\ラオス・草の根活動レポート/中等学校で「地域学習」に挑戦!ラオスの中高生たちが活動を通して学んだこととは…?
2025.06.03
地域学習の成果物を作成する生徒たち
特定非営利活動法人「ラオスのこども」は、現在JICA草の根技術協力事業「中等学校における学校図書室の役割拡充を通した教育改善事業」を実施中です。ラオスの首都近郊に位置するビエンチャン県サナカム郡とムーン郡の中等学校8校を対象として、生徒たちがより多くの情報に触れ、豊かな思考力を身につけることを目標に、図書室の利用促進活動を行っています。2023年5月に開始した本事業は、集大成となる活動3年目に突入したばかり。「ラオスのこども」が行う、各学校の先生、生徒たち、そして地域の住民たちとの取り組みをご紹介します。
ムーン郡にある本事業の対象校のひとつ
◆関連リンク:
・ラオスのこども 団体HP:ラオスのこども (Action with Lao Children) (deknoylao.net)
・ラオスのこども Facebookアカウント(活動の様子を随時更新中!):
Action with Lao Children ラオスのこども | Facebook
本事業の対象校では、学校図書室の存在をより多くの地域住民に知ってもらえるよう、1年に1度「学校図書室オープンデー」を開催しています。この「学校図書室オープンデー」では、図書室運営を担当する先生や生徒たちが協力し、これまで図書室に馴染みのない友人や先生・地域住民に向けて、図書室の紹介と絵本の読み聞かせなどが披露されました。読書の面白さをPRし、自分たちの学校にある図書室の意義を伝え、宣伝する日です。
ムーン郡にあるナムホーン中等学校で開催された「学校図書室オープンデー」では、まず初めに先生から図書室の利用方法や図書をテーマに沿ってPRする展示コーナーが紹介されました。
図書の貸出方法や配架、展示を紹介する先生
その後は、参加した地域住民の方にも、実際に図書を手に取って見てもらいます。
料理や裁縫の本などの実用書に人気が集まる場面も
そして、図書委員の生徒による紙芝居の読み聞かせや、太鼓のリズムに合わせた詩の朗読、最後はラオスアルファベットを使った「本探しゲーム」体験などを行いました。
図書委員の生徒たちが音楽に合わせた朗読を披露
楽しみながら「本探しゲーム」に参加する住民たち
「学校図書室オープンデー」に集まった人々は、「図書室には様々な本があること」、「皆の関心ごとに本を手に取ってもらえるような工夫」を体感し、図書室の新たな魅力を知る機会になりました。
ご紹介したナムホーン中等学校がある地域の住民のほとんどは、ラオスの公用語である「ラオス語」を母語としない「モン族」です。彼らの家庭では民族独自の言語が話され、「ラオス語」に触れる機会がない環境にあります。一方で、学校の授業は公用語である「ラオス語」で実施されることから、彼らのような少数民族の人々にとっても、楽しみながら気軽に「ラオス語」に触れ、暮らしに役立つ情報を得るという点で図書室は大切な役割を果たします。
2025年に入り、本事業では地域の歴史や文化を生徒たち自身が調べ、成果物(記録)に残す活動‐「地域学習」がスタートしました。この「地域学習」では、生徒たちが周囲の大人と一緒に自分たちの地域が持つ歴史や文化に触れることで、自分の地域に誇りと愛着を持ち、子どもたちのアイデンティティの確立に繋がっていくことを目指します。「ラオスのこども」によるレクチャーのもと、対象の生徒たちは協力し合いながら成果物の作成に取り組みました。
生徒たちがグループごとに話し合いました
ムーン郡にあるムアンムーン中等学校では、6年生の生徒たちがグループごとに村役場やお寺を訪ね、村長さんやお坊さんへインタビューを実施。村や学校、お寺、といった施設や道路がいつ頃出来たのか、などを聴き取り、文字と写真を使って長い年表が無事完成しました。
お寺への訪問インタビューの様子
作成された村の歴史年表
作成した年表を披露し、自分たちが住む村でどのような出来事があったのか、その歴史を説明しました
5年生は、モン族、クム族、ラオ族といった自分たちの民族ごとに分かれて、昔から伝わる遊びを村の長老から聞き取り調査。遊びの由来や遊び方を調べ、写真とビデオを掲載したガイドブックにまとめました。生徒たちは、「地域学習」の成果として、村の運営委員(村教育開発委員会)や地域住民に向けて発表しました。
地域に伝わる民族の遊びを、作成したガイドブックを見せて紹介
発表の様子
発表を聞いた住民の方々からは、「生徒たちが自分のところに何度も聞き取りに来てくれたのが嬉しかった。これまで若い世代に村のことを詳しく話したことが無かったので、とても良い機会になった。」と喜んでいました。
モン族に伝わるコマ遊びの実演を通し、地域住民と先生・生徒たちが交流する貴重な時間に
この「地域学習」の活動は、生徒たちが自ら初めて自分たちの地域の情報に触れる機会になりました。そして、自分たちの地域の歴史や文化を一緒に掘り起こし記録するというアクティビティを通じて、文章を考える力や伝える力、コミュニケーション力を伸ばす一助になったのではないでしょうか。
今回ご紹介した「地域学習」の取り組みは、実は実施団体である「ラオスのこども」にとっても、初めて取り組みでした。そのため、様々な試行錯誤や工夫が重ねられ、実現された活動です。対象校の先生や生徒たちへ「地域学習」活動をリードした「ラオスのこども」現地スタッフのスパポンさんは次のように話してくれました。
スパポンさん:「地域学習活動は私たちにとっても新たなチャレンジでした。レクチャーや実習のたびに起こるハプニングや問題に対応するのに必死でしたが、それがとても良い経験になりました。学校との間に入って行うコミュニケーションは大変な場面もありましたが、生徒たちが作り上げてくれた成果物は、想像以上に立派に仕上がっており、これまでの疲れが吹き飛び、感動しました」
参加者へ説明を行う「ラオスのこども」現地スタッフ・スパポンさん
「地域学習」で制作した年表や絵本、ビデオ・写真集やガイドブックは、図書資料として展示され、今後はさらに授業での活用を図っていきます。そして、次回の「学校図書室オープンデー」では、より多くの地域住民の方に図書室を訪れてもらい、この「地域学習」の集大成が披露される予定です。「情報・学習センター」としての図書室活動を目指し、地域コミュニティを巻き込んでいく活動の今後の展開にぜひご注目ください。
生徒たちが作成した村の歴史年表とともに
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