群馬県視察~「不易流行」と中南米研修員~(青年研修 中小企業振興A)

2024.02.02

中南米11か国の若手行政官ら15名が群馬県を訪れ、群馬県における中小企業振興について学びました。

世界に通じる「不易流行」

 1月15日(月)から始まった青年研修「中小企業振興A」では、中南米の若手行政官らが、日本の地方における中小企業振興に関する基礎的な技術や制度に関する知識の習得を目指し、静岡県と群馬県を視察しました。2022年度は遠隔研修での実施であり、久々の来日研修となりました。
 群馬県では、高崎市における中小企業支援についてJICA高崎分室の講義を受講したほか、県内各地を視察し講義を受講する中で、伝統を守るための変化・革新等について学びました。
 「今井だるま店NAYA」では、伝統的なだるまづくりを続ける中で、かつては職人のみが行っていただるまの絵付けを体験プログラムとして取り入れたり、新たにオリジナルの創作だるまの販売を行ったりしていました。創作だるまの中には、伝統的な色にこだわらず紫、ピンク、金、銀といった色とりどりの物や、干支のデザインの物など、これまでのイメージとは少し違うだるまもありました。今井代表からは、だるまの制作工程やだるまが持つ意味のほか、国や県の助成の活用や海外でのブランディング方法等についても説明頂きました。研修員達の国にも伝統工芸・技術があるため、伝統を守り変革を続ける姿から、自国の活動に活かせる色々なヒントを得ていました。
 「たくみの里」では、昔からその土地で生活していた人々と協力して日本の原風景を保存・維持しながら、人気の観光地になっていった歴史や取り組みを学びました。中南米には昔ながらの伝統を守る先住民族と共存している国が今も多くあります。そういった国の研修員達にとっては、非常に学び多いものになっていたようです。ボリビアの研修員からは「地域住民や温泉等の資源を活かしたテーマパークを作り上げた「たくみの里」視察は大変参考になった。自治体による企業支援や官民学の連携も興味深かった。」という声が寄せられました。
 「今回の青年研修は“不易流行”もテーマの一つにしている」と語るのは、本研修を担当頂いた株式会社 自然塾寺子屋の代表取締役の矢島亮一氏。視察先の方々の多くが、難しい局面を迎える度に、様々な工夫を凝らし困難を乗り越えていったといいます。「変わらないために変わり続ける」という「不易流行」に関連した話に、研修員達は深く頷きながら講師の話に耳を傾けていました。変化が激しい世の中ではありますが、「不易流行」という考えは世界に通じる大切な考え方の一つではないでしょうか。
 本研修での学びが、研修に参加された研修員の皆さんの今後の活動に活かされ、“良い変化”に繋がることを期待しています。

だるま絵付け体験(今井だるま店NAYA)

そば打ち体験(たくみの里)

農業の可能性を再認識

 群馬県視察の最終日には、JA嬬恋村と合同会社あめつちのうたの講義を聴講しました。JA嬬恋村では、日本一の出荷量を誇るキャベツ生産の話をお伺いし、JAという組織についてもお話頂きました。農業協同組合がない国の研修員達からは「組合をつくるメリットは?」「各部門の業務は?」と具体的な質問が飛び交いました。視察終わりには、「農業協同組合の良さを理解する事ができた。自分の国にも農業協同組合を作りたい」と語る研修員も複数名いました。
 合同会社あめつちのうたの講義では、「自然と共にある農業」を目指し、独自で開発した土壌活力剤を用いた農法について学びました。「付加価値のある作物の栽培及び、商品開発が重要」という話に深く頷く研修員も多くおり、講師と帰国後もコンタクトを取る約束をする研修員も複数名いました。
 研修に参加した研修員の国では、主要産業が農業である国が多い事もあり、農業の可能性を再認識し、自国で活用できる情報を得られる良い機会になっていました。
 研修最終日のアクションプラン(帰国後に今回の研修をどう自分の業務に活かすか)の発表には、今回の視察を参考にした計画が数多くありました。研修員は今回の視察旅行での学びをそれぞれの国に持ち帰り、彼らの国での中小企業振興や地域振興に活かされていくことでしょう。

質疑応答の様子(JICA嬬恋村)

講義の様子(合同会社あめつちのうた)

閉講式の様子

JICA青年研修とは?

 JICAの青年研修事業の歴史は古く、前身となる青年招へい事業は、1984年から開始されました。青年招へい事業は、将来の国造りを担う開発途上国の青年を日本に招へいし、日本理解や各専門分野の講義を通じて知見を深めるとともに、同世代の青年との交流を通じて相互理解を深めることを目的に実施していました。
 2007年度から事業内容を改編し、現在は、アジア、アフリカ、中南米、大洋州、中東などの開発途上国の青年層(20才から35才)を対象に、それぞれの国で必要とされている分野における日本の経験、技術を理解する基礎的な研修を行い、将来の国づくりを担う人材の育成に協力しています。
 青年研修を含むJICA研修事業を通して深まった人と人との信頼の絆は、研修終了後も続いており、良きパートナーとして関係を築いています。

◆関連リンク JICA青年研修


集合写真(JICA高崎分室講義あと)

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