「教育の国際デー」に改めて考える、教育の大切さ ~Part4

#4 質の高い教育をみんなに
SDGs

2024.01.25

 1月24日は国連で制定された「教育の国際デー」です。JICA東京で行っている教育分野の取組のご紹介を通じて、世界の平和と開発のために教育が果たす役割や、すべての人にとっての教育の大切さについて、改めて考える機会になればと思います。

世界で注目される日本式教育モデル

 日本ではおなじみの日直や掃除などの特別活動等、日本式の教育モデルが、世界で注目されていることをご存知でしょうか。2017 年の 経済協力開発機構(OECD)教育政策レビューでは、知・徳・体をバランスよく育むことを通じた児童生徒の全人格的な完成を目指す全人的な教育の提供が日本の教育の成功要因として指摘されています。教科等の学びを通して得られる認知能力だけではなく、特別活動等を通して育まれる自己肯定感、やり抜く力、協調性やリーダーシップ等の非認知能力は、将来にわたって子どもたちが自らの才能や能力を開花させていくために重要な役割を果たすことが明らかになっています。そのため、日本の教育の強みを生かしながら、これらの非認知能力も含めた「学び」の改善を視野に入れた協力を JICAは進めています。
 これまでエジプトにおいて、特別活動を中心とした日本式教育の導入支援を行っています。また、マレーシア等でも同様の取り組みが始まっており、全人的教育に関心を持つ国が徐々に増えてきています。

6か国の教育行政官が日本の小・中学校を訪問し、特別活動などの取り組みを学ぶ

 こうした背景のもと、2023年9月27日から10月14日まで、6か国(マレーシア、モンゴル、パレスチナ、エジプト、南アフリカ共和国、マダガスカル)の教育行政官等6名が来日し、特別活動などの日本式教育に関する研修「全人的教育:日本の実践的なアプローチ」が行われました。
 研修では、日本の教育現場(幼稚園~中学校)で実践されている全人的教育の取り組みや授業(特別活動を含む)を観察・分析し、自国の課題解決への活用方法を検討しました。
 研修の前半に多くの時間を過ごした文京学院大学女子中学校高等学校では、朝礼やホームルームはじめ、様々な科目の授業や茶道・華道を通じた礼法の実習、給食、部活動などの視察、生徒と共に掃除も体験。また、探求や食育などの特別授業、キャリア教育のワークショップも行われました。これらのプログラムを通して、研修員は、日本の全人的教育が、様々な取り組みを通して行われていることや、教科と教科外の活動が密接に関係しあいながら効果を高めあっていることを理解しました。

総合的な学習の時間で自国について発表するマレーシア研修員

朝の清掃活動を体験

カリキュラム開発ワークショップで真剣に議論する研修員

家庭科で生徒さんと一緒に作ったおにぎり

 研修の後半には静岡県沼津市の原町幼稚園(幼稚園型認定こども園)、原町保育園(保育所型認定こども園)、サンカフェはらまち(企業主導型保育施設)を訪問し、全人的教育を理解するうえで重要な「遊びを通した学び」や「子どもの総合的な成長」の実践を視察しました。原町幼稚園では、運動会の予行練習(跳び箱)が行われ、教員の適切なサポートや安全管理のもと、得意な園児も苦手な園児も一生懸命に取り組む様子が見られました。苦手な園児を全員で応援したり、繰り返し挑戦する様子、得意な園児が段を加えて挑戦する様子に研修員も感心し、運動を通して思いやりや粘り強さなど、総合的な成長が促されていることが理解できました。各教室も回り、工作などで道具を貸し合いながら真剣に取り組む園児の様子からも学びを得たようです。

 研修最終日には、研修で学んだ内容をどのように自国の課題に活用するかをアクションプランにまとめ、各国の研修員が発表しました。南アフリカのVeenaさんは、自国の課題について①言葉の壁が理解力低下を招いていること②卒業後の生活に対する準備が不十分なことを挙げました。これらへの取り組みとして、①に対しては、遊びを通して読書への愛情を育むこと、英語クラブなど、南アフリカの学校生活にクラブ活動を取り入れることなどを計画しました。また②に対しては、学びや交流を通してコミュニケーション力や適応力を身に着け、卒業後の人生において忍耐強く生き抜く力を身に着けること、現在のカリキュラムで教えられている知識、技能、価値観の関連性を強化し、変化する世界で活躍できる学習者の育成を目指すことにしました。
 その他の研修員も研修での学びをしっかりと消化し、自国の課題解決のための取り組みに役立てていました。修了式では全員が研修期間中の努力をたたえ合い、1か月半後のフォローアップセッションでの再会を楽しみに、帰路につきました。

オンラインフォローアップでの再会

 2023年11月28日には、フォローアップの一環として、日本での研修に参加した研修員がオンラインで集まり、帰国後の活動報告を行いました。
 帰国後早々に上司や関係機関などに研修で得た学びや自身の活動計画について説明するなど、具体的な行動に移している様子が各国から報告されました。各国の研修員はオンライン上での再会を喜び合い、予定されていた時間はあっという間に過ぎました。
 紛争や気候変動、Covid-19など感染症の影響を受け、質の高い教育の提供は開発途上国で大きな課題となっており、研修員は今まで以上に様々な困難に立ち向かっていますが、日本での学びを糧に、自国の教育改善に貢献し続けることを願っています。また、今後もJICA研修の参加者が日本の教育経験や特長を学ぶだけでなく、より多様な国々の研修員と意見を交わし、「共創」し合うことで理解を深め、研修事業を通じて世界の子どもたちの健やかな育ちや学びが促進されることを期待します。

オンラインフォローアップで再会を喜び合う研修員

◆関連リンク
全人教育推進プロジェクト | ODA見える化サイト (jica.go.jp)
特別活動を中心とした日本式教育モデル発展・普及プロジェクト | ODA見える化サイト (jica.go.jp)
日本の全人的な教育とは – 世界の教育のいま – 学びをとめるな (padeco.education)  

◆参考リンク
教育がつくる 人の未来 社会の未来 | JICA Magazine | 広報誌 JICAマガジン

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