インターンシップ1日目の出会い~協力隊経験を経て、先生は今!?~

2024.02.28

こんにちは。2024年からJICA東京でインターンシップ活動に取り組むことになった岡本です。記念すべき第一日目のお仕事はシンポジウム運営のお手伝い。
JICA海外協力隊経験がある先生や、これから協力隊として途上国にて活動したいと考えている先生や学生がJICA東京に大集合する“全国OV教員・教育研究シンポジウム”というイベントです。
すべての人が「初めまして」、緊張で物理的に震えながらも、メモ帳一冊埋め尽くすほどの学びがある一日!
その中でも特に皆さんにお伝えしたいと思った、現在静岡県の小学校教員である鴻池先生のお話をご紹介させてください。

相手の置かれた立場や背景を想像する!

120名が集まったシンポジウムにて、ご自身の協力隊経験と、それを経て今どのような教育活動をしているかを語ってくださったのは鴻池俊輔さん。

鴻池さんは協力隊として、10年前にスリランカの学校で活動していました。当時のスリランカは、熾烈な受験戦争の影響で「知識詰込み型」の教育がなされていたそうです。そこで鴻池さんは現地の先生方と生徒主体の授業づくりを目指し、新しい指導法を追求し、チャレンジしていました。
しかし、ある日校長先生に呼び出され複雑な顔でこんな言葉をかけられました、「私の学校でこれ以上新しいことをしないでほしい」と。
当時の鴻池さんは絶句し、「前のめりに学ぶ生徒や他の先生たちのためにも、努力を惜しむべきではない」と言い返したそうです。
その後はお互いに言い合いとなってしまいました。

この時、口論の最後に校長先生がおっしゃった言葉は
「君や先生が理解してくれなくても、神様が私のことを理解してくれるからいい。」
涙を流しながらの一言だったそうです。

皆さんはなぜ校長先生がこの言葉を発したのだと思いますか?
そして何が衝突の原因だったのでしょうか?
ぜひ記事を読む手を一旦止めて考えてみてください。

どんな考えが浮かびましたか?

この時、校長先生は突然大きく変わっていく学校や先生に対し、1人だけ取り残され居場所を失ったような感覚に襲われていたのではないだろうか。校長先生の涙を見て、鴻池さんはそう考えました。
そして、良かれと思って自分の価値観を押し付け、活動を進めようとしたことを大変後悔しました。
スリランカに必要なことを考え改善に努めることは重要です。しかし、それ以前にその行動が生徒や他の先生、そして校長先生の価値観や立場を考えられているのか熟考する必要があります。
鴻池さんにとって、「相手の置かれた立場や背景を想像すること」の大切さを学ぶ経験だったといいます。

これは、海外だから起きたことではないよな。
私自身日本でも、良かれと思って、同じようなことをやっていたよな。
そう思いました。

2年前の冬、学童クラブのスタッフをしていたことがあります。クラブの小学生たちがお互いに名前が分かるようにと名札を作り、女の子は“〇〇ちゃん”男の子は“〇〇くん”と記入しました。するとある子が悲しそうな顔をして「なぜ自分は“〇〇ちゃん”じゃないといけないのか」と訴えてきました。
「くん・ちゃん」と書いた方がお互いを呼びやすいんじゃないかな、仲良くなりやすくなるんじゃないかな、そう思って私は書いたのですが……。見た目で性別を判断し、そしてそもそも男子はくんづけ、女子はちゃんづけされるのがよい、と思い込んでいた自分の浅はかさを気づかされました。
そう、私はこの時、鴻池さんと同じように良かれと思って、一生懸命に自分の価値観を押してつけていたのでした。

鴻池さんは後日校長先生のもとに謝罪に行ったそうです。学校のためと思っていたこと、しかしそれが独りよがりだったと分かったことを詫び、自分が改めなければならないことを伝えました。その後、校長先生と再び関係を構築でき、最後までその学校を中心に活動を続けることができたそうです。

自分の行動に自信を持ち、挑戦を続ける!

大学卒業後、スリランカで協力隊活動を経て帰国した鴻池さんは、静岡で教員採用試験を受け、現在は浜松市の小学校の先生。ご自身の経験を活かし、スリランカと日本の学校交流や異文化理解を促進する教育活動に取り組んでいます。新たなチャレンジを進めるにあたり、鴻池さんが自身を鼓舞する言葉が「やらない言い訳を考えない」。

国際理解教育を広げる活動を通して協力隊での学びを活かす一方で、鴻池さんは悩み続ける毎日だと心情を吐露してくれました。
“本当にこのやり方であっているのか、また独りよがりになっていないか”
“自分だけが働きかけても意味がないのではないか”

こんな風に悩み始めると深みにはまり、自分の行動に自信が持てなくなり、行動することをやめてしまう。

……そんな負のスパイラルを断ち切るために、不安が胸にこみあげてきたときは
「やらない言い訳を考えない」
そう自分に言い聞かせるそうです。

この言葉は、私の胸にズシンと刺さりました。

私は大学でジェンダー格差について学んでおり、これはとても大事なことだと考えています。なので、友人にも伝えよう・わかってもらおうと試みたことがあります。前身の一歩目は、日本における男女格差はいまだ激しい、この事実を“認めること”。そう考え、まずは自身の学びを回りに共有しようと思ったのです。
しかし、一生懸命現状を説明する私に返ってきた言葉は「意識高い系狙ってるの?(笑)」という嘲笑でした。
それ以降、授業を除き人前でジェンダー論を語ることを避けるようになっていました。意見を求められても、なんとなく同意して自分の考えを濁してしまうのです。

そんな私にとって鴻池さんの言葉に、目が覚めた思いがしました。新しいチャレンジはワクワクする一方で、失敗の恐れが芽生えます。また自分の意見を主張すると、反発が生じるかもしれません。何もせず、大衆に流されている方が本当は楽です。
しかし、鴻池さんは何もしていない自分に対してモヤモヤを抱え、自分だからこそできることを探しました。今回のシンポジウムでの発表も、自身の経験を広めるという国際協力です。悩みながら行動することをひたすら繰り返し、「挑戦を続け、伝えられる教師になる」という目標を達成したいとおっしゃっていました。

鴻池さんからは、この日JICA東京、オンラインで集まった100名近い仲間にこんなエールもありました。
「国際教育を促進しようと活動する中で、同じ志を持った仲間とたくさん出会いました。そして、誰でも必ずそんな仲間と出会うことができると思います。一緒に悩み、一緒に進んでいきましょう」

私自身、運よくJICA東京のインターンシップに合格しました。実は今、私はものすごいチャンスを与えられたのではないでしょうか?同じインターンシップの学生や、JICAの職員の方、様々な方と業務で関わり始めました。JICA東京で見つけた仲間とたくさん悩みながら、新しいことに挑戦し、私だからこその意見や考えを発信していきたいです。

そんな覚悟を決めた素敵なシンポジウムでした!

鴻池さんが悩みを打ち明けた時、参加者の方からは共感の声があがっていました。

報告:岡本有加(JICA東京・市民参加協力第一課インターン)

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