~子どもたちの心に緑の種を~ モンゴル・東ゴビ砂漠で新しい緑化手法を開発し、「学校の森づくり」を進めています!
2024.07.26
モンゴルでは近年の異常気象や過放牧等により、砂漠化の拡大が強く懸念されています。放牧が中心となる草原地帯では、草本類の生育が劣化するなど、国をあげて環境の改善が大きな問題となっています。
そこで、(特活)新潟県対外科学技術交流協会は、ゴビ砂漠の東部に位置するサインシャンドという地域で、乾燥寒冷地で適用可能な植栽技術の確立を目指し、新潟のノウハウを活用して草の根技術協力事業を実施しています。
◇関連リンク・・・案件概要表
「長根苗+深穴式植栽+深層潅水方式」による無潅水緑化を目指した取り組み
東ゴビ地域は年間降水量が100mm前後の「極乾燥地域」で夏の最高気温は30度を超え、冬は-30度にまでなります。これまでこの地域において浅い穴を掘って植えられた樹木類は、ひとたび水をあげなくなると大半が枯死してしまうという状況が多く観察されていました。
ところが、東ゴビ砂漠には、ところどころに大きな樹木が自生しており、自然に樹木が育つことを示しています。これらの樹木は、「発芽後、短い期間のうちに表層よりも水分を多く含む土壌の深い部分まで根を伸ばすことができたため生き残っている」と、プロジェクトチームメンバーは推測し、これを応用して「はじめに深い穴を掘って植栽し、植栽後はできるだけ早く深い層まで根を伸ばすよう誘導する」ことによって枯死を減らすという、新しい手法での植栽に挑戦をしてきました。
検証試験の途中で、野兎が出現したことによる想定外の食害にも見舞われるということもありましたが、2024年春の時点で、昨年春に植栽をした苗が1本残らず生存していることが確認でき、「深穴式植栽方法」で植栽された苗の100%が365日間水をあげずとも枯死せず生き残ったことが証明されました。
この結果は、限られた地域・限られた条件下のものであり、そのまま他地域に広く応用できるどうかはまだ分かりませんが、「極乾燥地域」の緑化に希望をもたらすものとして、モンゴル政府からも大きな期待が寄せられています。
ゴビ砂漠に自生をしているノニレの大樹。
植栽のために育ててきた「ノニレ」の苗(長根苗)
砂漠の自生樹から種子を採取して育てました。
試験サイトにおいてモニタリング方法を指導している様子。
2023年春に試験植栽を行ったノニレ。365日無灌水で100%の生存を確認!
地域の緑化を実現させるためには、とても長い年月と緑に対する継続的な関わりが必要となります。そのため本プロジェクトでは、地域住民の緑化への関心の醸成にも重点を置いています。特に、モンゴルの次代を担う子どもたちに対し、サインシャンドの第1学校で自然環境教育についてのワークショップ授業を行ってきています。
今年の1月には、第1学校のエコクラブの生徒が中心となり、学校敷地内の計画地(14.5m×22m)の範囲で、子どもたちが希望する『ゴビの森と草原のイメージ』を描いてもらいました。その後、新潟チームが、子どもたちの描いたイメージを集約し「学校の森=環境学習フィールド」の実施図面を作成、モンゴル側では現地スタッフと学校で協力をして、「学校の森」の深穴式緑化の基盤整備(深さ1.5mの掘削後、深層潅水)を行なってきました。そして今年5月、プロジェクトチームが現地に渡航し、子どもたちと一緒に、実施図面に沿って「深穴式緑化工法」での植栽を行いました。協働作業には、予定していた以上の子どもたちや教職員が集まり、大勢で協力して学校の森づくりを行いました。
2023年の夏休みに子どもたちが集めた植物の種
植栽を行う前のワークショップの様子。子どもたちから集まったデザイン案をどのようなプロセスで集約していったのかの説明や、「深穴式緑化工法」の説明、を行いました。
高学年の子どもたちが中心となって、深層潅水用の深い溝を掘ります。
作業終了後の一コマ。皆よくがんばりました!
春に撒いた草花の発芽・生育状況を観察しながら、先生や子どもたちから地域の草花の種をもう少し集めてもらい、秋に追い撒きをする予定です。ゴビの木や花が育つ「学校の森」をみんなの手でつくりながら、子どもたちの心の中にも少しずつ緑化への関心が芽生え、緑を大切に思う気持ちが育ってくれたら、と願っています。
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