\開催報告/ 参加者70名以上!草の根つながる座談会第3弾「コミュニティを巻き込んだ子どもの栄養改善」編

2024.08.21

8月5日、JICA東京主催で「子どもの栄養改善」をテーマに、“草の根つながる座談会”を開催しました。類似分野で草の根技術協力事業に取り組む団体同士の横のつながりや、新たな気づきや学びの場として始まったこの座談会シリーズ。第3弾となる今回は、カンボジア、ケニア、バングラデシュ、それぞれ異なる国で子どもの栄養改善に取り組む3つのNGO団体に焦点を当て、日々現場で奮闘するプロジェクトマネージャーに、現地に適したアプローチや継続のための工夫・お悩みなど、ざっくばらんに語っていただきました。当日の様子を、現地の子ども達の写真と共にお届けします! 

文化・習慣・環境の異なる3つの国で取り組む「子どもの栄養改善」

はじめに、それぞれの団体から事業概要や進捗状況などの発表がありました。

一人目の登壇者は、特定非営利活動法人シェア=国際保健協力市民の会のモーガンさん。現在シェアは、【5歳未満児】を対象に、カンボジアの中でも子どもの低栄養が最も深刻な地域・プレアビヒア州で活動中。シェアでは、農村地域でも入手しやすい食材で、手早く・美味しい家庭の味を目指した離乳食レシピを紹介します。モーガンさんは「離乳食はどこの家庭でも作る食事で、簡単に作れないと意味がない」と語り、まさに現地の人々に受け入れられるよう工夫された皆に優しいレシピです。さらに本事業では、日本でいう民生委員組織にあたる「女性こども委員会」を巻き込み、コミュニティが一体となって持続的に子どもの健康増進活動を行う体制構築を図っており、カンボジアに長く根付いた活動を展開してきたシェアならではの注目の取り組みです!

お母さんや家族に対して行われる家庭で簡単に作れる離乳食教室

コミュニティで行われる保健教育の様子

◆関連リンク
特定非営利活動法人 シェア国際保健協力市民の会
案件概要表
JICA東京HP 広報記事

二人目の登壇者は、特定非営利活動法人HANDSの八木さん。ケニアで実施するHANDSの事業は、【就学前】の幼児を対象とし、4つの幼稚園で、成長モニタリング・学校給食(無糖粥)・モデル菜園を導入して、園児の栄養改善をはかっています。さらに、本事業のユニークな特徴が、就園前の2・3歳児を対象にした、月に一度のプレイサークル(親子教室)です。HANDSでは、幼稚園に入る前の2・3歳児を“忘れられている年齢”と呼び、このプレイサークルでは、幼児の成長モニタリングや、保護者への栄養価の高いスナックレシピの紹介、健康教育など、様々な学びの場を提供しています。八木さんからは、「現在までに、地域の対象年齢の半数近くが、プレイサークルに一度は足を運んでくれました」と、予想を上回る反響をご報告いただき、この新しい試みが現地に少しずつ受け入れられていることを感じました。

無糖雑穀粥とモデル菜園で採れたおイモを美味しそうに食べる園児たち♪

プレイサークルでは地域の保健担当官が保護者に幼児の成長状況を説明します。

◆関連リンク
特定非営利活動法人HANDS
案件概要表
JICA東京HP 広報記事

三人目の登壇者は、特定非営利活動法人日本・バングラデシュ文化交流会(JBCEA)の松本さん。バングラデシュで実施している本事業は、【学童期】の小学生を対象とし、3つの小学校で学校給食(ケチュリという伝統的な炊き込みご飯に栄養価の高い大豆を追加したもの)を導入しています。母親と子どもへの食育ワークショップにはじまり、“ハッピーディ”という名の運動会の開催、シャシャ郡教育事務所との意見交換会など、地域に応援者を広げるため、コミュニティを巻き込みながら活動を実施しています。アプローチする相手で工夫した点はありますか?という質問に対し、「何より子供たちの健康を一番に考えている母親を味方につけるのがいいですね。」という、松本さんの言葉が印象的でした。子ども想う親心は世界共通ですね。

学校給食の様子・子どもたちはみんなケチュリが大好き

食育ワークショップの様子“チップスの健康への影響を知る”

◆関連リンク
特定非営利活動法人日本・バングラデシュ文化交流会(JBCEA)
案件概要表
JICA東京HP 広報記事

パネルディスカッション:美味しい、手に入りやすい、簡単にできる栄養価の高い食事とは・・・?

後半は、ご登壇いただいたお三方を交え、パネルディスカッションを行いました。本座談会のサブテーマでもある“家庭や学校で受け入れられるサステナブルな食事”について、各団体が現地で取り入れているメニューやレシピ、継続のため工夫している点について語っていただきました。

JBCEA松本さん(写真左上)、シェア モーガンさん(写真左下)、HANDS 八木さん(写真右下)、JICA東京 鵜飼(写真右上)、進行役:JICA東京市民参加協力第二課長 加瀬(写真中央)

例えば、HANDSでは、ケニアの幼稚園で「無糖」雑穀粥を給食として導入しました。八木さんは、その取り組みを栄養改善に向けた最強戦略と語ります。幼稚園の給食費はその100%が父母からの寄付で賄われるため、いかに継続性を担保するか、がとても重要ですが、砂糖が高騰する状況において家計に優しいだけでなく、子ども達の健康を守るこの取り組みは、現地にしっかりと受け入れられました。そして、「無糖」という概念は、幼稚園で始まった本プロジェクトの学校給食が起点となり、なんと現在では各家庭にも「シュガーレスティー」という習慣として浸透しているのです!

“家庭や学校で受け入れられるサステナブルな食事”(ケニア)

“家庭や学校で受け入れられるサステナブルな食事”(カンボジア、バングラデシュ)


続いて、どこの国でも抱えてている共通の課題“スナック菓子とどう戦うか”について、議論が白熱しました。バングラデシュでは、子どもが親からお金をもらって学校帰りにスナック菓子を買ってしまい、食事をきちんと取らないという問題を抱えていると、松本さんは言います。同様に、カンボジアでも、「市場で働く母親と一緒に過ごす子ども達は、母親から貰ったお金でその場でスナック菓子を買って食べる。他の子ども達と比べても、市場周辺で過ごす時間が多いと栄養不良の傾向が見られるということが分かっている。お菓子はゲーム感覚での楽しみと一緒になっているため、その中で子ども達の意識や行動を変えるのは中々難しい。売る側の意識を変えていく必要があるとは思うが、非常に難しいことである。」と、モーガンさんは言います。
現在、バングラデシュでは、母親と子どもを対象に“チップスの健康への影響を知る”食育ワークショップを開催し、スナック菓子の課題に取り組んでいます。また今後は、学校給食の紹介ビデオを作成し、栄養のある食事を取ることの大切さを伝えていきます。今後、大人も子どもも含め、みんなの意識が変わっていくことを期待します。

当日の参加者の皆さんからは、「栄養改善の分野における各国様々な取組事例を知ることができ有意義だった。」「様々なアクターを巻き込んでの活動の大切さを改めて感じた。」「現場のリアルな問題、取り組みを伺うことができて、大変参考になった。」などの声を頂きました。
今後も“草の根つながる座談会”の開催を通して、現場の声を届けていきたいと思います!

\SNSでシェア!/

  • X (Twitter)
  • linkedIn
一覧ページへ