jica 独立行政法人 国際協力機構 jica 独立行政法人 国際協力機構

生まれた環境に関わらず、誰もが将来の可能性を広げられる社会に ~子ども達の「生きるチカラ」を育てるNPOアクションの10年に亘る草の根事業の成果~

2024.07.10

フィリピンは、経済格差が大きく、貧困率も高い国です。
多くの貧困家庭の子どもたちは、生活のための労働を強いられ、学校に通うことができません。
また、暴力、搾取、虐待、差別といった問題に巻き込まれた子どもたちは、児童養護施設・青年更生施設に保護されますが、その後の適切なケアは受けられない状況です。
社会から取り残されてしまった子どもたちへ、どんな支援が必要でしょうか。
この課題に向き合い続けているのが、NGOアクションです。
2012年からは、JICA草の根技術協力事業も活用しつつ、多岐に渡って展開されているアクションの活動の成果をご紹介します。

まずは周りの大人が変わることから

この事業ではまず、子どもたちと直接関わる大人たちに目を向けました。
フィリピン全国に約700ある児童養護施設などで働くスタッフ(ハウスペアレント)は、資格や専門知識の有無を問われません。学ぶ機会がないまま、問題を抱える子どもたちへの適切なケアができていませんでした。

そこで、子どもたちのケアに必要な知識・スキルを習得するための教材を開発し、55の児童養護施設のハウスペアレントに対して研修を実施しました。受講後の参加者は、知識を持つことで、子どもたちとの関係性が改善されることを現場で実感しました。
アクションの取り組みが認められ、フィリピン政府によって全てのハウスペアレントの研修受講が必須とされました。ハウスペアレント研修は政府からの通達による正式な制度となったのです。これによって、アクションが活動する地域以外の子どもたちにも、適切なケアを受けられる可能性が広がりました。

ハウスペアレント研修の様子。研修テキスト「単元2:子どもの権利」のアクティビティとして、皆で子どもの権利にかかる法律条項を書き出しと分類をしています。

◆関連リンク…JICA草の根技術協力事業 〜マニラ首都圏を含む11地域の児童福祉施設及び自治体における子ども達の支援体制強化プロジェクト〜

取り残された子どもたちの「生きるチカラ」を育む

次に、児童養護施設に入所している子どもたちへの支援を始めました。
施設への入所理由は、経済的事情、育児放棄、虐待など様々です。適齢期に教育を受けられない子どもには、学習能力やコミュニケーション能力の発達が未熟なケースが少なからず見られます。すぐにカッとなって周りの人と喧嘩してしまったり、社会のルールを守れなかったりするために、施設退所後、職に就けず、自立できないという問題を抱えています。
そこで、社会生活に必要なスキルを習得することを目的に、『ライフスキル向上プログラム』を開発しました。
このプログラムでは、まず自分をよく観察し、得意なことを見つけることから始めます。自分に自信をつけることで、友だちの気持ちに少しずつ配慮できるようになります。そして、知識を共有することで良い関係を築こうとしたり、周りの人と協力して課題を楽しんだりと、経験を積むごとに視野が広くなっていきます。自分の未来を建設的に考えられるように、どんどん変わっていくのです。
受講した子ども達からは、「行動する前によく考えるようになった」「将来の夢を叶えるために、勉強に取り組むようになった」という声が上がり、ハウスペアレントからも、「怒りの感情をコントロールできるようになって、喧嘩が減り、友だちに思いやりを示す場面が増えた」などの嬉しい報告を聞くことができました。

研修終了後の集合写真。参加したハウスペアレント達の素敵な笑顔から、皆、多くの学びを得つつも楽しんで参加したことが伺えます。

◆関連リンク…Japanese-founded NGO helps mold Filipino kids' character

フィリピン全土に展開されたプログラム、ついに日本にも

児童養護施設で始まった『ライフスキル向上プログラム』は、フィリピン政府の要望を受けて、青少年更生施設や補導された子ども向けに改良され、2023年には政府の認可を受けてフィリピン全土に展開されています。
さらに現在、このプラグラムの日本への導入が進んでいます。フィリピンのタガログ語で作成されたテキストを日本の子どもたち向けにアクティビティを改良、日本語版を作成し、児童養護施設などで試行的に実施を開始しています。今後、日本全国の児童養護施設への普及を目指します。

子どもたちが持つ「生きるチカラ」は、国を問わずかけがえのないもの。
生まれた環境に関わらず、すべての子どもたちが、自分のチカラで夢や可能性を広げることができるよう、アクションはこれからも支援活動を続けていきます。

ライフスキルプログラムのテキスト。フィリピンの言語であるタガログ語で、自己理解、目標設定、コミュニケーションなど社会生活に必要な全10単元から構成されています。写真は単元2:体と心のセルフケアのページ。

◆関連リンク
草の根技術協力事業 JICA
市民参加による細やかな途上国支援、そして国内の課題解決へ(2023年8月掲載トピックス)

\SNSでシェア!/

  • X (Twitter)
  • linkedIn
一覧ページへ