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JICAインターン生が取材しました!長期研修員の魅力③和文

2024.12.04

長期研修課では、2024年JICAインターシップ・プログラムに参加している日本の大学・大学院生を受け入れています。インターン生6人による開発途上国から来日している留学生へのインタビューを順次お届けします。

渚 夏葉(筑波大学人文社会ビジネス科学学術院 博士前期1年)

水道分野を研究する研修員の皆様にインタビューをしました!

「水道分野中核人材育成プログラム」の一環で、来日し、大学院で研究されている3人のJICA長期研修員の方々に、色々な面からの質問にお答えいただきました。

お答えいただいた長期研修員の方々

Masayuさん(M)
インドネシア出身。東京大学で修士号を取得。インドネシア政府の土木・住宅省に所属。
Ms.ZIKRINA Masayu Nadiya
コース名:水道分野中核人材育成(2021~2023年度)・2022年度・東京大学工学系研究科・修士
Course name: Water Engineering and Utility Management for Future Leaders (FY2021-2023)/2022/The University of Tokyo/Master

Saifulさん(S)
インドネシア出身。東京大学で修士号を取得。Masayuさんと同じく土木・住宅省に所属し、環境技師としてとして働く。
Mr.AMIN Saiful
コース名:水道分野中核人材育成(2021~2023年度)・2022年度・東京大学工学系研究科・修士
Course name: Water Engineering and Utility Management for Future Leaders (FY2021-2023)/2022/The University of Tokyo/Master

Graceさん(G)
ルワンダ出身。東洋大学で修士号を取得。ルワンダで水道事業を担う民間企業に、衛生インフラ開発エンジニアとして勤務。
Ms.UMUHOZA Marie Grace
コース名:水道分野中核人材育成(2021~2023年度)・2022年度・東洋大学国際学研究科・修士
Course name: Water Engineering and Utility Management for Future Leaders (FY2021-2023)/2022/Toyo University/Master

※「水道分野中核人材育成プログラム」とは
アジアおよびアフリカ地域の水道事業体の若手幹部候補職員を対象にしたプログラム。大学での研究・就学および関連JICA事業での関与を通じて長期的な人材育成を行い、水道分野における次世代を担う中核人材の育成と、各国水道分野の発展を目指す。長期研修員は、相手国の水道事業体や政府と連携して選ばれており、帰国後も日本との関係を維持し、各国の水道分野のリーダーになることが期待されている。

水道分野で研究している理由は? 水道・水資源というテーマに関心をもったきっかけは?

M:私は大学まで首都・ジャカルタに住んでいて、土木・住宅省に勤務して初めて郊外の自治体を訪れました。その中で、インドネシアの多くの市町村、観光地として有名なジャワ島でさえ、水道インフラの整備が全く十分でないことを知り、この分野についてもっと学びたいと考えました。
S:私はもともと環境問題に広く関心があり、地球規模での問題の解決に少しでも貢献したいと考えて、大学でも環境工学を学びました。その後水資源管理の仕事に就き、経験を積む中で、さらにこの分野への理解を深めたいと考えるようになりました。
G:水資源問題は、私が幼いころから日々実感し続けてきたテーマです。1994年まで続いたルワンダ紛争の影響で、私が生まれた1995年には国内のインフラは機能しておらず、今では大都市の首都・キガリでも川や湖などの水をそのまま使用している状態でした。そんななかで多くの人が安全な水に十分にアクセスできるようにしたい、と考えるようになり、この分野を学ぶことを決めました。

留学、JICA「水道分野中核人材育成プログラム」への参加を決めた理由は?

M:学部時代から海外で学ぶことに関心があったのですが、なにを学びたいか明確になっていませんでした。その後仕事の中で水道インフラという学びたいテーマを見つけました。本プログラムへは、私の関心と分野が一致していること、インドネシアで日本の水道技術の知名度が高いことなどを踏まえ、応募を決めました。同じプログラムに参加していた先輩研修員から、日本での研究の魅力を聞いたことも決め手の一つです。
S:仕事で携わっている水道分野で修士号を取ることは、実現したい夢の一つでした。学部時代から大学院に進みたいと考えていて、複数の大学院から入学許可までもらっていたのに、奨学金がもらえずに断念した経験があります。 このJICAのプログラムを知った際、費用の自己負担が少ないこと、日本でも最高峰の東京大学で学べることに魅力を感じました。
G:大学生の頃から留学に考えていたのですが、現在所属している企業への就職が決まり、その時点では留学しませんでした。私が所属する企業とJICAとが事業提携をしたことがきっかけで、2019年にJICAのことを知りました。その時からJICAに良い印象を持っていたので、会社からの本プログラムへの参加募集を見て、応募を決めました。全社から沢山の社員が応募していましたが、書類審査とJICA・東洋大両方との面接を乗り切り、チャンスを勝ち取ることができました。

大学院ではどんな研究を?

M:水道水に関するインドネシアの人々の認識と現実との相違について研究しています。インドネシアでは、水道水は水質が悪いという間違ったイメージが一般化していて、飲料用にペットボトルの水を買うのが一般的です。水道にあまりお金を出したくないと感じる人も多く、水道整備のための公共資金の調達にも悪影響です。この誤解の原因を探り、認識と現実のギャップを埋めることで、人々がより豊かで利便性の高い生活を送れるようにしたいと思っています。
写真:自分の研究内容について、大学で発表している様子。

S:家庭用水の水質調査と成分の分析を通して、スラカルタ市の水道でのスケール沈着(水中の成分が配管に沈着してしまう現象)の原因と影響について研究しています。
私が特に着目しているのは、スケール沈着の水道管への影響です。スケール沈着は、時間をかけて水道管に付着した塩分が、水の中の鉄やマグネシウムと反応して起こります。水道管は地中にあるため、もし不具合が起こっても修理するのは容易ではありません。スケール沈着が深刻な問題になっていない今のうちから、沈着の予防に水質の改善・維持が必要だという認識を広げ、効率的な水道整備・管理に貢献したいと考えています。
写真:研究室で水道水の成分分析をしている様子。

G:ルワンダ・ルハンゴ郡を事例として、ルワンダの郊外地域での水資源の使用可能率と水質改善について研究しています。 ルワンダは、 SDGsの6番目の目標 (安全な水とトイレを世界中に)と国独自の目標の達成に向けて、全国規模で安全な水へのアクセスが可能になるよう大きく進歩してきました。ただし、このような目標への到達度を調査する際には、水の供給範囲だけでなく、水道サービスの質,特に使用可能性(その地域の人々がどのような頻度で水資源にアクセスできるか)はとても重要です。いくら安全な、浄化された水が用意されていても、実際にその水にアクセスできる頻度が低ければ、結局人々は低い水質の水を使用するしかなくなってしまうのです。だから私は、 水道サービスの使用可能性に着目して、より詳しく、正確にルワンダの郊外地域の現状をとらえることを試みました。

日本での研究/勉強について

M:東京大学には、興味深い授業が沢山ありました。例えば、水供給管理に関する授業では、他地域からの留学生も交えて自国の水事情に関してプレゼンテーションをする機会があり、多くの事例を知ることができました。
それから、インターンシップも楽しみです。埼玉にある水道関係の企業でのプログラムなので、実際に水道施設を見学したり社員の方に話を聞いたりできる機会を、最大限に生かしたいです。
G:日本での勉学では、全体として、規律や厳格さが重視されている印象があります。初めの頃は慣れるのに少し苦労しましたが、日本で身に着けた時間厳守の癖はこれからの自分の人生に役立つはずです。大学院の指導教員の方はとても協力的で、定期的に研究の進捗確認や疑問解消の機会をもうけてくれました。2週に1回の個人ミーティングとグループミーティングの両方に参加するのは大変でしたが、おかげで研究を確実に進められました。

自国と日本の水道設備との違いは?

M:最も異なる点は、水道整備の計画性です。インドネシアでは、整備計画の変更の引継ぎに問題が生じたり政治的変動に影響を受けたりと、古い水道管の整備が追い付いていない場合も多くあります。日本では、実現性のある計画がなされていると感じます。ただ、実際に使用する技術は両国で似ているところも多いです。日系企業の進出や技術協力がインドネシアで多いことも理由の一つでしょう。また、地形や起こりうる自然災害も似ているため、インドネシアと日本で相互に調査をしあったり知識を共有したりしていることも影響していると思います。
S: 一つ目の大きな差は、無収水率(浄水されて送り出された水道水のうち、水道料金収入に結びつかなかった、つまり使用者まで届かなかった部分の比率)の高さです。インドネシアでは、30%程度の水が個人への配給過程で失われているとされます。原因は色々考えられますが、水は必要不可欠な資源なので、より効果的で効率的な管理が求められます。二つ目としては、水道管のメンテナンスが挙げられます。インドネシアでは、資金不足などが原因で、古い水道管が整備出来ていないことも多くあります。しかし、基本的な水道設備のシステムは似ています。使われる根本の技術は同じだし、水道事業を行う企業等の多くはやはり最もシンプルな技術を用いようとしますからね。

研究以外で、日本の生活で楽しんでいることは?

M:研究との兼ね合いでJICAのイベントにはあまり参加できなかったのですが、色々なアウトドアに挑戦しました。その一つが、友人に誘われて登った高尾山がインスピレーションになって始めたハイキングです。日本の山道は整備されていて登りやすく、景色も良いので初心者でも楽しめます。それに加えて、日本のハイキング・カルチャーが素敵です。道ですれ違う人とお互いに挨拶したり、家族で登山に来ている子供たちを見かけたりと、楽しい気づきがたくさんありました。
もう一つはスキーです。熱帯に位置するインドネシアにはウィンタースポーツができる場所が少なく、登山同様スキーも初めての経験でした。長野に行った際、一緒に行った日本人の友人たちは幼い頃からスキーの経験があって、滑るのが凄く上手かったことが印象に残っています。
S:JICAのイベントで佐渡島に行きました。都市を離れて時間がゆっくり進む感覚を楽しみつつ、トキや棚田なども見ました。棚田は私の出身地のジャワ島にもあり、興味を引かれました。個人的にも日本全国の場所を旅行していて、今年のお盆期間中にも東北地方をめぐってきました。特に印象に残ったのは盛岡です。東京よりも涼しくて過ごしやすいし、歴史的な建築物を見て回ることもできました。それから、冬には長野や山梨でスキーをしました。ただ、山梨に行ったときは急な吹雪で電車がとまってしまい、駅のホームや車両の中で夜を明かすことになりました。大変でしたが、ある意味面白い経験でもありました。
G:JICA企画のイベントに参加しました。ダムや水道施設の見学からごみ拾いのボランティアまで、幅広い経験ができました。それ以外でも色々なところを旅行しました。自然が豊かな場所で風景を楽しむのが好きで、特に静岡の城ケ崎に行ったときに見た景色はとても綺麗でした。

日本での生活の印象は?

M:食事が美味しくて、周囲の人も優しくて、楽しく生活できました。
ただ、言語の壁には苦労しました。学部時代に日本語の授業を受けていたのですが、文法を学ぶのと実際に使うのでは全く難易度が違いました。困ったときは日本語が話せる友人に助けてもらったりもしますが、自分でもアニメを見たり周囲の人の会話を聞いたりして、自然な日本語に慣れるよう心掛けていました。
S:日本の都市に住むのは非常に便利なのですが、生活する上で最も大変だったのが、Masayuさんと同じく言語です。特に、銀行に行ったり何か予約をしたりする際には困ることもありました。やはり単に勉強するのではなく、日常生活のなかで積極的に日本語を使うことが、最も身に付く方法だと思います。また、言語の違いが障壁になって情報が集めづらかったのも困りごとの一つでした。スマホの翻訳機能を使ったり、友人から話を聞いたりもしましたが、緊急の情報には対応が難しいと感じました。
G:日本での生活は便利で安全です。特に公共交通機関は発達していて、車なしでも簡単に暮らせます。それでも文化の全く違う日本での一人暮らしは、精神的に辛い面もありました。ルワンダの友人や家族と電話したり、地域の教会の国際的なコミュニティに顔を出したりして、寂しさをやわらげました。もし一人が好きでないなら、留学生向けのシェアハウスをさがすのもいいかもしれません。

卒業後は?

M:元の職場に復帰して何年か働いてから、今度は博士課程に進みたいと考えています。具体的に何を研究するかはまだ決めていませんが、水道や水に関する問題の社会的側面に関心があります。技術が向上しても、インドネシアには水の保存や安全な使い方に関して知識がない人もまだまだ多いので、社会的な面の検討は非常に重要です。
S:土木・住宅省での業務を再開し、学んだことをインドネシアのインフラの発展に生かしたいです。今後は、より幅広い環境技術建設に関係する仕事にも挑戦したいと思っています。
G:元の職場に戻ります。この2年間で得た知識を生かして、水資源の供給と浄水の分野で母国の発展に貢献していきたいです。

これから日本で学ぶ長期研修員の方々にメッセージをお願いします!

M:日本で勉強できる機会を最大限生かして楽しんでほしいです。
言語が異なると困難に感じることも多いですが、学びには非常に良い機会です。言葉の間違いが許されない環境ではないので、安心して挑戦してみてください。
S:日本にいられる時間の全てを目いっぱい楽しんでください。もちろん研究が第一ですが、そればかりに集中してストレスを抱えすぎるのはもったいないと思います。友人の輪を広げたり、様々な場所に旅行したり、後悔しないように楽しんでほしいです。
G:日本から離れた地域の出身だと、文化の違いは想像以上に大きくなります。私の出身のアフリカで当たり前だと思っていた相手との距離や声量も、日本ではむしろ迷惑になってしまうこともあります。日本の生活に早く馴染んでより楽しむためにも、渡航前に日本の文化を予習しておくといいと思います。

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