魅力ある研修に向けてー 23年度研修受入事業説明会
2023.05.08
研修員受入事業に関わる受託機関の方々を対象に、研修の運営に関わる工夫やアイデアについて、事例紹介や意見交換も含めた説明会を4月21日に実施しました。
研修員受入事業に関わる受託機関や協力機関の方々を対象とした説明会を4月21日に実施しました。2部構成で開催し、第1部では2023年度の研修実施方針の説明や2022年度の事例紹介、第2部では対面形式でのワークショップを実施しました。本説明会は、対面とオンラインのハイブリッド形式で開催し、全体で104名の方に参加いただきました。
JICA 宮崎理事の挨拶
理事の宮崎より「昨年度は新型コロナウィルスに関する水際対策が日々変わる中、受託先の皆さまには臨機応変に対応していただいた。JICAでは、「信頼で世界をつなぐ」というビジョンのもと、SDGsへの貢献等につながる20の課題別目標をグローバル・アジェンダとして定義しており、研修事業についても方向性を合わせていく。また、今年度は来日研修の本格的な再開となり節目の年となることも含め、受託先の方々と知恵を絞りながらより良き新しい研修の形を作ることを期待したい。」と挨拶し、続いて本年度の研修の実施方針および具体的対応や留意点について説明、また昨年度実施した「選ばれる研修」活動について紹介しました。
研修の計画や運営を実施している研修受託機関の方々から好事例を紹介いただきました。昨年まではコロナ禍において遠隔研修を主に実施してきましたが、その中においてオンラインでの研修実施における、コミュニケーションの工夫や実践教育のリアリティの持たせ方など様々な工夫事例を共有いただきました。参加者の方からも具体的な実施方法や研修員の反応について質問があり、より良い研修の進め方についての議論の輪が広がりました。
●研修運営上の工夫・改善点のあらまし(中央労働災害防止協会 技術支援部国際課 高井喜子氏)
オンライン研修前の事前学習期間の導入、過年度研修員の活用といった取り組みについて紹介いただきました。取り組みの中には、参加している研修員がリラックスして研修に参加できるように講義前のアイスブレイクの導入や主体性をもって参加してもらうためのリーダー選出についての事例が挙げられました。座学中心になりがちなオンライン研修において、研修員の積極的な発言や参加意欲を促進させる様々な取り組みが研修効果につながることについてお話しいただきました。
中央労働災害防止協会 高井喜子氏
●業務総括者としての心得(公益財団法人 国際通貨研究所 事業部 阿南鉄朗氏)
業務総括者としての心得をテーマに、研修員との関係の築き方や研修員の積極的な参加・発言の引き出し方のコツを紹介いただきました。課題別研修では参加国による課題のレベルに差があるため、研修員とのコミュニケーションを通じて個々の研修員が抱える現地の実情を把握することで、講義内容についてフォローすることができ、研修意欲向上につなげているそうです。研修員の立場に寄り添ったきめ細やかな指導が感じられました。
公益財団法人 国際通貨研究所 阿南鉄朗氏
●より効果的な研修に向けた工夫事例(一般財団法人 下水道事業支援センター 畑田正憲氏・JICA東京 奥山悦子)
一方的な講義になりがちだったのではないか、という前年度の反省を踏まえた改善について紹介いただきました。写真や動画を使用した研修員の自己紹介や1日の終わりにフリーディスカッションの時間を設けるなど声を出して話す機会を増やすことで、双方向のコミュニケーションを活性化させたそうです。また、各研修員の抱える課題の背景を知ることで、それに即した内容を織り込むことができ、研修員から「直面している課題と合っていてよかった」、「企業との連携を進めたい」など好評を得たそうです。研修員とのコミュニケーションの中で広がる情報が研修の効果に繋がることを教えていただきました。
一般財団法人 下水道事業支援センター畑田正憲氏(左)、JICA東京 奥山職員(右)
各自が取り組む今後のチャレンジを考えました
課題や教訓、成功事例を共有しました
第2部では、対面で25名もの方々に参加いただき、「研修コンテンツの充実」「研修実施方法の検討」「帰国後フォローアップ・ネットワーキングの強化」の3つのテーマで8グループに分かれてディスカッションを行いました。これまでの研修事業の中での教訓や工夫を共有し、今後の改善に向けたアイデアについて意見交換を行いました。「国ごとに経験やレベルが違う中で、まず自国の課題に気づき主体的にアクション出来るようになることが大切」「遠隔研修での経験を今後も継続活用できるのではないか」「多くの関係者を巻き込んだコンテンツ作りを促したい」「事例発表で紹介されたようなアイスブレイクを活用した雰囲気づくりを取り入れる」「SNSでの研修員同士のつながりをサポートしていきたい」など、より良い研修に向けた今後の工夫やチャレンジについて発表いただきました。
本年度は4年ぶりに対面形式で開催することができ、受託機関や協力機関の方々と直接対話できる貴重な機会となりました。
コロナ禍では遠隔形式のみで研修を行いましたが、Postコロナ時代では再び来日形式も可能となり、両者を組み合わせての実施など、更に魅力ある研修が求められています。
参加者からは「他の機関の研修内容や事例を知る機会が少なかったため、実際の事例報告は特に参考になった。」「紹介された事例は、自分の団体では思いつかない工夫もあり勉強になった。」「事例報告を拝聴して、同じような課題を抱えていたり、工夫をしていたりしていることが分かり、参考になった。」などの声が寄せられました。
最後は、JICA東京所長の田中からのご挨拶として「今年度は、規制も緩和され、久々に研修員が来日するケースが増えるので状況に応じた感染予防に努めていきたい。様々な変化に対し、昨年同様、受託機関や協力機関の方々と、一緒に考え工夫していきたいので、引き続き皆様からのご協力をいただきたい」とお願いいたしました。
研修事業は、研修受け入れ機関の方々とともに作っていくものであり、JICAの視点だけでは気づかない点を多くの関係者の方々に助けていただきながら、今後もより良い研修を実施してまいります。
JICA東京 田中所長挨拶
scroll