ラオス山間部・険しい山道を超えたその先で~ラオス少数民族児童の学習支援に取り組むシャンティ国際ボランティア会の草の根活動~
2025.02.21
小学校に到着すると、元気な子どもたちが迎えてくれました
皆さん、ラオスのルアンパバーンという地名を聞いたことがありますか?ルアンパバーンと言えば、ラオスの古都として町の中心部が世界遺産にもなっている代表的な観光地。一度は耳にしたことがある方も多いのではないでしょうか。一方で、ラオスの北部に位置するルアンパバーン山間部には、ラオス国内でも多くの少数民族が住んでいます。このような地で、シャンティ国際ボランティア会(以下、シャンティ)はラオスの少数民族を対象として、2024年6月より、JICA草の根技術協力事業「初等教育における少数民族児童の指導・学習環境改善事業」(以下、本事業)を実施しています。本事業では、観光客で賑わうルアンパバーンの中心部を離れ、特にアクセスが限られる「へき地山間部」、少数民族児童が通う小学校を対象に日々活動中です。対象の村までは、ルアンパバーンの中心部から車でおよそ6時間、片道200kmほどの距離。後半は舗装がされていない砂埃が舞う険しい山道をひたすら進んだその先に、少数民族が住む村々が点々と表れました。
村までの山あいの道のり。砂埃が舞う茶色い風景の中を進んでいきます。
山道を抜けて到着する少数民族の村
本事業が対象とする小学校のひとつ
小学校から見渡す村の風景
本事業で対象とする地域には、主に「モン族」や「カム族」と呼ばれる少数民族の人々が住んでいます。彼らはそれぞれ、「モン語」や「カム語」といった少数民族独自の言語を話し、村や家庭での生活は彼らの言葉で完結する生活を送るため、「ラオス語」に触れる機会は極めて少ない環境です。その一方で、ラオスの学校では、授業は一律「ラオス語」で行われることが定められており、先生たちは「ラオス語」を使って子どもたちに教え、子どもたちは「ラオス語」で授業を受けなければなりません。もちろん教科書も「ラオス語」です。「ラオス語」を十分理解しない子どもたちに向けて「ラオス語」を使って授業を行う先生たちは、子どもたちの理解度に応じて、時には「モン語」や「カム語」を用いながら進めており、日々苦戦を強いられています。
対象校の子どもたち
加えて、少数民族が住むへき地山間部の学校では、教室や先生の数の不足から「複式学級」が取り入れられています。「複式学級」では、先生は2学年、または3学年の子どもたちを一度に同じ教室で教えます。そのため、子どもたちにとって学習に必要な十分な時間が確保できていない状況です。
一つの教室で2学年以上が学ぶ複式学級の様子
今回の視察では、少数民族の子どもたちに教える先生にもお話を伺うことが出来ました。先生たちからは「効果的な複式学級の進め方が分からない」、「2学年以上の子どもたちを同時に見ることは難しく、時間が圧倒的に足りない」、「子どもたちはラオス語を理解できないため、授業が進まない」などの声が挙げられていました。まさに少数民族の学校を取り巻く学習環境が先生と子どもたちにとって大きなハードルとなっている現状がありました。
少数民族の子どもたちにとってラオス語の習得は、小学校卒業や中学校への進学だけでなく、その先の将来の職業選択の幅を広げ、より多くの活躍の機会を得ることにも繋がるため、とても重要です。シャンティは、このような少数民族児童を取り巻く学習課題を改善するため、本事業を通じて少数民族の子どもたちが楽しみながらラオス語に触れることができるよう、「絵本」を通じた読書推進活動を展開しています。今回の現地視察では、数ヶ月前にシャンティによる読書推進ワークショップを受けた先生や村の村長さんが定期的に実践している読み聞かせの様子を見学することが出来ました。
読み聞かせを行う先生
村長さんや先生の呼びかけで一斉に集まる子どもたち。先生が絵本を開きながら、ストーリーを読み進めていきます。時には声のトーンを変え、登場人物になりきって読み聞かせる姿や絵本の内容に、ラオス語を100%理解しない子どもたちでも、興味津々な様子が伺えました。物語の途中では、先生たちからの問いかけに子どもたちが元気よく受け答えをする場面もありました。改めて絵本が持つ可能性の大きさを感じる瞬間です。
◆前回のワークショップの様子はこちらから:絵本の力で子どもたちの未来を切り拓こう~シャンティ国際ボランティア会によるラオス少数民族児童への学習支援事業~ | 日本国内での取り組み - JICA
読み聞かせを行う村長さん
学校に開設された図書コーナーで絵本を手に取る子どもたち
最後に、シャンティの現地職員 ブンホン・センパスットさんの熱い想いをご紹介します。現在、ブンホンさんはラオス側の担当者として、郡の教育局や対象校の先生たち、そしてシャンティとを繋ぎ、日々子どもたちのために活動を進めています。
ブンホンさん:「本事業が対象とする学校は、ラオスの中でも特にへき地と呼ばれる場所に位置しています。それから派生する様々な教育問題と我々は向き合わなくてはいけません。困難を感じつつも、少数民族の子どもたちの教育環境を改善するため、教員や村の住民と一緒に働けることを誇りに思っています。」
シャンティの現地職員 ブンホンさん
都市部や町の中心部から隔絶された地域で、異なる言語で生活する少数民族の人々。今回の視察を通して、少数民族の人々が住む「へき地山間部」という場所へのアクセスがいかに限られたものなのか、目の当たりにしました。
子どもたちにとって、ラオス語の習得は将来の進学や就職において重要な第一歩となり、将来の新たな選択肢に繋がります。村長さんなどの村の大人たちや保護者を巻き込みながら、先生と一緒に子どもたちの未来に繋がる重要な活動はまだまだ始まったばかり。今後の展開に是非ご注目ください!
◆シャンティ国際ボランティア会:公益社団法人 シャンティ国際ボランティア会(SVA) | アジアの子どもに教育を。本を通じて世界が拓ける
◆ラオスでの活動レポートはこちらから:ラオス | 公益社団法人 シャンティ国際ボランティア会(SVA)
◆本事業の案件概要はこちらから: lao_31_p_re.pdf
、 lao_31_p.pdf
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