インターンが紹介!世界に向き合う一日~教師海外研修 東京都報告会~

2024.03.26

 この夏、東京からザンビア・パラグアイへ旅立った6名の先生たち。派遣前・派遣後の国内研修などを含めた1年間の研修を通して何を学び、どんな授業実践を行ったのか!?ワークショップではどんな社会課題について考えたのか!?充実した報告会の様子を、大学生インターンの2人がお伝えします!

ザンビア・パラグアイから帰国しどんな授業を?

 2月25日(日)、JICA東京センターにて教師海外研修(注)の参加教員による報告会と、社会課題を考えるワークショップが開催されました。
 まずはパラグアイを訪れた4名と、ザンビアを訪れた2名の先生方による発表。どの先生も創意工夫を凝らした授業実践を行っており、研修・授業づくりを通しての成果や難しさを語ってくださいました。児童生徒たちは、自分の学校の先生が実際に体験したことを直接聞くことができたため、その説得力は大きかったそうです。その一方で、やはり日本に住んでいると実感が湧きにくく「子どもたちに途上国の問題をジブンゴト化させるのは難しかった」という声もありました。
 今回報告いただいた先生方は、地域・校種・教科をまたいで「チームでの授業づくり」を実践してきました。同じ研修に参加した他県の先生方とともに、それぞれの担当教科や学校規模も異なる中で授業づくりをしていると、自分にはない新たな視点や色々なアイディアが出てきたそうです。あるチームは、オンラインで東京・群馬・長野の小中高を繋いでの交流を行いました。普段関わることのない、異なる都県の小中高生が一緒になって、ザンビアとパラグアイについてのクイズに挑戦。本格的な授業実践に入る前に、ザンビア・パラグアイに興味を持ってもらうきっかけとして、児童生徒の記憶に残る導入になったことと思います。
 また、ある先生は、授業をする前と後で「君は何のために学ぶのか?」という質問を生徒たちに投げかけたそうです。この問いに対し、授業前は「大学に行くため」「将来の仕事のため」という回答をしていた生徒たち。授業の後は「学んだ知識を自分のものにするだけでなく、周りの人にも伝えていくため」「学べる環境にいることが当たり前ではなく幸せなことだと思わされた」などと、視点や考え方が変わったとのことです。
 多くの先生方に共通して、「海外研修を活かした授業を単発的なものとして終わらせるのではなく、他教科の先生方ともコラボしながら来年度以降もつなげていけるように取り組んでいきたい」といった言葉がありました。ぜひ、児童生徒・先生がともにわくわくするような授業づくりを続けていってほしいですね。

(注)教師海外研修とは、日本の先生方を開発途上国にお連れし、途上国の現状や国際協力の現場、途上国と日本との関係に対する理解を深め、そこでの学びをご自身の授業に還元し、地域に波及していただく研修です。

(執筆担当:小田島)

音楽学校での様子を発表する大平先生

発表を聞いた参加者から先生方へのメッセージもたくさん!

先生も参加者も一緒に!世界の問題を考えるワークショップ

〇難民問題をジブンゴトとして捉えるワークショップ
 「『移民』と『難民』の違いは何でしょうか?明確な違いは、『難民』は自国に戻ると殺されてしまうということです」。はじめに聞いたこの言葉が印象的でした。ここでは、国連UNHCR協会と学生団体SOARのご協力で「いのちの持ち物けんさ」というワークショップを行いました。このワークショップは難民問題を身近に感じ、自分に何ができるのか考えることを目的としています。
 まず、自分のアイデンティティを構成しているものを「替わりのないもの」「替わりのあるもの」「どちらでもないもの」に分類して書き出し、自分とは誰であるのかを考えました。その後、もしそれらをすべて失ってしまったら?と想像してみます。自分自身を見つめなおし、かけがえのないものを失った難民の人たちに何ができるのかを考え、参加者同士で話し合いました。もしも国籍を失ったら?住む場所を失ったら?「どうやって生きていけばいいか想像もできない」「日本に住んでいると、難民問題をどこか他人事のように捉えてしまっていた」という声がありました。
 難民になるとはどういうことなのか、自分たちには何ができるのか…今ある生活が当たり前ではないと思わされるワークショップでした。
(執筆担当:小田島)

「いのちの持ち物けんさ」ワークショップの様子

〇バングラデシュでの児童労働(家事使用人)を知り、考えるワークショップ
 「外部の人の目が触れない家の中で、人知れず権利を奪われ、家事使用人として1日中働く少女の存在を皆さんは知っていますか?」この問いに多くの参加者は、知らなかったと答えました。バングラデシュには家事使用人として働く少女が数十万人いるとされています。その背景には家庭の経済状況や、おとなが「児童労働によって子どもの権利を奪っている」という意識がない、といった原因があります。
 シャプラニールによる今回のワークショップでは、これから家事使用人として働く“サビハちゃん”の関係者の立場(親や雇い主など)になったつもりで、「本当にサビハちゃんは働くべきなのか」についてロールプレイ形式で討論しました。私はサビハちゃんのお母さんの立場で討論しました。サビハちゃんに「働くのではなく教育を受けさせてあげたい」という気持ちがある一方で、「お金がない/女性に発言権がない」という現状に挟まれ、何もできない自分の無力さを痛感。ワークショップを通して、ただ「児童労働は良くない」という結論で終わるのではなく、児童労働を取り巻く環境や、解決しなければならない課題を学びました。
(執筆担当:岡本)

〈報告者より…〉
 記事をご覧いただきありがとうございます。今回は、東京の先生方による報告会についてお伝えしました。小中高生のうちに現代の社会課題について学び、考え、アプローチできる機会があるというのは素晴らしいことですね。今は誰もが地球規模課題への理解や取り組みが求められる時代。今後の学校教育では、ますますこのような世界に目を向ける授業が必要とされるようになると思います。子どもたちに教える立場にある先生自身も学び続け、知識をアップデートしていくことが大切なのだと実感しました。どの先生も目を輝かせて「子どもたちに伝えたいこと」を語っておられるのを見て、私も誰かに教える立場になったときにはあんな姿を目指したいと強く思わされました。(小田島)

 先生たちの、そしてスタッフ全員の熱意が心に響いた報告会。参加するだけでなく、このように記事を書くことができ本当に嬉しく思います!先生たちの発表では、1年間かけて本気で「理想の開発教育の実現」を追い求めたからこその想いや、課題、達成したことを聞くことができました。また、チームごとに1つの目標に向かって共に進んでいる姿が非常に印象的でした。ワークショップでは自分が知らなかった世界の課題を、自分事として捉える機会を頂きました。記事として取り上げた2つのワークショップ以外にも、中学生によるSDGsすごろく等も開催され、視野を広げることができたと感じます。どちらも自分の価値観を大きく揺るがすような体験で、次は自分がそのような体験を誰かに与えられる人になりたい、と覚悟を決めた東京報告会でした!(岡本)

報告:岡本有加・小田島ナウラ(JICA東京・市民参加協力第一課 インターン)

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