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バングラデシュの子どもたちに笑顔を!

2025.09.09

地域住民とともに広げる「学校給食」の輪

南アジアに位置するバングラデシュ。インドとミャンマーに隣接し、豊かな文化を持つこの国では、近年、経済の発展が注目される一方で、貧富の格差は広がり続けており、子どもたちの栄養不良も依然として深刻な課題となっています。
この課題に15年以上取り組んできたのが、特定非営利活動法人 日本・バングラデシュ文化交流会(JBCEA)です。今回は、JICA草の根技術協力事業として実施されている「地域住民参画型の学校給食プロジェクト」をご紹介します。

日本では当たり前でも、世界では“特別”な学校給食

日本では学校給食はほぼ全ての小中学校で提供されており、子どもたちの健康と成長を支える大切な制度として定着しています。しかし、世界的に見ると、学校給食がある国は少数派です。
バングラデシュでは、学校給食制度の一部地域への導入が検討されいますが、未だ計画段階で実施に至っていません(2025年9月時点)。多くの小学校は午前クラス(低学年)と午後クラス(高学年)の2部制です。昼食を持参する子どもは一部に限られており、空腹をがまんしたり、学校近くの露店でスナック菓子を買って食べたり、一度家に帰って食べてくる子どももいます。こうした状況は、学習の継続や健康面に大きな影響を与えています。

「給食が好きな人!」
みんな元気いっぱい手をあげてくれました。

栄養不足が子どもたちの成長を妨げる

さらに深刻なのは、栄養に関する知識の不足です。例えば、スナック菓子をご飯の代わりに食べてしまうことで食欲がなくなり、母親の作った料理を食べない子どももいます。その結果、成長期に必要な栄養が十分に摂れず、発育不良につながっています。
母親たちも、栄養や健康について学ぶ機会がなく、家庭での食生活が子どもたちの健康に影響を与えています。バングラデシュは糖尿病や高血圧、心臓病といった生活習慣病が急激に増え、大きな問題になっています。子どもの時からの生活習慣が大変重要です。こうした背景から、学校給食は単なる食事の提供にとどまらず、地域全体の「食育」の入り口としても重要な役割を果たしています。

お母さんたちも栄養バランスや塩分の摂り過ぎによる健康への影響について学びます。

JBCEAの強み:現地に根付いた長年の経験と大豆の活用

このプロジェクトを実施するJBCEAには、青年海外協力隊(現、JICA海外協力隊)としてバングラデシュに赴任していたメンバーが多く在籍しています。プロジェクトマネージャーの松本さんは、バングラデシュで最初に農村に派遣された女性協力隊員(野菜隊員)で、現地の言語であるベンガル語にも堪能です。
松本さんをはじめJBCEAのメンバーは、以前から栄養価の高い大豆の普及に取り組んできました。その経験を活かし、JBCEAは現在シャシャ郡内の3つの小学校(児童数合計618人)で学校給食を提供しています。午前クラスの低学年生は授業終了後に給食を食べてから下校し、午後クラスの高学年生は登校後に給食を食べてから授業を受けます。給食には地元産の大豆を粉にして使用するなど、栄養面でも工夫が凝らされています。
給食の定番メニューのひとつが「大豆ケチュリ」。お米に豆や野菜、スパイスを加えて炊き込んだ、バングラデシュの家庭料理です。肉魚卵の代わりに大豆で栄養を補っており、子どもたちにも大人気!他にも、大豆パンや大豆ケーキ、バナナなど、地元産の食材を活かしたメニューが並びます。
JBCEAで作られた給食は、地元でよく使われるバン(荷台付電動自転車)を使って、各学校まで30~50分かけて給食の時間に合わせて届けます。

1校約200人分の大豆ケチュリ給食を作っています。

バン(荷台付電動自転車)で運搬。

持続可能な仕組みづくり:保護者が給食費の一部を負担する仕組みを導入

このプロジェクトでは、給食の持続性を確保するために、保護者による費用負担の仕組みも導入しています。無償ではなく、地域の人々が少しずつ協力し合うことで主体性を高め、給食の継続と地域の自立を促しています。
「自分たちの子どもたちの未来を、地域みんなで育てる」――そんな思いが、この仕組みに込められています。

母親グループのお母さんたち

食育・衛生教育・運動会(Happy Day)も!広がる学びの輪

給食の提供だけでなく、食育や衛生教育にも力を入れています。紙芝居やポスターを使ったワークショップでは、食事の大切さや歯磨き・手洗いの習慣を楽しく学びます。

参加者の声をご紹介します:
児童
「朝ごはんをちゃんと食べるようになった」
「スナック菓子は体に悪いから控えるようになった」
「運動会(Happy Day)が大好き!」
母親
「塩分や糖分を控えるようになった」
「手洗いの習慣がついた」
「歯磨きは朝・夜2回するようになった」

地域の母親たちが中心となってネットワークを築き、ワークショップや情報交換の場を通じて、地域全体の理解と協力が深まっています。

「スナック菓子ばかり食べるとどうなる?」

歯磨きワークショップ

給食がもたらす教育へのインパクト

校長先生はこう話してくれました。
「学校給食が始まってから、出席率が大きく改善しました。以前は昼食のために家に帰った子どもが、学校に戻ってこないこともありましたが、今ではみんなが学校で給食を食べています。また、家庭の事情で十分に食事がとれず、空腹のまま授業を受けていた子どももいましたが、学校で1日1食を確保できるようになったことで、集中力が高まり、学習にも前向きに取り組めるようになりました」
地域住民が参画する持続可能な学校給食は、子どもたちの健康を支えるだけでなく、地域全体の栄養・衛生意識の向上にもつながります。そして何より、学校生活が充実することで、“子どもたちの笑顔”につながるでしょう。

運動会(Happy Day)みんな元気いっぱい

手洗いの様子


◆関連リンク
案件概要表
日本・バングラデシュ文化交流会(JBCEA)

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