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\開催報告/日本語がわからない児童・生徒とのかかわり方を学ぶセミナーを実施しました!(JICA基金、NPO法人共に暮らす)

#4 質の高い教育をみんなに
SDGs
#17 パートナーシップで目標を達成しよう
SDGs

2025.07.04

外国にルーツをもつ子どもたちの学習環境を整えたい。特定非営利活動法人共に暮らす(以下、「ともくら」)は外国人児童への理解を深めてほしいと教育関係者に向けてセミナーを実施しました。会場である群馬県立太田フレックス高校とオンライン配信を含め、約100名が参加した当日の様子をご紹介します!

外国にルーツをもつ児童・生徒の教育支援の課題とは?

近年、日本で働く外国人労働者が増え、その家族である子どもたちも一緒に来日した結果、学校の教室には外国にルーツをもつ児童・生徒が増えてきています。そんな現状の中、教育現場で求められているのは彼らの「ことば」の支援だといいます。
ともくら代表のアジズ・アフメッドさんも9歳のときに家族と一緒にパキスタンから来日し、幼い頃に「ことばの壁」を経験したそうです。自身の経験を活かし、同じ境遇にある外国にルーツをもつ子どもたちを取り巻く状況について教育関係者に広く知ってもらうため、JICA基金活用事業で3回シリーズでのセミナーを仲間たちと一緒に企画しました。
第1回目の講師として、共愛学園大学国際大学の竹内教授が、多文化に生きる子どもたちについて、「ことば」の視点から教育現場での支援の方向性をお話しくださいました。当日は、普段から外国にルーツをもつ児童・生徒と関わりをもつ教育現場の関係者が多く参加し、学びを深めました。

日常会話ができても、授業についていけない・・・

「ことばの壁」の解消について見ると、言語学習には2段階あり、「生活言語」と「学習言語」の習得が必要です。家族や友達と話す日常的な生活言語は1〜2年で習得できる一方、授業で使われる学習言語は教科書を理解し、論理的思考を展開するための力が必要で、習得には5〜7年という長い時間が必要です。
子どもの場合、日常生活で自然と会話が身につくため、学校の先生や友達と日常会話ができるなら学力もあると思われやすいそうです。実際は「学習言語」が習得出来ておらず、授業についていけない児童・生徒がいることに教員が気づきにくいといいます。
また、日本の家庭であれば多くの親が子どもの宿題等の学習サポートをしますが、外国にルーツをもつ児童・生徒たちの家庭では親が日本語を上手に話せません。逆に子どもが親の言語面でのケアを担う“ことばのヤングケアラー”になるケースもあり、親が家庭での教育支援をおこなうのは難しいのが現状です。

第1回セミナー講師として講話する竹内教授

教育現場で「加算的バイリンガル」を目指して

講話の中でとても印象的だったのが、「母国語を失ってはいけない」との竹内教授の言葉です。今、教育現場で目指すのは、「加算的バイリンガル」。これは、第一言語と第二言語の両方を育てていく教育法で、第一言語である母国語は子どもたちにとって家族との共通言語であり、母国語を疎かにしないことで彼らの思考力・学習力は向上していきます。それが、第二言語となる日本語学習のための土台となります。
また、母国語を大切にすることで、子どもたちが自分たちのルーツやアイデンティティーを確立し、誇りをもって生きていけるのです。
今後、日本の教育現場では、多文化共生を前提としたカリキュラムの改訂や日本語指導員、多文化コーディネーターとの連携を図るなど、支援体制を整えていくことが必要だと竹内教授はお話しされました。

講演会後のグループワークの様子。教育現場で直面する課題について参加者同士で意見交換を行いました。

近年の調査では、親の仕事をきっかけに日本に来た子どもたちの多くが、大きくなっても日本に住んでいることがわかってきており、「生活言語と学習言語」の両方を同時に習得できるようサポートしていくことが不可欠です。
講演後、会場ではグループワークが実施され、普段から外国にルーツをもつ児童と関わる参加者たちが輪になり、教育現場で感じている課題、学校内外で活かせそうな支援の工夫、教職員間や地域との連携のあり方についてなど、活発な意見交換の場となりました。
子どもたちの困難は見えにくく、長期的な視点で見ていくことが大切ですが、学校の先生のちょっとした気づきが彼らの将来を変える事もあるといいます。今回のセミナーで、同じ課題に直面している関係者同士のつながりを作れたことが、外国にルーツをもつ児童・生徒を支えていく一歩になることを願います。


<第2回目のセミナーについて>
●テーマ:「文化的背景と社会ルール」
●講師:山田 文与氏(NPO法人IKUNO・多文化ふらっと)
●日時:8月2日(土)10時30分~13時
●会場:
(対面)群馬県立太田フレックス高校1号館1階ホール:群馬県太田市下田島町1243-1
(オンライン)Zoom

●主催:特定非営利活動法人共に暮らす
●定員:(会場)30名~50名 /(オンライン)最大200名
●参加費:無料
●対象:外国人児童・生徒と接する学校関係者や教職課程を専攻する学生など

※参加申し込みについては実施団体ウェブサイトにてご確認ください
●実施団体ウェブサイト: 特定非営利活動法人共に暮らす


<関連リンク>
「世界の人びとのためのJICA基金活用事業」実施中団体の方々をご紹介! | 日本国内での取り組み - JICA

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