが、JICA課題別研修を通じて、異なる立場や背景を持つ人々から刺激をもらったそうです。コースには違う言語圏の研修員もいましたが、意外にも自分の考えと彼らの発言と共鳴する部分が多く、もっと交流したいと思ったと言います。今回の研修で得られた複眼的な視点を今後の事業に生かしたい、そしてこれからも多様なアクターとの連携を積極的に図っていきたいと、Vielvaさんは語ってくれました。
また、JICA東京での研修では、研修員らは中央省庁の専門家や民間の関係者による講義に参加したり、コース内容によって地方に視察したりもします。東京に集まった知識と経験だけではなく、地方で育まれた知見に触れる機会も多々あります。

VIELVA WULFF Maria Ignaciaさん
(課題別研修「スポーツを通じた障がい者の社会参加の促進」、JICA東北所管)

【後編に続きます】


JICA東京インターン ウ ジンユアン・金井 綾花

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